ワケあり美女の下僕
今、お慕いしている方がいます。
スレンダーでありながら引き締まったボディ。そして何より麗しく整ったパーフェクトフェイス!
そう、猫です。
トップ・オブ・ザ芸術家レオナルド・ダ・ヴィンチが
「猫科の一番小さな動物、つまり猫は最高傑作である」
と言ったのは有名ですね。まさに生きた芸術品。それが猫!
日本の偉大な変態。 いや偉大な文豪の谷崎潤一郎も
「動物の中で一番の器量よしは猫族類でしょうね」
と猫にメロメロだった御様子。もう耽美を具現化したものが猫!
そんな猫に出会ってしまった…。
運命の猫は、実家付近をうろつく野良であった。
まず一目惚れは母だった。
偶然にも我が家の犬と同じ白黒バディが目を引いた。
他の野良猫は群れているが、いつも1匹で行動しているのも、気になった。
「あの子が飢えや寒さに苦しむのは耐えられない」
餌付けで仲良くなる作戦からスタート!
たまにゴハンは食べに来てくれるが懐かない。もちろんナデナデなんて出来ぬまま。少し近づくだけでフーフー威嚇。
「いつもフーフー言ってるからフー子だね」
つい、私はアダ名をつけてしまった。
「名前は呪」
陰陽師の言葉である。呪いをかけるのではなく、名付けることで縛る、縁が結ばれるようなニュアンスだ。
あぁ。フー子。
私は一人暮らしだが、実家も近いので、実家に寄る度にフー子を探す日々。
ケータイで連絡できる方でなく、本物の住所不定の方なので、会いたい時に会える訳じゃない。
野良猫への片想いは辛かった。人間のオスなんて野良猫に比べれば楽なもんだ。
去年のお盆。突然に運命の時が訪れた。
「ぎゅああああ、フー子が子供を産んで連れて来てるー!!」
母の鬼電により、実家に駆けつけると、フー子が子猫と一緒に軒下にいた。
まだ懐いていないが、子猫の命を守るためにも今しかない!
・・・。
フー子は、捕まえようとした我々の手をすり抜けて逃げてしまった。子猫は確保。
子猫は4匹。どこで産んだのだろう? 2週間以上は経っている様子だった。夜中にフー子が口で咥えて運んできたのだろう。ゴハンに便利とはいえ、実家を頼って来てくれたフー子。どうしょう、ごめん…。
2時間程、経過した頃だろうか。フー子がまた姿を見せた!
子猫が心配なのだ。子猫の入ったダンボールを見せ、室内の絶妙な場所に置いた。
外にいるフー子。室内の子猫。扉は開いている。
過去、何度か扉を開けて、フー子を室内に入れようとしたが決して入らなかった。でも…。
ミャアミャアと子猫達が鳴いた時、スっとフー子が初めて室内に入った!
息をひそめ壁の一部と化していた私は、即、扉を閉めて、フー子ファミリー全員確保!
別室にいた母に報告をして、お寿司の出前をとった。とりあえずお祝いじゃ!
その後、子猫を守るため元々強い警戒心がMAXになっているフー子は、犬と仲良くなるどころではないので、私の家に急遽お引越し。
羊たちの沈黙のレクター博士並に布でグルグル巻きにしてフー子は移動。
猫は賢い生き物だ。フー子は初オシッコはカーテンレールの上から床に注ぐといったアグレッシブスタイルだったが、自然に猫用トイレを使うようになった。
そして母性の強いフー子は、私が近づくとバンバンッと銃声のような威嚇をし、子猫を一生懸命守って子育てをしていた。
まあ、私を敵認定は真に遺憾ではあるが、その姿は尊かった。
聖母マリアの猫バージョン。
威嚇の顔は悪魔的ではあったものの…。
「猫ちゃんの動画を送って!癒されたい」
と友人に頼まれ、送信しました。私は素直。
「思ってたのと違う。化け猫ホラームービーきた。怖い」
お分かりいただけただろうか?! クレームいただきました。ひどい。
子猫4匹はフー子のオッパイを飲んでスクスク成長し、ついにワラワラと歩き出した。
「子猫の時期は大切。人間に慣れさせろ」
獣医さんからミッションを受けていたので
「これはお仕事だから。人間は怖くないと子猫に教えるためだから…ハァハァ」
と、フー子に言い訳しながら、可愛さスーパー大爆発の子猫4匹を抱っこする日々。
その甲斐があってか、先祖の霊(お盆にやってきた猫ファミリー)のご利益か、子猫の里親は順調に決まっていった。
子猫がいなくなる度に、フー子はオロロンオロロンと切なく鳴きながら部屋中を探していた。
ラスト1匹のキジ柄の子猫(メス)は、仮予約済であった。
フー子の悲しむ姿に胃がキリキリと傷んでいた私は
「キジ柄子猫の里親話を決裂させよ」
と式神を放った。陰陽師では全くないが!
そして、先方から里親辞退の報告があり、どこに角が立つこともなく、フー子は娘と暮らすことになった。with私。
5月、猫との暮らしは10ヶ月を迎えた。
フー子の娘はすっかり母猫より大きくなったが、ド甘えん坊である。非常によき!
フー子は、あいかわらずフーフーと威嚇はする。もちろん抱っこなんて夢のまた夢!
だけどだけど。
以前は容赦なく鋭い爪で、私を引っ掻いていたのに。
今は8割りは爪をひっこめたお手手でパシっとするだけ! 肉球サービスありがとうございます! 残り2割は聞かないで。
「子育てが終わったら避妊手術してまた野良に戻すべきでは? 保護団体もやってることよ。家庭内野良になるケースも…」
と、野性味溢れるフー子を見て、猫好きな友人に言われたこともあるけれど。
野良猫の平均寿命は5歳だそうな。飼い猫ならば20歳以上もザラ!それだけでも飼っている価値有。
想像以上に懐かない猫だけれど。
「顔が好きだから良い」
恥ずかしながら、これに尽きる! スーパービューティーWOW!
超絶ゆっくりと心を開き出したフー子が愛しくてならない。&ぬるま湯育ちの娘も!
「好きだーーーー!!」
家への帰り道、叫びたくなる。たまに声に出ちゃってることも…恥。
以上が、バリバリ野良猫だったフー子が、相思相愛の愛猫になるまでの前半戦ストーリーである。
これから始まる後半戦も楽しみでならない。フフフフフフフフフフ!
追記。2年近く経過したが、いまだに懐いていない。ブレない女、フー子! でも毛並みが良くなり美しさに磨きがかかっているような…。す・き!
生きる糧になります! 御朱印代にいたします!