よそ行きの声を辞めて渡部陽一になる
僕がまだ幼かった頃、まだ実家に住んでいた頃、まだ固定電話が一般的だった頃、母親が電話で話す声を茶化すことがあったなあと思い出します。
声のトーンが高く、いわゆる「よそ行きの声」で話すんですよね。普段と違い過ぎて外面凄いなあ!?と幼いながらに感じたものです。
恐らくゆとり世代くらいから下の世代でしょうか。電話でコミュニケーションを取ることが苦手な人が多いような印象を受けます。そもそも僕は知らない番号からの電話に出ちゃダメ、と教わって育ちましたし、友達ともメールかLINEでコミュニケーションを取ります。
社会人になったら、いきなり知らない電話を取ったり、Web会議をしたり、そんな環境に放り込まれるわけですよ。先輩達は電話を率先して取るのが若手の仕事だと言うけれど、無茶言うなと内心腹を立てたものです。コロナ禍で在宅勤務が進み、固定電話が撤去されて個人携帯のみに移行したのは本当に良かったです。
僕が新卒で入った会社で配属されたのは、他部署とコミュニケーション取りまくり、月に20回は自分主催の会議を開催する必要があるような、コミュ障には厳しい部署でした。
幸い外線を取るのは庶務が担当だったけど、内線は一日中かかってきます。そして年齢が倍以上違う人相手に会議を仕切るのですよ。会議の準備から司会から内容確認から議事録配信まで、ワンオペも甚だしかったです。
この環境にいると知らぬ間に「よそ行きの声」で話すようになっていました。声のトーンが高く、油断すると裏がってしまいそうな勢いです。
ふと冷静になって考えてみると、僕が「よそ行きの声」で話す時は緊張している時だと気づきました。めちゃくちゃ噛むし、頭の回転も鈍くなります。
この状況を何とか改善しないといけないと思い、逆に自分がリラックスしている時はどんな状態か考えてみました。
どっしり落ち着いている時、僕は声が低くなります。多分、大多数の人はそうだと思います。「よそ行きの声=高い=緊張している」の反対は「普段の声=低い=落ち着いてる」なのです。
低い声、落ち着いた声をイメージした際、真っ先に思いついたのは戦場カメラマンの渡部陽一です。知らない人は検索してみて下さい。彼は低い声で、やりすぎなほどゆっくりとしたスピードで話します。
会社では渡部陽一になれないけど、意識することは出来ます。とにかく低い声でゆったり話すこと。緊張する時こそ意識する。
こうして僕は元気ないね、と言われる代わりに落ち着きを手に入れたのでした。めでたしめでたし。