ミニマリストは必聴 Steve Reich "Music for 18 Musicians"
"限られた世界の中でも人間の手にかかれば無限の可能性を見出すことができるということを事細かに証明してくれる。"
弦楽器、管楽器、打楽器、そして人の声と、楽曲に使用されている楽器・音の種類が豊富なのが大きな特徴。連続的で固いものから、自由に広がる柔軟なものまで色んな音があって楽しい。広い雑貨屋さんで物選びをしているような感覚。ただ、いくらそこが広い雑貨屋であったとしてもそこもある種のまた限られた世界。だけど無限の可能性と世界を感じるよねなんだか。IKEAの音楽や。一度気になったものをスルーして、一周回った後にまたチェックしちゃう。同じものであるのは確かだが、なんだか表情が違う気がする…そんな音楽だ。ずっとテンションは沸点ギリギリのラインを目指している。給食に出てくる牛乳パックをできるわけでもないのにずっと角でバランスを取ろうとしている感覚。あるいはデコボコフレンズの総集編でも見ているかのような。こんなに気持ちのいい歯痒さはない。ずっと同じなのだが展開はあるという不思議さ。展開の話でいうと、「あ、爆発しそう」っていう時と「あ、終わりそう」っていう時がこの曲の中で何回かある。でも結局爆発もせず終わりもせずでまた次に進む。これ、本来なら爆発したり終わったりした方が綺麗で気持ちいいのかもしれないが、何故だかそうならずに済んだことに安心感を感じる。これは前回ザ・ゲロゲリゲゲゲの">(decrescendo) Final Chapter"を紹介した時にも使った表現なのだが、もしかしたらそれはそこに"居場所"を見つけたという事なのかもしれない。ただ、この曲と"Music for 18 Musicians"の違うところは表情の違いが結構明確にあるところだ。えっと唐突にごめんなさい、変わり眩く(かわりめく)って日本語ありますか?ないならこの場借りて変わり眩く宣言。その変わり眩く表情は一定の規則を保ちながらシームレスに、ただ大胆に変化していく。怒りなのか悲しみなのか、もしくは喜びなのか。全く違う表情であることは明確に指摘できるのだが、シームレスすぎて具体的に指摘するのが難しい。まさに音楽というのは"リアルな時間の流れ"であることを改めて証明し、また感じさせてくれるミニマリズムの傑作。最近ミニマリストとか流行ってるから、ミニマリズムってなんだか冷たいものなんかなぁとか思っていたけど、表現の仕様によっては案外温かみもあるもんなんですね。
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