時空を超えて、届けささやかな希望。
始めてからまもなく10ヶ月目に入ろうかというあるゲーム。
私は、複数のサーバー(世界)に参加しています。
同じゲームでも参加者が増えてくるとそこに負荷がかかるので、人数制限があり、いっぱいになると次のサーバー(世界)が次々とオープンされていくのです。
もちろんどのサーバー(世界)も、ルールやゲームの中身はいっしょ。
ただ、サーバー(世界)が変わると、主人公である自分の職業や性別などの設定を変えることができるし、関わる人々(他のプレイヤー)も違います。
なので、スピ観点からは「同時に複数の人生を生きる感覚」で遊べるんですね。
さて、このゲームは人気でして、既ににものすごい数のサーバー(世界)ができあがっています。
私が初めて参加したサーバー(世界)を10番だとしましょう。
スタートしてから1年以上経っている世界なので、飽きてやめてしまう人もいたり、新しいサーバーの方が活気があるからと、そちらへ移った人もいたりして、10番は人がものすごーーく減ってきています。
初期のように勝ち負けを争う雰囲気もなく、一言で言うならば10番は、「老後をのんびり楽しむひとたちの世界」のようになっています。
戦闘もそんなにしない。
上位争いもしない。
クエストもやらない。
楽しくお話できたらいいかな、みたいな。
ここでの私はもう「今日どうしたいか」はあっても、「この先どうなりたいか」があまりないのですね。
研究気質だから、新しく出たキャラクターを育成してその特性を見たいとかは思うんだけど。(笑)
見えてしまうんです。
それをやったところで、
それでまた強くなったところで、
それは誰の役にも立たなくて、自己満足にとどまってしまうのです。
自己満足は自己満足でいいのですよ。個人的な楽しみも人生の喜びのひとつ。だけど、そのささやかな自己満足のために、ど〜〜うしても課金して時間も使って育成したいという「強烈な想い」にはならないわけです。
かつては、私たちは、10番の世界で、いろんな夢や目標をチームメンバー(他のユーザー達)と共有していました。
それを実現するためには、自分も強くなる必要があったので、けっこう工夫もしてやりこんだんです!
その結果、個人ランキングは1位になり、現在も維持されています。
もちろんチームメンバーも強くなり、チームでのランキングも1位。
だけど、もはやこの「最強チーム」であることも「個人1位」であることも、人が減りのんびり過ごす人たちの世界になってからは、あまり価値がありません。
ただ、そういう状態なんだね、というだけなのです。
この先は、よくてこの順位をずっと維持するだけで、1位であることがチームや仲間に貢献できた時代は終わったのです。
つまりもう「新しい未来」はないのです。
ああ・・・死ぬな、と思いました。
死ぬというのは、もうこのゲームをやらなくなるなということですね。
少なくともこのサーバーでは。
時間を与えられていても、場所を与えられていても、自分の中に「情熱」がないのです。
そんな時、私が入っている別のサーバー(仮にこれを50番としましょう。10番よりずっと後の世界なので、まだ少しは賑わっています。ここも人が減り始めましたが。最新世界は100番台なのです)にいる、ある女性プレイヤーの言葉が浮かびました。
「新キャラの●●と△△、どっちがいいんだろう? 強くなりたい。それにはどうしたらいいと思う?」
10番にいる私は、その△△を持っています。
これを育成してみたいなと思っていましたが、育った先に待っているのはさらに人が減って、使い所のない未来。(笑)
だから、さっきも書いたようにあまり育てる気にならなかったのですが、私が△△をここで育てたら、その情報は50番にいる彼女に伝えられるなと、そう思ったのです。
とたんに、もう死を迎えるだけの10番にいる私に「情熱」の炎が立ち上がりました。
この世界10番に、私の財産(得たもの)を渡すべき相手はもういないけれど遠い別の世界50番には、いる。
目標を失い、与えるべき対象を失い、死を迎えるのを待つのみになった10番のキャラクターに「生きがい」を与えたのは
50番という別世界にいるひとりの女性の「未来への欲」。
これは、現実生活にもそのまま当てはまるなと思うのですね。
成熟し安定し何も変化が起きなくなってしまった世界から私を救ったのは、遠い世界にいる他人の小さな希望だった。
小くてもいい。希望を持つこと。
それを伝達すること。
小さくてもいい。希望を持つこと。
それを伝達すること。
小さくてもいい。希望を持つこと。
それを伝達すること。
それは時空を超えて、誰かを元気にするものなんだと思うなぁ。