夏が来たって 浮かれ気分なのに

「みんな、ひきょうだ」

男の子は、ぼそっと玄関で言う

 

 

彼には、ライバルの女の子が「いる」

いや、「いた」という方が正しいのかもしれない

彼にとっては、「いる」であり

彼女にとっては、「いた」となる

 

授業後、再テストや授業でできなかった問題を

できるようになった子から帰っていく

(授業の終了時間でサクッと帰るが理想)

 

彼にとって、彼女は半年前まで

どちらが先に帰るかを競っていた

 

そして、先に帰る方が、残る方に対して

「お先に失礼します」と声をかけるお約束

 

勿論、多少の嫌味がないこともないのだが

この2人は、良い意味でのライバル

笑顔で帰る子と、笑顔で悔しがる子

 

それがいつからだろうか

彼女が先に帰ることが多くなり

そして今、彼女が必ず先に帰る

 

時折、彼も終了時間通りに授業が終わる

でも、お残りが多い彼のお迎えは、まだ来ない

塾のMailと本人のLINE、保護者が気付くまで

 

 

そして、冒頭の言葉を彼は言う

 

 

キミは一人冴えない顔をしているね

そうだキミに話したいことがあるんだ

 

 

@@@

Yという、学年トップレベルの子がいる

 

「いつか、Yより早く帰るんだ」

 

彼が、いつか言ったその言葉

まだ実現していない

@@@

 

「この夏、実現しよう」

私が、キミに話したいことだ

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