見出し画像

安養寺蔵 木造阿弥陀三尊像(國華1547号〈特輯 信濃の仏像〉要旨)

武笠朗 

3軀 漆箔 玉眼 像高:阿弥陀69.0㎝ 観音85.0㎝ 勢至84.0㎝
長野県佐久市 安養寺

 佐久市安養寺の本尊阿弥陀三尊像の解説である。安養寺は弘安年間(1278-88)に法燈国師無本覚心が開いたとされる。本三尊は鎌倉時代の制作だが、様式的に本寺創建を遡る頃の造像とみなされている。
 本三尊は説法印を結ぶ阿弥陀が、立像の両脇侍を伴う三尊像で、阿弥陀の説法印が左右非対称なことも特徴的だが、説法印阿弥陀の三尊像自体が珍しい。類例として、寛元5年(1247)造立の山形・慈光明院阿弥陀如来像と山形・本山慈恩寺観音勢至菩薩像の一具三尊が注目される。本三尊は、本山慈恩寺伝来のこの三尊と姿形や作風が近く、同様の性格で制作年代も近いものと推察される。いずれも東国における運慶様の展開という文脈にあるが、本三尊はより運慶風に忠実な継承作ということができる。
 安養寺のある大井庄を領した大井朝光・光長父子は甲斐源氏末流の御家人で、本三尊の造像に関わった可能性がある。鎌倉政権を介しての御家人と慶派仏師との接触が、本三尊のような運慶様の造像につながったものと推察される。

 



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?