家族の話

なんで子どもほしいって思うん って聞いて なんでほしくないん って聞かれたらどうしようかと思ってだけどすんなり答えてくれてほっとしながら耳を傾ける。昔から子ども好きやったとか子どもは二人産みたいと思ってたとか 言われたらなるほど〜ってなるけどわかったようなわからんような気持ちになる。そう考えると昔から子ども好きやったかな とかなんでみんな自分の子どもを育てるんやろう とかぼんやり考えてたから 自分は子どもほしいって思ってないほうに分類されるんやろうかなあ。

みんなここにいる地球人全員は母の股から産まれて来ててお母さんとの関係を抜きに考えられへん地球人の皆さまの漏れなくわたしもそのうちの一人で、とにかくうちの母は度がつくほど子ども第一優先の母でした。今でこそ当たり前になった不妊治療やけど当時九年も続けて産まれた第一子の桃ちゃん。そんなほしかったんやって お母さんは諦めへんかったでえ って武勇伝になってるくらい 家族という絆へダイヴしたのでしょう。それで産まれたわいら姉妹三人を、父と一緒に汗水垂らして育ててくれました。

今でも思い出す家族での外食はだいたい家を出る前に何を食べに行くかでもめる。姉の桃ちゃんと白ちゃん二人の意見が揃うといいほうで割れるとどっちかが父とマジ喧嘩する。最後にわいちゃんは何食べたい?と母から決定権が回ってくる。いっつもわいちゃんやんけって言われて母に守られて優越感あるけどここは穏便に家族会議を収束せなあかん責任感を発揮するところ。食に興味ないわいは挙げられた候補から選ばれへん 父母が汗水垂らしたお金で食べるねんから安くて近いやつでええやん ていうか桃ちゃんよく寿司とか言えんなあ言ってええんか言ったら父母も喜ぶんやろうかやっぱり言えんなと思って結局何でもいいという。ほれ わいちゃんを見習えと父母から桃ちゃん白ちゃんが怒らえる、なんでそうなるん。
白ちゃんがふてくされると長いでえ。お通夜ムードでラーメンをすするチャーハンをかきこむ機嫌なおってくるとほっとする。うちの家族は白ちゃん意外ごはん食べるのが異常に早い。母はもはや飲んでる勢い。あっという間に平らげ、食べんの早ない?!って毎度ツッコんでいた白ちゃんは今 先に自分のお皿に食べ物を確保する癖がついている。

友人Mは 家族の外食の日は子どもたちで行きたいところを調べて親にプレゼンし父からゴーサインがでたら出陣した。当時大学生だったわいはMがピックアップしたお店の情報をプリントアウトして兄と父に見せると言うのを聞いておったまげた。わいは桃ちゃん白ちゃんと話し合ったことがなかったし思いつきもしなかった。いまだに家族で外食するときにお店を調べたことがない。自治権を子どもに与え最後に親が承認するそのシステムに唸った。
さらに三兄妹のうち一人食べるのが遅かった友人Mを心配したM母は一人ずつ御膳を立てるようになったそうだ。大皿文化のうちがめいめいお皿を分けていたら白ちゃんは今も呑気にゆっくり食べているかもしれないと想像する。

みんな何かしら家族の問題があると言うがうちも色んな問題を抱えている。母は事あるごとに揉めた父と姉の間に入り、だいたい父の肩を持ち、こっそり姉の肩を持った。正直親に逆らわなければすんなりコトが運ぶしなんで桃ちゃんそんなことすんねんやろと思ってたけどあの外食のときのことを今でも考える。なぜ姉の希望したお店に行かなかったのだろう。姉はどうしてあんなに意固地に主張したのだろうか。どうしてわたしは寿司にしようと言えなかったのだろう。どうして姉妹で話し合うことができなかったんだろう。ハッピーエンドの愛はどこにあったんやろう。

自営業の父を手伝って母は朝から晩まで働いて自分のことを後回しにしてわたしたちを優先してくれた。わたしにはそれがどうも折り合いがつかない。わたしの無知がわたしが欲しいと言ったことが母を苦しめてしまっていたのではと思い自分も苦しい。これでは苦しいのが大好きなやつだ。
今住んでいる国では子どものいる家庭の半分が離婚して育てているという統計が出ている。あるお母さんは自分の好きなことをしてる姿を子どもに見せて、子どもにもそうやって育って欲しいと言う。

なんでなんなんでそうなるんと川上未映子さん著『乳と卵』を読んで微妙な気持ちになりながら河合隼雄さんが語る『肉の渦』に圧倒されながら自分も巻き込まれてるような気がすると思う。家族の一方通行っぷりの愛情と欲望とそれをうまくマッチングできないことに悲しさと苛立ちを覚える。気づいたらだれの願いも叶ってないやん。え そう思ってんのわいだけ?わいだけか。

子どもほしいって思ってるって聞かれたら、わけわからん未知の存在と一緒に成長したいって思ってるって言おうと思ってる。それは面倒くさい家族の関わりを肯定的に見ることができるようになったからやと思います。

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