瑠璃寺蔵 木造薬師三尊像(國華1547号〈特輯 信濃の仏像〉要旨)
武笠朗
3軀 素地
像高:薬師89.4㎝ 日光101.5㎝ 月光103.0㎝
長野県下伊那郡高森町 瑠璃寺
松川町に所在する天台宗瑠璃寺の本尊薬師三尊像についての解説である。縁起によれば当寺は天永3年(1112)に比叡山の観誉が開いたとされ、本三尊像はその創建時本尊とみなされており、定朝様式の作例ながら古様な表現や檀像風の素地仕上げなどが注目され、霊木化現仏の可能性も指摘されてきた。本稿では、中尊薬師像の脚部中央の衣端折返しに範となった古像の形の残存を見、中尊の両体側部まで一材製とする古様な構造に注目し、さらに薬師像の素地仕上げも踏まえ、10世紀頃の古像薬師を踏まえた造像である可能性を指摘した。そして康和5年(1103)の仁和寺北院薬師如来坐像とその後屏に表された日光月光菩薩像に本三尊が様式的に類似することを追認し、本三尊が当寺創建期の造像でありうることを認めた。また両脇侍像が、松本市牛伏寺の十一面観音立像と様式的によく似ていることを指摘し、同一作者の可能性を論じた。