オーストリア全土の公共交通機関に一年間乗り放題した記録
一昨年の10月から、オーストリア全土の公共交通機関が乗り放題になるKlimaticket Öというものが出ています。
それまでは各州によって公共交通機関の月間券や年間券を発行していて、チロル州では州全土が乗り放題になる券が以前からありましたが、グラーツに住んでいた時はグラーツ市内だけの乗り放題はあってもシュタイアーマルク州全土乗り放題の券はなかったように思えます。
州を跨いで毎週のように移動する人は、オーストリア国鉄ÖBBが出している年間パスを買っている人が多かったと思います。
今や国鉄以外にも、同じ路線を私鉄も運行していたりするので(Westbahnとか)
もちろん国鉄の年間パスは国鉄の電車にしか使えないわけで
それには市内交通(バスやトラム、ウィーンなら地下鉄も)含まれないので
別で各州や各市が出している市内交通の年間券や、ちょっと用事で行ったら一日乗車券やシングルチケットを購入しないといけないわけです。
2021年秋に彗星の如く現れたKlimaticket Öは、そんな各交通機関の垣根を越えて、全ての公共交通機関に乗れる年間パスです。
観光バスやトロッコなどは乗れませんが、どこの州に行くにもチケットはいらずフラッと乗れて、なおかつ行った先の市内交通のチケットもいらないのでいつでも思い立った時にお出かけできます。
そのせいもあってか、ウィーンを起点とする電車は時間帯によっては常に大混雑!
通常のクリマチケットだと二等席しか乗れないので、一等席はがら空きなのに二等席が通路まで人がはみ出ているということが頻発。
去年、まだクリマチケットを買う前にウィーンへ行く用事があり、チケットが直近の購入だったためウィーンからインスブルックへ帰る夕方のチケットを買う際に、二等席で最安値になる割引の料金が売り切れており、
二等席の正規料金が一等席の割引料金と同額だったため、一等席を自動席予約付きで買っていました。
当該電車の予約してあった一等席に乗り込んで、定刻になってもなかなか発車しないので何があったのかなと思っていると、
二等席が満杯すぎてドア付近まで人が溢れており、保全のため降りて次の電車に乗ってくださいとアナウンスがされていました。
横暴な。
ウィーンから西へ向かう電車は一時間に一本ぐらいしかありません。
短距離で、サンクトペルテンなどまでしか行かないならまだしも、それより遠くまで乗る人にとっては一本の差は大きいし、日曜日の夜でみんなそれぞれの事情を持って電車に乗っているわけなので、誰も降りたくありません。
去年の夏なんかは、無理やり降りざるを得なくてウィーン中央駅で一晩明かした人たちがいた日もあったという新聞記事を見かけたりして、腹立たしい思いをしました。
そもそも、公共交通機関に乗るよう国民に推奨しておきながら、車両が少なすぎます。
ウィーンをインスブルックをつなぐレイルジェット(途中サンクトペルテン、リンツ、ザルツブルクを通り、その後ミュンヘン行きとブレゲンツ行きに分かれることが多い)なんて、食堂車両を除いて2等車は6両ぐらいしかないんじゃ?
少なすぎる・・・。
その日は結局ウィーンを30分以上遅れて発車したので、ドイツ国境での遅れもありどんどん遅れて、インスブルックに着いた時には結局1時間以上の遅延に。
私は後日遅延による賠償金を国鉄に申請して、いくらかチケット購入したお金を返してもらったくらいでした。
クリマチケットを持っていても、座席の予約は別料金。
すでに1000ユーロ以上も払っているのにまだ払わせる?という疑問はあります。
その点私鉄のWestbahnなら、クリマチケット保有者は座席の予約が無料。
しかもあまり混まない。
以前からウィーンとザルツブルク間は運行していましたが、去年からインスブルックまで路線が延びてくれたので、時間が合う時は積極的にWestbahnを選びます。
しかも乗車ポイントがつくので、貯めて電車のチケットや自動販売機の飲食物に交換できます。
クリマチケットの恩恵を受けている人はおそらく、ウィーンに住みながらニーダーエスタライヒに通勤していたり、週複数回グラーツからウィーンに行っていたり毎週のように長距離移動する人たち。
値段が何せ一年間で1095ユーロするので、一月あたり90ユーロ以上。
月に一回電車に乗るぐらいの人にとっては全然お得にならないです。
このパスが出た当初、私は買うか迷いましたが、年の3分の1は日本にいる仕事形態だったこともあり、毎月ウィーンなどに遊びに行くにせよ毎週行くわけでもないし、高くつきすぎるので手を出しませんでした。
私はインスブルック州内の年間パスを持っていたので、そのパスだけでもかなりの範囲が乗れるし、ドイツとイタリアそれぞれの国境までカバーしているためチロル州パスだけでも十分にお得感がありました。
それが去年転職し、年間10ヶ月はオーストリアにいるだろうということになったのと、
今買えば1ヶ月分プレゼント!というキャンペーンがあったので、去年の7月にこのクリマチケットÖの購入に踏み切りました。
チロル州年間パスを更新する代わりに、クリマチケットÖを新規購入。
価格差は年間500ユーロぐらいです。
それ以降、オーストリア国内で行ったことのない場所にも積極的に足を伸ばしてきました。
ただ、ザルツブルクやフォアアールベルクであれば片道2時間で行くことができても、それより遠いとかなり時間がかかります。
インスブルックからウィーンまでは4時間半。
高速電車の通っていないグラーツまでは6時間。
日帰りもできなくないけど、電車で過ごす時間も長くなります。
特に用事もないのにお金を使ってホテルに泊まったりするのも嫌だし、土日の両日を使うのも嫌で日帰りしたいので、ただ気晴らしに行く時は早朝に出掛けて夜帰るパターンで遊びに行っていました。
アジア食品スーパーが充実しているザルツブルクへはふらっと出かけられて便利でした。
フォアアールベルクはそれまで行ったことがなかったけれど、大好きになりました。
特にブレゲンツは本当に素敵です。
ブレゲンツの向こうのドイツにちょっと入ったところにあるリンダウも素敵だったし。
ブルゲンラントやケルンテンにも、遠いながら足を運びました。
だだっ広い水平な野原一面に広がるワイン畑やひまわりを見ながら、ああサイクリングにもってこいですな、ブルゲンラント。
ここめっちゃ土地代安いんだろうな・・・と思いつつ。
とんでもなく活気のあるケルンテン州のクラーゲンフルト。
素敵なジュエリーに出会って衝動買いしたり、とにかく素敵なブティックがたくさんあって意外とお買い物スポット。
ウィーンにもしょっちゅう行って、ザルツブルクも何回も行きました。
先週末は、クリマチケットの有効期限最後の週末だったので、土曜日はウィーン経由でスロヴァキアのブラチスラヴァへ行きました。
サクッと観光を済ませて、ウィーンで少しウィンドウショッピングをして帰路につきました。
日曜日は本当はブレゲンツに行きたかったけど、天気も気温も微妙にお出かけ日和でなかったのでどこにも出かけませんでした。
こうして13ヶ月のオーストリア全土乗り放題チケットの役目は終わりを迎えつつあります。
何も手続きしなければ翌年も自動的に継続されるのですが、私は更新を停止し、チロル州のみの年間券を買いました。
その理由は…
①無理矢理使い倒した感が否めない
そんなに毎週、ウィーンなりザルツブルクなりで予定があるわけではありません。
土曜日は忙しいため、近所にいて買い物などを済ませたいこともあります。
特にオーストリアでは日曜日は全て店が閉まるため、他の都市に遊びに行くのでも日曜日だとあんまり楽しめないし、体力回復のためもあり日帰りで遊びに行くのはいつも土曜日でした。
それでも天候の良い時期は毎週毎週出掛けていたので疲れました。
また、今年は諸事情により12月から5月下旬まで全く長距離移動する機会を持てませんでした。
去年の夏と今年の春以降は頑張って毎週末のように出かけていましたが、元は取れていたでしょうか?
②チロル州乗り放題でも十分満足
チロル州の年間パスはオーストリア全土の半額くらいですが、チロル州は範囲が広くて2時間ほどかかる場所もあるし、ドイツとイタリアの国境までカバーしています。
私は気分を変えたい時はよくイタリアに行くので、全土乗り放題を持っていなければ国内の他の都市に行くよりもイタリアに出かけるので、全土乗り放題じゃなくていいや、と。
しかも、今チロル州の年間パス(クリマチケットチロル)は1割引で買えるお得感があるので、それも決め手になりました。
③高い(私の用途には)
上記の理由の組み合わせのような感じですが、月に90ユーロ以上。
私は会社から公共交通機関通勤補助が出ていますが、それでも月に平均一往復の遠出をすると考えると、普通に早期割引料金でチケットを買った方が安くつくかもしれません。
用があって他の州の都市に行くことが頻発しない限り、たまに行くぐらいであれば逆に年間パスは高くつきます。
それでも、この13ヶ月クリマチケットÖを使って国内の色々なところを訪れたことにはとても満足しています。
全ての州都に行ったし、昔一度だけ行った場所にも行ったり、好きな場所は何度もふらっとリピートしたり、
ただアジア食品店で買い物するためだけにザルツブルクに行ったり、
ただ2時間ショッピングするためだけにウィーンに行ったり、
ただ昼ごはん食べるためだけにグラーツに行ったり、
ただ1時間散歩するためだけにいろんなところに行きました。
またライフスタイルが変わったり、やっぱりオーストリア全土乗り放題の恩恵が欲しいなと思ったらまた買いたいと思います。