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エッセイ【忘れられないあの日は、とても晴れた日でした】

高い建物の上から見る地面は平らで2次元だけど、その地面にぐぐっと近づきそこにいるアリを見た時に、その地面はアリにとって3次元であることに気づくことができる。

小学校の1年生の時、私にはある女の子の友達がいた。
学校で仲良くなった記憶がない、学校内で会ったこともないはずなのだけど、なぜか仲良くなったちょっと背が高くて痩せたその女の子は、学校の隣の薄暗い小さな駄菓子屋に、おじいさんおばあさんと一緒に住んでいた。

ある日その子と遊んでいる時にトイレに行きたくなって、そこの家のトイレを借りた日のことは、あれから何十年も経った今でも忘れることができない。家の裏に小さな庭があってそこにくみ取り式のトイレがあったんだけど、壁の隙間をのぞいたら中が丸見えなのでは?というようなぼろっちい
トイレだった。その日はとても晴れていて、庭でおばあさんが洗濯物を干していたことまで覚えている。

トイレに入って戸を閉めたら……なぜかトイレの中が真っ暗だった。こんなに真っ暗じゃトイレに落ちちゃうよと思ったのと、壁に隙間が沢山あったのになんで真っ暗なんだろう?って思ったのが、同時だった。そして次の
瞬間、下の方(つまり便器の中)からオレンジ色の光の玉が浮いてきた。
一瞬、ああ友達が電気をつけてくれたんだって思った。
けれど、良く考えたらとってもおかしい。
そのオレンジ色の光は周りを明るくすることもなく、ふわふわ浮いて……
目の前まで!!
「え?なに……これ?」と思った瞬間に恐怖に襲われ、トイレを飛び出し
一目散に学校のすぐ近くにあった親の店まで逃げ帰った。この出来事以来、私はただの一度もあの子に会っていない。

それからしばらくしたある日、そこの駄菓子屋で買い物をしようと言った
幼馴染みに「ここの家の女の子に最近会った?」と聞いたら「え?ここの家には昔からおじいさんとおばあさんしか住んでないよ。なに怖いこと言ってるの?」と言われ……。

こちらから見える普通の世界も、少し視点がズレることで異なる世界へと
つながっているのかもしれない。子どもの頃、私のまわりには異次元の世界への入り口がいっぱいあった。

★エッセイの元となった課題本

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