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酒井抱一筆 飛雪白鷺図(國華1546号要旨)

河野元昭

東京都 山種美術館 絹本着色 1幅 縦141.0㎝ 横50.2㎝

 藤原定家が詠んだ「十二か月花鳥和歌」に取材する十二か月花鳥図が、狩野探幽や山本素軒、尾形光琳、尾形乾山などによって描かれてきた。この伝統を受け継いで、酒井抱一も十二か月花鳥図に筆を執ったが、定家詠和歌との関係を断ち切り、絵画としての視覚効果を高めて、新しい花鳥図ジャンルを開拓したのである。このような12図は12幅対や押絵貼屏風の形で伝えられてきた。現在6点ほどが知られており、大変人気のあった画題であったことがわかる。そのうちに、亀田綾瀬が漢詩の賛を加える5幅があるが、もちろん本来は12図のセットだったのだろう。これを代表して、11月に配される「飛雪白鷺図」を紹介することにした。これは中国画の折葦寒鷺という画題によったもので、漢的なイメージが強い。抱一の十二か月花鳥図では、漢的な図と和的な図がバランスよく配され、全体として和漢の混交イメージが生まれるように構成されている。抱一は儒学者にして、書家として人気の高かった亀田鵬斎と親しかったから、子の綾瀬とも相識だったのだろう。この七言絶句は綾瀬の自詠ではなく、張志龍というマイナーな詩人の作である。明代の文人が、好んで古典詩を画賛に用いたことが思い出される。


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