鳩ヶ嶺八幡宮蔵 木造誉田別尊坐像(國華1547号〈特輯 信濃の仏像〉要旨)
織田顕行
1軀 彩色・黒漆塗 玉眼 像高98.6㎝
長野県飯田市 鳩ヶ嶺八幡宮
鳩ヶ嶺八幡宮が所蔵する「誉田別尊坐像」について紹介する。鳩ヶ嶺八幡宮は、長野県飯田市松尾にある神社で、以前は島田八幡宮と称した。ほぼ等身大の男神像で、八幡神と同一視される応神天皇の別名「誉田別尊」の名で呼ばれる。俗体の八幡神像の中でも、本像は制作年の判明する最古の作例とみられる。重要文化財に指定されている。
像の大きさは、高さ98.6センチ、髪際高77.6センチ。像容は、壮年男子の相をあらわし、冠を被り、鬚を生やす。着衣は、袍を着け、袴を穿き、帯を締める。腹の前で笏を執って安座する。体幹部材の頸部内に設けた首枘受けの上に頭部下端を載せて頭体を接合している点から、特殊な造像背景があったことを伺わせる
像内にある2箇所の墨書により、本像が1288年に造立されたものと知られる。近年は、本像を作り始めたのが1277年、像の完成が1288年と考えられており、筆者もこの解釈に従いたい。
この神像が、武神である八幡神であることや、神社の所在地が北条氏と関係が深い江間氏の支配地であったことからも、制作のきっかけとして、蒙古襲来が想定される。