みんなが消えていく
つい半日前まで確かにあったみんなの感覚がなくなっていく。
まるでもともといなかったみたいに。
私を助けてくれた、あの大人たちは、明日になったら、跡形もなく消えちゃうのだろうか。
気配がしない。
その代わりに左肋骨周りが突然に緩んできた。
私は忘れちゃうのだろうか。
昨日まで私だった私のことを。
世界と親を恨んでいた人のことを。
ドラマを見て少し怖くなった。
明日の私がもう昨日の私じゃなかったら、寂しいな。
さっきまで当たり前に使えていた魔法が突然使えなくなってしまった。
心の中で「助けて!」と感じるだけで
いつでもテンション高めのコミュ力高い人にも、
テンション低めの秀才にもなれた。
でもいまは。
こんな年齢で突然、ありのままの子供のまま世界に放り出された。
どうしよう。どうしたら良いのだろう。
自分で望んで魔法を捨てたはずなのに
いざ使えないと焦る。
魔法を消滅させる呪文は、多分これ。
「私はお父さんのこともお母さんのことも嫌いだったよ」