清水寺蔵 木造地蔵菩薩立像(國華1547号〈特輯 信濃の仏像〉要旨)
岩佐光晴
1軀 漆箔・彩色 像高157.0㎝
長野市松代町 清水寺
本像は清水寺本堂の須弥壇に本尊の千手観音菩薩立像の右脇侍として、左脇侍の観音菩薩立像とともに安置されている。本像については様々な議論が展開してきているが、ここでは論点を整理し、それぞれの論点の概要を示して、所見を述べた。
制作時期については9世紀後半から10世紀半ばまで諸説が出されているが、衣文表現はまだ形式化しておらず、9世紀前半の像に通じる要素があることから、遅くとも9世紀後半には十分遡るとした。伝来については、江戸時代までは現地での存在が確認できるが、それ以前の状況はなお不明とした。図像については、日本における錫杖と宝珠を持す地蔵形式の成立時期との関連で、本像が重要な位置にあることを確認した。
また、本像と観音像が一具であるかについては、両像の造形に違いはあるものの、現状ではいずれとも断言できないとした。用材については、カツラである可能性が高いことを確認した。制作背景については、在地の有力豪族が造像に関わった可能性を指摘し、さらに奈良との関係が想定できることを指摘した。