仏法紹隆寺蔵 木造不動明王立像(國華1547号〈特輯 信濃の仏像〉要旨)
山本勉
1軀 古色 玉眼 像高41.7㎝
長野県諏訪市 仏法紹隆寺
この不動明王像は、1992年の『長野県史』の解説において、静岡・願成就院、神奈川・浄楽寺の運慶作不動明王像との作風の類似が指摘された。松島健は1997年の講演で、東京国立文化財研究所が撮影したX線写真で確認された像内納入品の一が、運慶作品に確認される上部月輪形の木札に類似するとして、その点にも運慶作品との関連を認めた。『長野県史』や松島の講演では、仏法紹隆寺が諏訪大社の別当寺として建立されたとの伝承もふまえ、この像の製作に諏訪大社祠官諏訪守重の関与を想定した。松島が像内納入品としているX線写真の映像のうち、木札はそれと断定できず、他の映像も納入品と断定できない。また像の表現は運慶作品に類似しながらも、水準の差は明らかである。したがって、この像を運慶作品にくわえることはむずかしい。しかし、本像が運慶の造形にまなんだ運慶派の仏師の作であることはまちがいないところである。鎌倉前期という時代設定も問題ない。