カメラの外で,上智大学の学生・マリウス葉(19)は何を考えているのだろう?〜ジェンダーと国際教養とMIT〜
先日,様々なニュースサイトを登録しているボクのPCにとある通知がやってきた.その通知というのは,マリウスのジェンダー発言に関する記事がアップされたことのお知らせであった.
前々から,マリウスが女性の性別役割分業という風潮に懐疑的な姿勢を見せていることは既に知っていたのだが,どうやらその考えは勝利もまた同様らしい.勝利が来月号の雑誌のインタビューで「そこに性別の差はないと思う」という発言をして注目を集めたことがその記事には載っていた.
今回の記事ではボクが前々から気になっていた,上智大学生・マリウス葉はカメラの外で一体何を考えて生きているのかについて考察してみようと思うのだが,まず初めに,ボクが彼の学術的コミットに興味を持つきっかけとなった彼の“ジェンダー発言”に注目してみたいと思う.
マリウス的ジェンダー論
そもそも,マリウスの“ジェンダー発言”についてあまりピンとこない読者の方々もいるかと思うので,そこからおさらいしてみる.
Sexy Zoneがレギュラーで出演しているラジオ番組「Sexy ZoneのQrzone」のなかで,彼は2018年のある日にもらった女性リスナーの方に以下のような質問をもらい,自身の考えを述べた.その彼の考え方が広く共感され,SNS上で広く拡散され,ネット記事にも多くそれが掲載された.
女性リスナーからの質問
「好きな人のために女子力を上げようと思ったのですが、ふと、女子力とはなんなのか、女子である自分のことがわからなくなってしまいました。男性から見た女子力ってなんですか、教えてほしいです」
マリウスの回答
「僕、女子力っていうワード自体が(あまり好きじゃない)」
「男性がメイクとか化粧水とか美容を意識するようになったから。男性も『女子力高いね』っていうのではなく、男性もこれが普通になってきた」
「最近ってやっぱりジェンダーレスだったりそういうのがあるからこそ、男性がメイクとか化粧水とか美容を意識するようにもなっている」
風磨からの追加質問
「じゃぁアレは? ご飯作るとか、(料理が)上手とか。洗濯ができるとか、掃除ができるとかは女子力じゃない?」
マリウスの回答
「それは女子力だけど、でもそれは女性だけの役割でもない」
「最近ではそれは女性だけの役割でもなく、家にいる男性だったり、そういう人もするし。僕のお父さんとかもね、逆にお母さんが仕事をしているから、お父さんの方がご飯つくる数が多いから。(でも)だからって、『お父さん、女子力高いね』っていうのも違う気がするけどね。」
また,彼はラジオ番組だけでなく,ジャニーズ好きの若い女性たちに広く読まれるアイドル雑誌のなかでもジェンダーについて言及している.
女性読者からの質問
「友だちやクラスメイトから「女子力がない」と言われます」
マリウスの回答
「なんかさ、そもそも“女子力”っていう表現が、もう古くない? 今はそういう時代じゃないと思う。男子も女子も関係ないんだから、“女子だからこうしなきゃ”とか気にしなくていいよ! ありのままの自分でいることがいちばん。自信を持って堂々と生きればいいし、もし誰かに何か言われても、「自分のことは自分がよく理解してるから」ってキッパリ返せたらステキだよね。」
思えば,日本は2019年に実施されたジェンダーギャップ指数ランキングという国際調査で,対象国およそ150カ国あるなかで121位という不名誉な結果を獲得してしまった.様々な分野において男女間の格差というのは比較的まだまだ根強く存在しているということが客観的な数値のもとで詳らかになったのだ.
たしかに,未だに日本は性別役割分業の風潮が強い.さきほどのラジオ内でのリスナーからの質問では「ふと、女子力とはなんなのか、女子である自分のことがわからなくなってしまいました。男性から見た女子力ってなんですか、教えてほしいです」といった(多分)ティーンエイジャーの悩みがマリウスに届けられていたが,きっと彼女の周りの環境には,無意識的に性別役割分業を推している風潮が存在していると考えられる.もっと根深く考えれば,このような風潮というのは我々を取り巻くメディア環境がそうさせていることも強く影響しているという事実も無視することはできない.
そんな日本人的な考え方を,幼少期はドイツで過ごし,高校時代はインターナショナルスクールへ通い,今でも日本のみならず国際的な関係性を築き,そのコミュニティーに身を置いているマリウスは,それらからの視点で日本のそのようなジェンダー観を批判し,特に若い女性を中心に新しい視座を与えた.彼の功績は非常に大きい.
日本で暮らし,日本の大学で勉強をし,日本の芸能界で活躍する彼は,自身の学習を国内外問わず世界的視野のなかで,考え方や知識を手にしている.先述の通り,彼は今も昔も国際的な環境に身を置いて学術的な活動を行なっているのだが,実際,具体的にどのようなことを彼は日々考え,勉強しているのかについて以下で見てみようと思う.
上智大生マリウス葉はどんな環境のなかでどのような勉強をしているのか.
マリウスは現在,上智大学・国際教養学部へ通う2年生だ.Snow Manの阿部亮平やHey! Say! JUMPの岡本圭人も通っていたこの学校はご存知の通り,いわゆる難関大として有名であり,ちょっとやそっとの勉強では絶対に入ることのできない大学である.
そのなかでも国際教養学部というのは講義が全て英語で行われ,学生も日本人に留まらず世界から集まってくるために血筋や肌の色,バックグラウンドの全く違う人たちが1つのキャンパスに集まる,いわばエリートの学部である.厳しい話,生まれ育った様々な資本が高くないとまずここへ入るだけの力を養うことは難しいだろう.
国際教養学部ではいったいどのようなことを勉強しているのか.換言すると,マリウスは一体どのような環境に身を置き,どのような勉強をしているのかについてを見てみようと思う.
【グローバル社会を担う若者を育成するリベラル・アーツ教育】
日本の国際教育の先駆者として、半世紀以上にわたり幅広い教養と論理的思考力を育むリベラル・アーツ教育を英語で提供してきました。1年次は基礎教育、2年次後半からは3つ(比較文化・国際経営/経済学・社会科学)の専門分野から選択するプログラムで、専攻の科目に加え、英作文、批判的思考、パブリックスピーキングの科目があります。世界のトップレベルの大学で研鑽を積んださまざまなバックグラウンドの教授陣が指導にあたります。高い外国語能力、卓越した専門的知見、異文化への繊細な感受性を身につけ、国際機関や多国籍企業などで活躍できるグローバル社会の担い手の育成を行っています。
日本語による紹介が少ない(もっとちゃんと見ようとなると英語のページしか存在しない)ので,引用をこの程度にとどめるが,どうやらこの学部は他の文学部であったり経済学部であったり,具体的な冠のついている学部とは異なり,知識はもちろん,世界を渡り歩くための国際的な視野と学問分野に分け隔てなくアプローチしてく学際的視座を得られるのが大きな特徴として挙げられる.
2年次から分かれる主要コースの学問分野も広くその門戸を開けており,ボクが研究しようとしている「社会学」や「文化人類学」,もっと細かく言えば「ジェンダー(男性学)」「ファン文化」「メディア」「アイドル」についてもどうやら勉強できそうである.この学部に所属している教員の学問領域をざっとみても,文系学部の主要なところは概ね押さえられているので,自身が抱える問題意識や興味関心の思うままに学修できるのが大きな特徴だ.(いいなあマリウス!)
マリウスが現在どの専門科目を選んでいるかどうかがまだ分からないのだが,先日彼のインタビュー記事を読んで,たぶん国際関係論をはじめとした比較文化のコースに進んでるのかなと予測している.
「将来は、ボランティアでも、世界平和やマイノリティーの人権をサポートするプロジェクトを立ち上げたいですね」
MIT(マサチューセッツ工科大)でマリウスは一体何について考えてきたのか
以上のインタビュー記事に記載されている彼が高校生時代のときに赴いたハーバード大での青少年サミットは後日に記すとして,大学生である彼が参加したMIT(マサチューセッツ工科大学)で行われた「MIT Bootcamp」でマリウスが一体何をしてきたについても紹介しておこう.
彼が参加した「MIT Bootcamp」は一体何をするところなのか.このイベントを催している団体がアメリカのマサチューセッツ工科大であるため,公式言語が英語なのだが,英語にあまり触れることのない読者のほうが多いと思うので,Google翻訳をかけてざっくりとその内容を掴んでいただければなと思っている.ちなみに,ボクが簡単にまとめた内容も次に載せているので,読み飛ばしてもらっても構わない.
The internationally renowned MIT Innovation and Entrepreneurship Bootcamp at QUT has given more than 90 entrepreneurs from around the world the skills to take their innovative ideas to the next level.
The “bootcamp for brains” was held at Gardens Point campus in February in partnership with the Queensland’s Government Advance Queensland initiative.
The bootcamp saw the innovators from 30 different countries team up with each other to identify a problem and build a start-up business to solve it.
In the final phase, teams worked around the clock to ready their ideas for a tough group of judges including QUT Business School Executive Dean Professor Robina Xavier, One Ventures Innovation VC Fund general partner Anne-Marie Birkill, Startup Catalyst chief executive officer Aaron Birkby and MIT alumni and University of Technology Sydney Dr Roger Kermode.
どうやらこのイベントは日本でも開催されていたようだ.
日本で「MITブートキャンプ」を開催します! MITブートキャンプとは、2014年に始まった世界的なイノベーター、チェンジメーカーのための新しいプログラムです。MITで教えられているリーダーシップ論やイノベーションの原則を日本に居ながらにして学ぶことができます。さらに、参加者はMITの教授や科学者からロボット工学、AI、IoTなどに関する講義を受けることも可能です。
開催期間は1週間ですが、この1週間でイノベーターのグローバルなコミュニティに参加しつつ、見ず知らずの人たちと新しいベンチャーを開始するプロジェクトを立ち上げます。MITブートキャンプの公式サイトによれば、このプログラムには、企業家が立ち上げから1~2年の間に直面するだろう経験が凝縮されているそうです。参加者は起業家精神とイノベーションに関係する様々な新しいスキルを学ぶことができます。
日本語のこのサイトは,文体からしてGoogle翻訳にかけたものをちょちょっと手直ししてそれを掲載した臭いのだが,公式ページのほうを読んでみると,特定の国に留まらず,世界的に発生している問題をビジネスによってどのように問題解決を図るかについて,その場で出会った仲間とチームを組み,寝食を共にしながら構想を練り,プレゼンテーション大会でその成果を発表するというものらしい.
プレゼンテーション大会では優勝チームを決めるようなのだが,なんとその優勝にマリウスが所属しているチームが選ばれたのだ!その模様は以下の公式サイトの動画で映されている.
彼の所属していたチームのあるメンバーが,MITの公式ページに自分たちが考案した案が一体何なのか,どのようなプロセスを踏んで考えを深めていったのかについて詳しく言及されているので,そちらも読んでもらいたい.
個人的にボクがハッとさせられたのは,My key takeawaysのなかで言及されている“**You shouldn’t start with an idea. Instead, start with a problem. **Make sure it’s a validated problem rather than an assumption. You’d be surprised — each and every single team had to revisit their original problem statement hypothesis as it wasn’t validated by their primary market research.”である.
「アイデアから始めるのではなく,問題から始めよ」というこのメッセージは,問題の発生をなるべく避けようと無意識に行動していた自分にとって新しい視点となった.「市場調査によって認められなかったとき,私たちのチームはじめ,どのチームももう一度原点に帰らざるを得なかった」というこの文面には,予定調和的にはいかず,何度もトライ&エラーを繰り返しながら,自身らの構想を練り上げていった経緯が記述されている.
マリウスたちのチームが考案したビジネス・製品が「Travel Angel」というウェアラブル端末であり,途上国へ単独で赴く女性の緊急事態要請に応えるための製品である.
The winning idea for Bootcamp 2019 was a smart wearable device designed to keep travellers safe.
Margarita Camus, from Chile, was the leader of the winning team made up of Bootcamp participants from South Korea, America, Romania and Japan.
“Our project was called Travel Angel and we created a smart safety device bracelet for women traveling to developing countries who are volunteering,” Ms Camus said.
My team’s idea and our idea was a discrete bracelet device for women solo-travelling to developing countries. If they had any issues during their travel, they could tap a hidden button and connect into a network of ‘Travel Angels’ that are trained in emergency management and could help across a range of issues — medical emergencies, post-assault or theft help, transportation, recovery support, etc.
<太字訳>
「私たちのチームが考案した製品が,途上国へ単独で赴く女性のためのブレスレット式のデバイスです。もし彼女らがその旅の最中に何らかの問題が発生してしまった際,隠しボタンを押すことで“Travel Angel”という緊急要請を請け負い,それに対処する機関(医療的問題,暴行,窃盗,移動,現状復帰)へと繋がることができます.」
サイトを見る限り,どうやら製品化に向けて着々と準備を進めているようだ.マリウスをはじめ,大規模なブートキャンプで数ある精鋭なるグループたちのなかで首位をとったチームのアイデア...ぜひとも実装させて,世界中の単独女性トラベラーのマスト品として普及してもらいたいものだ.
今後のマリウスに期待したいこと
ドイツに生まれた彼は,お城のような家で育ち,元宝塚の母に憧れて日本の男性アイドル組織「ジャニーズ事務所」へと入所し,世界中の人たちを笑顔にさせ,今では多方面で国際的に活躍する彼は,絵に描いた...いや,絵にも描かれないようなアイドルである.華々しく見えるこの人生の裏には,冒頭あたりに掲載したインタビュー記事にもあるように,親をも心配させるほどの裏打ちされた努力によって築き上げられたもので,実現された今が存在する.
かつてはSexy Zone内における格差問題で,一時は本当に心配された彼だが,アイドルの世界でも努力を積み重ね,今では自身よりも歴の長い中島健人や菊池風磨とも引けをとらないパフォーマンスで人々を魅了し,そして,カメラのまわっていないプライベートの時間では勉強や課外活動に精力を費やす.
その努力や苦労,疲れなどはファンの前で見せることを決してせず,アイドルとしての仕事をきちんと全うする彼のことを,4歳年上であるボクは本気で尊敬する.今回の記事を書く際に,マリウスのことについてめちゃくちゃ調べまくったのだが,その尊敬の念はさらに深まった.
今後,マリウスが大学を無事卒業し,その熱がまだ冷めていなければ,彼にはジャニーズ初の論客になってニュースのコメンテーターとして活動したり,ウーマンラッシュアワーの村本さんのように社会問題を絡めたスタンドアップコメディーを各所でしてもらいたいなとボクは個人的に思っている.
「ジャニーズアイドルは夢を売る仕事だから」という理由のためかニュースキャスターを務める櫻井くんやかつての小山くんは除いて,誰も社会問題について口出しをしない.正直,夢を見させるだけでは脳内お花畑のファンを作ってしまい兼ねない上に,現実があってこその夢なのだから,日本や世界の現実をも提示してくれるアイドルが潜在的に今,希求されているとボクは感じている.
きっとこのボクの希望は,マリウス自身の描く将来のキャリア形成の一部として重なる部分も大きいことだろう.彼にはそれを全うできるほどのキャリアと知識,知名度もあるため,彼にはより一層期待したい.
<僕のように考えている人がいないわけじゃなくて、こういう話をできる場がないんじゃないかと思います>
<僕は影響力の強い大きなプラットフォームを持っていて、他の人とは状況がまた違いますよね。だからこそ、発言していかなくてはならない。自分が学んだことを、同世代や周囲の人に伝える責任がある。発言する機会を与えられないコミュニティもある。そういう人たちを代弁するのではなく、彼らが声を上げられるような場所をつくっていきたいんです>
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