人が輝ける職場とは?
こんにちは、koko です。
RPA のグローバルリーディングカンパニーで、ビジネス自動化プラットフォームを提供している UiPath という外資系IT企業で昨年12月1日で入社5周年目を迎えました。
今回は、 UiPath 主催 FORWARD5 の基調講演:マーカス バッキンガム 氏の「Love + Work: Unleashing the Power of Your Joy in the Workplace」(意訳:ラブ+ワーク~職場で楽しみを見つけられることの強さ)についてご紹介させてください。人が輝ける職場とは?について、熱く語ってくださいました。
UiPath の FORWARD5 に関する詳細は下記をご参照ください。
マーカス・バッキンガムさんとは?
マーカス・バッキンガムさんは、心理測定士であり、社員のエンゲージメントにフォーカスしたビジネス書籍の著作家であり、ビジネスコンサルタントで、多数の企業での登壇経験をお持ちです。
残念ながら彼を紹介する日本語ページは数が少ないですが、ストレングスファインダ―で有名なギャロップ社に長年勤めていた過去があり、人間の強みにフォーカスするアプローチに関する研究を行ってきた方です。
数多くの マーカス氏の著作はこちら(Amazon)から確認できます。
正直なところ、ずっと仕事と育児だけの狭い世界に住んでいた私は、ビジネス的なアンテナが弱かったので、自社のカンファレンスに登壇されるということ、彼の話は絶対に聞いた方がいいという同僚の声を聞くまで、何にも感知できていませんでした。今回、これをきっかけに彼のこと、それから彼の教えを知ることができたのは、本当にラッキーだったなと思います。
FORWARD5 でマーカス氏が教えてくれたこと
UiPath の FORWARD5 でマーカス・バッキンガム氏が私たちに教えてくれたことは、学校や会社でも教えてくれないことですが、働き世代にとっては、有用な内容でしたので、多くの方に知っていただきたいです。
(残念ながら、今回、私は現地に行けなかったので、会場の臨場感は味わえなかったものの、オンデマンド配信で何度もマーカス氏の講演を聞きました!)
Thrive とは?
今回、 UiPath FORWARD5 のテーマは、 ”Robots Work. People Thrive. ”。
つまり『ロボットの力で、人がもっと輝く世界を。』
そのテーマの "People Thrive" に焦点を当てて、マーカス氏は、Love + Work のトピックをお話されていました。
マーカス氏は、まず FORWARD5 の会場設営を眺め、「ベネチアンホテルのカンファレンスホールでは何度も登壇しているけれど、これほどステキな会場で登壇できるのは初めてです」と四季をイメージしたデザインにベタ惚れの様でした。その和んだ空間で、今回のイベントテーマにあるキーワードに絡めた質問で話は始まりました。
「あなたにとって、輝いている人(who thrives) ってどんな人ですか? 」
【Thrive】
UiPath では「輝ける」と訳していますが、辞書的には繁栄するという意味がある言葉です。
「Thrive って、お金がある人や社会的に成功している人、幸せと感じている人、精神的に満たされている人、など人によって受け留め方が違いますよね」と彼は続けます。
「それゆえ、どんな基準をもって、Thrive を測定するのかというのは、どういう基準で resilience (回復力) を測るのかと同じくらい難しいですよね」とマーカス氏。
「そういう観点については、義務教育を含め、誰も教えてくれないこと」だと言うのです。
「数学の先生は公式をどれだけ覚えているかの試験はするものの、自分自身が誰なのか、自分の強みは何なのかについては教えてくれません。」
「学校の段階評価システムで用意された基準をベースに何かできるか?何ができていないかという観点で評価されますが、個々の強みをベースに強みを発揮できるようなシステムで評価されることはありません。」
「つまり、実際のところ、社会の仕組みを見ると、我々は、人間ではなく、仕事を繁栄させるために生きているようなものです。」
「俗にワークライフバランスと言いますが、健康状態も変わるし、子供は成長するし、業務内容もずっと1ミリも変わらないということはなく、すべての物事が静止していないという事実を鑑みると、ワークライフバランスという概念は、一瞬成立したとしても、それを維持するのは不可能だ」とマーカス氏は言います。
「人間それぞれ違う個性を持った個体だということを前提とすると、どうすれば人間が人間らしく輝けるのか?」
マーカス氏の長年の研究 (Study Excellence) で導きされた答えは…
" Take loves seriously" です。
Take loves seriously
「自分が心から好きなこと(Love)は何かと模索し、それに真剣に向き合うこと。自分の業務の中に自分の心から好きなことを見出せること。」
「じゃあ、自分が心から好きなことを見つけるにはどうすればいいの?」
「自分が9歳ぐらいの時のことを思い出してみてください。当時は自分が何が心から好きかわかっていたはず。」
「とはいえ、一般的な学校における評価制度はいわゆる通知表などに示される5段階や10段階評価で、それに基づいて試験を課される設計で、自分の心から好きなことを伸ばすというような方針は含まれていません。」
「それを踏まえると、自分がどんなことが心から好きで、自分がどんな人間なのかという重要な問いかけは学校教育では教えてもらえないものです。つまり、人生における輝く方法(how to thrive life) に関しては、教育カリキュラムには含まれていないのです。」
「では、自分がどんな人間なのかというのは、DNA や社会経済的地位によって決まるものでしょうか?」
「もしそうであれば、兄弟や姉妹は全く同じ個性を持った人間になるものでしょうか。」
そこで、マーカス氏は何人かの有名人を引き合いに出し、説明を続けます。
そのうちの1人に俳優のジョージ クルーニーを挙げました。
「ジョージの叔母、ローズマリー クルーニーは有名な歌手であり女優です。他にも芸能関係の家族がいます。それが故にジョージは俳優なのでしょうか。
確かに叔母の影響はあったかもしれませんが、ジョージの姉、エイダは女優ではなく、会計士です。」
「必ずしも、DNAや社会経済的地位によって、自分がどんな人間かが決まるわけではないのです。DNAや社会経済的地位に特段とした差異がない兄弟や姉妹でさえ、個人がそれぞれ違った個性を持った人間なのです。
これは、心理学でいう、個体差(individual differences) の領域とのことです。」
「人間の個体差は、誰一人として同じ構造を持っていない、複雑なシナプス構造によって決まるという脳内のとてもユニークな機能で、誰一人として同じ個性を持った人間は存在しないのです。人間はみな、"Wyrd" (ウルズ:運命、宿命)を持って生まれているのです。」
ここで再度投げかけた問い、「自分が心から好きなことを見つけるにはどうすればいいの?」に戻ります。
「学校では教えてくれない、人生で輝くために最も重要なこと、自分が心から好きなことを見つけるには、自分が誰なのか?というところを、細部まで徹底的に掘り下げる必要があります。それが、search for love, 自分が心から好きなことが何なのかを見つける道筋になるのです。」
日常生活で Love を見つけるには?
そこで、マーカスは、日々の生活において、自分が心から好きなことが何かを探すための3つのヒントをくれました。
「自分が心からすきなことをやるときは・・・
1)やる前からワクワクしていること。楽しみで仕方がないこと
2)時間を忘れるくらい没頭してしまうこと
3)やった後の達成感が心地いいこと
この3つに当てはまることが、自分が心から好きなことです。」
「日々の業務において、本当に小さなタスクでもこの3つに当てはまることはありませんか?」
「日々やっていることを1つ1つ紐解いてみてください。1つ1つのタスクが糸だとすると、自分が心から好きなことが「赤い糸」にあたります。」
「この赤い糸を探すには、自分が何をどのようにやっているときがとっても好きか、細かく細かく突き詰めてください。」
「人生において輝きたいのなら、自分が心から好きなことにフォーカスする必要があるのです。」
「人間は自分が心から好きなことをやっているとき、心が開いた状態になるので、新しいアイディアが浮かんだり、仕事がはかどります。」
「つまり、自分にとって赤い糸となることに取り組んでいるとき、人間は最も成長できるのです。」
赤い糸の大切さ
「今まで、学校教育での例を挙げていましたが、職場においてはどうでしょう?個人個人の持つ赤い糸に対する取り組みについて、きちんと評価されているものでしょうか。」
「蓋を開けるとそうではありませんよね。人事の評価制度では、個人個人の弱点や不得意なところを、今後の改善ポイント (Area of opportunities ) として提示されます。」
「 個人個人の強みがいわゆる赤い糸で、これが個人が輝くためのキーなのですが、残念ながら、人事の評価制度はそこに焦点がおかれていません。」
ここで、マーカス氏の幼少時の経験を共有してくれました。
マーカス氏は子供のころ、吃音があり、はじめて学校で自己紹介をしたとき、緊張のあまり、自分の名前をきちんと言えなかったため、からかわれるようになったそうです。だから、それがトラウマとなり、誰かと話すのが怖くて、静かにしていたそうです。
あるとき、400人の聴衆を前に話す機会がありました。そのとき、彼は心から好きなことを見つけたそうです。1対1で会話するときにあった吃音が全くなく、とても心地よく話ができたそうです。話すこと自体が苦手だと思い込んでいたマーカス氏は、実は大衆の前で話すことは心から好きなことで得意分野だったのです。
それをきっかけに、当時の先生から、1対1で会話するときも、400人を目の前にして話をしていると想像してみればいいのでは?というアドバイスをもらい、マーカス氏の赤い糸を武器にすることを学んだそうです。
「どんな変化に対応するにしても、赤い糸~心から好きなこと~を武器にすることで、変化に対する恐怖心や不安感に負けることはありません。
常に、どんな変化があっても、自分のコンフォートゾーンの中にいることが大切です。」
「自分が直面している問題がとても大きく感じ、解決策がないとき、その問題とは関係のない、自分が心から好きなことをどんどん突き詰めていくと、自分の中で、心から好きなことの比重が大きくなり、大きく感じていた問題がとってもちっぽけなものだと感じるようになります」
「人生で輝くためには、自分が心から好きなことに真剣に向き合い、その強みにフォーカスし、それらの赤い糸を紡んでいくことで、次のステップとなるチャレンジ領域へ進んでいくことです。」
「さらに言うと、愛というのは、他の人間に反応するときに最も深まるものなのです」
職場でのチームワーク
「世界において、86%の人間がチームで仕事しています。強いチームとは、異なった赤い糸やタレントを持っている個人が集まり、各々の赤い糸を紡ぎ、赤いキルトを作り上げるようなものです。ひとりひとりが赤いキルトである必要はなく、チームとして、キルトを編み上げるのです。」
インドネシアで2017年に見つかった、4万4千年前の世界最古の具象絵画とも言われている狩猟の絵画をマーカス氏が独自の視点で考察します。
(多分、これかしら?)
「女性が描いた絵だろうということですが、その女性は洞窟の中から、家族や仲間を観察します。そして、あたなは、野生ネコ、あの人は、ワニのようねとそれぞれの個性を動物に例えて描いたのではないのだろうか、そして、その異なる個性を持った仲間がそれぞれの強みを活かし、獲物を捕らえるシーンは、まさにチームが表現されているのではないだろうか。」
「では、現代社会でも同じでしょうか。残念なことに、ほとんどの人事システムは経理システムと同じように機械的で誰が誰の部下か、上司かはわかるものの、本来のチームを表現するような仕組みはありません」
「人間は業務を行うためのツールを作ってきました。そして、ツールが我々を作ります。そんなツールを作る際に、チームという概念は考慮されていないのではないのでしょうか。」
「英語の慣用句としてよく、"There's no "I" in team" (個人の力でなくチームワーク)ということが言われますが、これは全く以て、誤解だと思います。それぞれ異なる個が揃って初めてチームになるのです」
優れたリーダーがやること
「優れたリーダーも多種多様で色々な人財がいます。
とはいえ、私が知る限り、優れたリーダーには1つだけ共通点があります。
その共通点とは、週に1回15分間の チェックイン (1on1) を行うことです。週に1回たったの15分だけ、年換算して年に52回、チェックインをします。
そして、この チェックインで聞く質問は過去と将来に関する2つだけです。
1)先週、最も心から好きだと思えたことは何ですか?
2)今週の優先事項を教えてください。何かサポートは必要ですか。」
「リーダーの皆さん、いかがでしょう?
忙しくて、そんな時間は取れない。そんな煩雑なことはやりたくないと思ったあなた、それができないなら、リーダーを辞めるべきです」
「リーダーの下にいるメンバーは、頻繁にリーダーに見てもらいたいのです。仮にチェックインが月1回だとすると、その前の月にやったことを思い出せず、チェックインはふわっとしたものになり、何の意味も持たなくなります。こまめに、各メンバーが心から好きなことをリーダーに伝える機会があることで、リーダーは、その人に合った仕事、つまりその人が組織に最大限に貢献できる仕事を与えることができ、社員のエンゲージメントも仕事の質も高くなります。全体の業務の少なくとも20%くらいが心から好きなことであれば、エンゲージメントが下がることはないでしょう。」
「それぞれの人間はユニークであり、みんな違う。それが人間の仕様です。
そのユニークさを活かすことで、意義のある貢献ができるのです。」
まとめ
マーカス氏の熱いメッセージをすべて伝えたいという思いで、書き留めましたが、最後に簡単にまとめたいと思います。
最も強いエネルギーを持つ愛 (Love)。
「好きこそものの上手なれ」という言葉もあるよう、人間は好きなことをやっているときが一番輝けます。
すべての人間はそれぞれの宿命の下に生きていて、その人生において、愛を感じること、心から好きだと思えることはあなたにとって運命の赤い糸です。
やる前からワクワクし、やり出すと時間を忘れて没頭してしまい、やった後も達成感の余韻に酔えるようなことを見つけ、それに対し真剣に向き合って生きていきましょう。
各々の赤い糸を尊重することで、その人間は強みを発揮できます。
チームで仕事をするということは、没個性ではありません。
それぞれのメンバーの強みを活かすことです。各メンバーが強みを発揮できるチームが最も輝けます。
そんなチームをリードする優れたリーダーは、頻繁に各メンバーの強みを認め、それを伸ばすためのサポートをできる人です。
仕事にエンゲージメントを持ち続けるには少なくとも2割程度のアクティビティが自分の心から好きなことであることが重要です。