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熊本の黄昏時

 近所のイオンの帰り道、チャリンコを漕ぐ。凸凹道を過ぎれば平たい道が続いていて、小川の流れる音が心地よい。ふと止まって、奥の苔むした岩を眺めていると、全てを忘れてしまいそうで、半袖の素肌が少し鳥肌立つ。そっから冷蔵品をカゴに入れっぱなしにしていたことをふと思い出して、また平たい道を最初は強く、それからはゆっくりと漕いでいく。途中で牛舎の臭いに顔を顰め、越えて田畑の辺りまで来れば涼しい風の匂いがする。信号待ちで忘れたように夕焼けを見ると、遠くの民家が影になって少しロマンチック。振り返ると黄金色の田んぼがそよいでいる。その下に自分の影を見て、待つ必要のないような信号の押しボタンを押していないことに気づく。ビニール袋がパサパサ音を出して揺れている。だから、信号を無視して思いっきり漕ぎ出した。道中、大量の羽虫にぶつかったけれどお構いなしである。
 自転車を駐輪場につけて玄関を開けても、まだ夕日は燃え続けていた。今日がずっと続けばいいのに、なんて思ってみたりして、薄暗い玄関の電気を灯した。

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