車椅子の息子と、自分の意見を言う練習と
「このベンチに座りたいので、隣のベンチに行ってもらえませんか?」
「ああ、いいですよ、、、」
私は、よく言えば優しいのですが、自分の意見を主張できないのです。
だから理不尽な申し出をされたとしても、嫌だとは思いつつ、自分の意見を言えないものだから「いいですよ」と言うほどです。
先日も、娘と動物園に行って、見知らぬ人から理不尽な申し出をされて受けてしまいました。
娘と二人、動物園のフードコートみたいなところで、ソフトクリームを買って、フードコートのベンチのひとつで食べていたら。
見知らぬ女性から、
「ここのベンチを使いたいので、隣のベンチに行ってもらえませんか?」
というびっくりするような申し出があったのですが。
自分の意見を言うことができないものだから、
「娘と二人で楽しくソフトクリームを食べてる最中だから嫌だなあ」と思いつつも。
「ああ、いいですよ、、、」
と、一応、YESと返事をしてしまいました。
で、見知らぬ女性から変な頼まれごとをされても、自分の意見が主張ができない私が。
今は車椅子の息子のお母さんをやっているのだから、それはまあ大変なんですよね。
というのも、車椅子を連れていると、自分の意見を声を上げて主張しなければならないことが多いんです。
例えば、車椅子の子供と、ふつーにお出かけをして。電車やバスに乗ることもあるんですが。
車椅子連れだと、電車やバスに乗るだけでも、駅員さんやバスの運転手さんに。
「スロープをお願いします!!」
と声を上げなければならないんですよね。
そこで運転手さんにものすごく困った顔をされたり、
(あまりないですが)嫌そうな顔をされても、
スロープを出してもらうことを引っ込めることはできないんですよね。
スロープがないと、車椅子は電車やバスに乗れないんだから。
あとは、ふつーに道を歩いていて。
たまーに、道を塞いでいる人がいるんですけど。
そんな時も、
「車椅子が通るので道を開けてください」
と道を塞いでいる人に言わなければならなくて。
道を開けるのに嫌そうな顔をされても、譲るわけにはいかないんですよね。
車椅子だと、避けて通ることができないから。
というわけで、自分の意見を通すことが苦手な私なんですが、車椅子の息子が生まれてからは。
やってほしいことを伝えないと、電車にも乗れないし、道も通れないので。かなり苦労して、自分の意見を言う訓練をしているわけです。
本音を言えば、40年間も自分の意見を主張することなく、ダラダラと生きていたのだから。自分の意見を主張するなんてことはいまさらやりたくない。
だから、もしも車椅子の息子が我が家に生まれなければ。
私は一生、自分の主張をすることなく、一生を過ごしていたはずです。
それが、車椅子の息子が生まれちゃったものだから、もう運命で、修行だと思うしかなくて。
息子が生まれてからの、この10年間は、自分の意見を主張し始めています。
で、話が最初に戻るのですが。
先日、娘と動物園に行って、見知らぬ人から理不尽な申し出があり。
それは、
娘と二人、動物園のフードコートみたいなところで、ソフトクリームを買って、フードコートのベンチで食べていたら。
見知らぬ女性から、
「ここのベンチを使いたいので、隣のベンチに行ってもらえませんか?」
と申し出をされたことなのですが。
以前の私であれば、席を譲るのは嫌だなあと思いつつも、
「まあ、いいですよ」
と言ってしまうところでしたが。
口から出た言葉は、
「ああ、いいですよ、、、
今、ソフトクリームを食べているので、これを食べ終わったら」
でした。
理不尽な申し出にYESと言ったものの、自分の意見を盛り込めることができました。
というわけで、そのままその席でソフトクリームを食べていた私と娘なのですが。
その時に、このやりとりを3メートル先で聞いていた、女性の夫と思われる男性が駆け寄ってきて。
「変なことを言うなよ」
と女性をたしなめ。
「すみません、席はそのままで大丈夫です」
と謝られ。
女性を引っ張って、ぞうエリアの方向へ去ってしまいました。
一方、残された私と娘なのですが。
ソフトクリームを食べたあとは、
「今日の動物園は、変な人がいるからもう帰ろうか」
となり動物園を後にしました。
というわけで、自己主張ができない私ですが。
車椅子の息子が生まれてからは、自己主張せずには進めなくなり、自己主張の練習をしているところです。
自己主張の練習を始めてから10年がたち、少しは主張できるようになったかなと実感してきています。
本当に、車椅子の息子くんには、私の成長の機会を与えてくれてありがとうと言うしかないです。
(追伸)
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