釈迦院蔵 銅造釈迦如来立像(國華1548号要旨)
有木芳隆
熊本県 大恩教寺釈迦院 銅鋳造 漆箔 1軀 像高78.9㎝
本像は、熊本県八代市の大恩教寺釈迦院の本尊銅造釈迦如来立像である。粒状螺髪、白毫相、三道相を表し、内衣、衲衣、覆肩衣、裙を着ける。左手は垂下して掌を前に向け、右手は屈臂して掌を前に向け、右足をわずかに前に出して立つ。鋳銅製で、頭体幹部は頭部から左肩外側部を含んで衲衣の下縁までを一鋳する。その他の部分は、衲衣下縁以下の両足首と両足枘を含む裙裾部分、右肩外側部、両手首先をそれぞれ別鋳している。当初は漆箔を施していたとみられるが、現状では後補の茶褐色彩が塗布されている。
卵形に近い面貌に端正で小振りな目鼻立ちを表し、明るい表情を浮かべている。このような顔立ちの仏像は文永年間(1264~75)頃にみられ、釈迦院では仁治3年(1242)山王七社神像が造立されていることなどから、本像もおおむね13世紀半ば~後半にかけて造られたものと考えられる。細部まで克明に表現されており、おそらく京都周辺で製作されて当地にもたらされたとみられる完成度の高い優れた金銅仏である。