帝国劇場へ聖地巡礼して感激したとある「ジャニ男タ」の話(後編〜ジャニオタとジャニ男タ〜)
前回のnoteでは「帝国劇場へ聖地巡礼して感激したとある「ジャニ男タ」の話(前編〜ルポ〜)と題して,ボクが職場で知り合ったばかりの女性のジャニオタと一緒に帝国劇場へ聖地巡礼し,それが初めての経験であったボクの現場で思ったことについて綴った.今回はその続きと,彼女との食事で話してて思った「ジャニオタとジャニ男タはやっぱ違うんだな」ということについて自分の備忘録としてまとめておきたい.前回は以下の文章で締めくくった.
(帝国劇場)入り口から見える室内には青いツイタテがあった.彼女曰く,舞台の演出で客席からアイドルが登場するための仕切りらしい.青色で即席で立てられた壁の向こう側に今までずっと応援してきたアイドルたちがいる.この「あともう少しで...!!」というポジティブな興奮と,遠い距離感で満足しているいつもの自分が入り混じり,なんだか複雑な気持ちになった. そして,しばらくその場を堪能したあと,彼女はボクをある特別な場所へ連れて行ってくれた...
音漏れ現場
その特別な場所とは帝国劇場内にある,知るひとぞ知る「音漏れ」の場所である.
音漏れの現場は各コンサート会場に存在し,チケットの選抜に外れてしまったものの少しだけでもその雰囲気を味わいたいファンたちが集結する場所としてボクも昔から認識はしていた.
劇場施設内にある「音漏れ」現場は,関係者しか入れないとか,居ちゃダメな場所でもなんでもない,ごく普通の場所であった.彼女の入念なサーチによってその場所が発見されたらしいため,念のため場所の明記は一応控えておく.といっても,その現場は本当に至って普通の場所である.
彼女のリードによって導かれながら,観劇できなかったことへの悔しさの吐露を聞く.今までTwitterで文字を通じて見聞きしていた感情を生で触れた.
現場につき彼女は「ここ ここ!」とまるで今から本当に観劇するかのような明るさでその場所へ急ぎ,さっきまでの悲しい感情を晴らす.興奮冷めやまない感情を彼女もボクも抱えてたが,いかんせん音漏れの現場は耳をすませないと聞こえないということもあり,努めて静寂を保ち,全神経を目の前の空間に集中させる.
聞こえる音は小さいがたしかに聞こえる.18時半くらいにどの曲が披露されているのかを知らなかったのがボクの予習不足だったけれど,明るい系の曲にのせたJr.たちのきれいなユニゾンが聞こえた.興奮したボクは「うわ!!聞こえる!!!すごい!!!」と言おうと思ったが,彼女は全神経を集中させすぎて表情がめっちゃイカつかったので我慢した.
どうやら,この日は特に聞こえづらい日だったらしい.というのも,帝国劇場施設内にある多くの飲食店からおっさんたちの笑い声が聞こえ,その声がいつもより大きいために,妨害が強かったのだ.
「おっさんたちうるさーい」とコボす表情もすごく怖かった.けれど,ボクにとっては初めての経験であったためボクは1人で非常に感動していた.今までは収録されたライブやコンサートの模様をテレビやインターネット上でのみ享受していたために,「今」聞こえることに対して高ぶる興奮を覚えていたのだ.
彼女は今自分たちのいつこの現場で経験したエピソードを話してくれた.この舞台が始まった初日,この場所には数名のおばさんしかいなくて割とあんま知られていないということ,ヴァサイエガ(Jr.)くんの声は高いからめっちゃ聞こえるということ...
あとは,どういう文脈で言っていたのか忘れてしまったが,ひたすら海人のこと愛でる発言をしていた.「海ちゃん頑張ってねー私はここから応援してるからねー!」と,その声色にはひたすら愛を感じた.このときの彼女は非常に幸せそうな表情を浮かべていた.ボクも「今日来てよかったなー」という純粋で素直な気持ちと,今までと違う感覚を享受したことで浮かぶ複雑な感情が混ざり合いながらその場を堪能することができた.そして一幕終了後,休憩時間に入ったことをきっかけに食事へ向かうことにした.
Dオタとジャニオタ
言い忘れていたが,彼女はジャニオタでありながら,ディズニーオタクでもあった.まだそれについて彼女と詳しくは話していないので,詳細はわからないが,パークには何度も足を運んでいるらしい.彼女は福島出身で今年東京へ上京してきたため,足繁く通っているのは今年からなのだとボクは推察している.
ボクは生まれてから小学3年生まで東京・江戸川区・葛西というディズニーからチャリで30分圏内の地域で暮らしてきたため,お母さんや友達と一緒に何度も何度も通っていた.少なくとも週3は通い,学校終わった後にディズニーランドへ行くこともあった.習い事が終わった夜,お母さんに「新しいショーが始まるから行こう」ということで19時くらいにシーへ入園してそのショーを堪能するだけして帰るということもよくあった.一日まるまる時間あるときはランドへ行き,午後にはシーへ向かうという日々も当たり前のように過ごしてきた.
なのでボクは「オタ」ではないが,生まれてから約10年間ずっと通い続けていたために,ランドやシーに対しては「自分の故郷」という印象を持っている.パーク好きの人なら共感してくれるはずのことだが,何度行っても飽きないし毎回楽しい!
彼女とお店を探している道中,ディズニーの話になったため,以上の気持ちを投げかけてみたら「もう、ほんとそれ!!わかる!!毎回新しい発見があるよね!!!」と熱く共感してくれた.
余談だが,社会学を勉強しているとよくディズニーランド/シーの話が出てくる.ジャン・ボードリヤールのシミュラークル・シミュレーション,ピエール・ブルデューの界や象徴資本.また,先日とある出版イベントの懇親会で博士課程の先輩から教えてもらった,カリフォルニアディズニパークとマーシャル・マクルーハンの提唱する理論との関連性.メディアによる人間の中枢神経拡張の話と様々な世界観を同時に持ち合わせる東京ディズニーランドとの関連性について調べたときは本当に「なるほど!」と思った.
つまり,ディズニーを楽しむ視座が幸いながらボクの中で最近増えたということもあり,これについてもぜひ彼女と話してみたいと思っている.しかも,彼女は哲学専攻.フィールドワークするしかない...!!
ジャニーズが好きでディズニーも好きなボクらは確立された心のサードプレイスを持っているため,どんなことが身の回りに起きてもきっとすぐに立ち直れることだろう.
どう好き?推しのこと.グループのこと.
食事は彼女がまだ未成年だということもあり,お酒は交えずボクもソフトドリンクにした.あとは,ボクはお酒を飲むと顔がめっちゃ赤くなってしまうため,ちょっと恥ずかしかったというのもあった.
席に着いてからはほぼジャニーズの話で盛り上がった.なかでも真剣に話し合ったのは「King&Princeのことをどう好きなのか」という話であった.注意書きではないが,これはあくまで食事中のいわば雑談のようなものであり,インタビューではないため録音もしておらず,正確に記憶できている自信もあまりないため,これを読んでいる「ーかー」は訂正するところがあれば,速攻ボクにLINEして欲しい.
彼女は高3の受験時にメディアで多く取り上げられるキンプリにいつの間にか興味を持ち,いつの間にか彼らについて触れ,いつの間にかライブやらコンサートやら行くようになったという.デビューしてからのファンで最も多い担当はやはり紫耀だろう.ドラマや映画,バラエティー番組に引っ張りだこであり,顔面国宝とも言われるその顔立ちに魅了されない訳がない.
しかし,彼女からはあまり紫耀の話を聞くことがない.彼女がよく言及するメンバーは海人と廉と神である.プロフィール上はじぐれん担で,LINEの上にはっつける方のイメージは彼らの写真である.でも,ボクが聞く限りだと海人を愛でる発言のほうが多い気がする.
これがなかなか面白い.彼女は,「自分は推し担にめっちゃ厳しい」と言うのだ.海人にはデレデレでいつもブラコンのお姉ちゃんのような溺愛の感情を出す彼女だが(とはいえ彼女のほうが年下),とくに廉には厳しかった.
ボクもつくづく思っていたが,廉は生歌で大体音を外す.Twitterでそういうことを言うときっと過激な廉担から執拗なバッシングを受けると思っていたため,口にはしていなかったが,廉を推す彼女は「廉はすぐ音外す」と発言し,ボクは非常に驚いた.曰く,「廉はもっとボイトレを受けて欲しい」とのことで,ボクは激しく同意した.「どんなとーきも」だけで外してるんじゃねー!!笑
彼女の「推し担にめっちゃ厳しい」というこの考え方には,ある根底に支えられたものであるということも知った.それは「不遇な人が好きで,メインの人はそこまで好きになれない」という彼女自身の趣向である.この「不遇」というのはもしかすると「未熟」にも置き換えられるかもしれない.なんでも器用にパーフェクトにこなせるスター的な人物というよりも,頑張ってはいるんだけれどところどころのミスや,完成しきれていない一面を出してしまう人物に惹かれるようだ(アイドルにたいしてだけなのか,リアルの恋愛もそうなのかはまだはっきりしていない).だから,紫耀くんのことは好きっちゃ好きだけど,一番ではないようだ.
なるほどねーーー.ジャニーズファン研究の論文を今までの間に結構読んできたボクは様々な事例やインフォーマント,詳らかにされた結果が脳内に出てきて彼女のそれとリンク付けようとしていた.
ただ,ボクは少しここに反論したいところがある.「紫耀くんは正真正銘のスターなのか」というところである.
彼はたしかに容姿に優れ,歌声も魅力的で,それなのに言動行動はおバカなところも多いという点でギャップもあり,心を掴む長所にあふれている,ザ・アイドルだ.今となっては数々のテレビ番組に出演し,映画も主演で立て続けに公開され,飛ぶ鳥を落とす勢いはまだまだ止まらない.
しかし,今のこの現実にたどり着くまでに相当な葛藤を抱えていたことだろう.
King&Princeが取り上げられたドキュメンタリー番組『Ride On Time』のなかで髙橋海人はデビューが決まってから嬉しい気持ちもある反面,今まで味わったことのないような責任感を感じ,勝手に涙が出てくる瞬間があったことを赤裸々に述べている.
嫌味な感じで海人と比較する訳ではないが,その責任感というのは客観的にみると紫耀くんのほうが大きかったのではないかと思わざるを得ない.まだ芸能界に入ってから間もない中で様々な違和感や課題に出くわしただろうに,事務所からの破格な期待を背負ってJr.の期間を過ごし,そしてデビューするにあたってグループのセンターとして抜擢される.デビューしてからもグループとしてそして個人としてメディアに多く出演することになる.これはたしかに,彼が潜在的に秘めているジャニーズスター性が買われたともいえることだろう.
これに関して,SMAPは自身がメインパーソナリティーを務めた『FNS 27時間テレビ』のなかで興味深い発言をしていた.たしか「未定企画」というタイトルでSMAPの5人が,机と椅子しか存在しない部屋に通され,そこで1時間近く時間をつぶすという企画があった.そこで,グループとしての半生を振り返っているときに中居くんは「変な話だけどさ,オレたちの世界ってさ,会社の入れ具合ってとかってあるような気がする.売り出そうみたいな.」と発言する.つまり,本人の素質も重要ではあるけれど,事務所に依存する割合が非常に大きいということを彼は言及する.
中居くん曰く,SMAPはデビュー当初,事務所に期待されていなかったのではないかという主旨のもと以上の発言をしていたのだが,紫耀くんは大いに期待されていたのだろう.これまでの人生で味わったことのないような大きすぎるプレッシャーを抱えたに違いないはずだ.
彼女は「紫耀くんはキャリア的にトントン拍子であがってきたかのようにみえる」ということで,大好きは大好きだけれど「特に!」という位置付けにはならないようだ.
これを受けてボクはジャニ男タである自分の特異性の一端が明らかになった気がする.前回のnoteでも言ったことではあるが,ボクはあくまでジャニーズを憧れの対象として見ている.その中でも特にSexy ZoneやKing&Princeはほぼほぼタメの世代だ.しかも,King&Princeに関してはJr.時代という下積み期間をみてきているため,自分の人生を伴走してくれるパートナー兼ライバルという視座がある.「人生を同じ時間感覚のなかで共に歩んでいる」という根底の意識によって,ファンであるボクは客観的に見られる数字や文字情報の向こう側を見ようとしていて,その数字の向こう側というのはもちろん女性ファンもそれを享受する.しかし,その方向というか見方というか...視座はやはり男性と女性でやっぱり違うんだなと感じた.これは別の話題(とっつーのイケメンな感じと奇異な行動の併存は受容できるかどうか)でも大いにかなり感じられた.んー考えさせられる...
今回のこの聖地巡礼→食事でボクは今までもそしてこれからもお世話になるジャニーズについて色んなことを考えさせられる1日となった.
彼女と過ごしたこの時間は仕事終わりの3時間という短い時間ではあったが,ジャニーズを楽しむマジョリティのファン(女性ファン)の姿を生で感じ,そして思想に触れることもできた.研究をする上でも,自分自身にとっても,非常に貴重な時間であった.これからも,ジャニーズからやる気と活力を貰い,そして,コンテンツを送り出すアイドルもそれを受け取るファンのどちらも,幸せで心豊かな日常を過ごせるよう,学術的アプローチから自身も携わっていきたいと強く感じたのであった.