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冷たい頬

さようなら僕のかわいいシロツメクサと
手帖の隅で眠り続けるストーリー
風に吹かれた君の 冷たい頬に
ふれてみた 小さな午後

冷たい頬-スピッツ


遠い国に住んでいるニコルさんに恋をして、これが自分の好きな曲ですって伝えたくてカセットテープに入れて、何かの抽選で当たったウォークマンを一緒に入れて送った。辞書を引きながら歌詞を英語に訳して、それを書いた手帖を角だけ薄く糊付けして、開いてみたらこれが歌詞ですよ。そんな工夫をして。喜んでくれるだろうか。
なかなか返事が来ないので、国際電話をかけて‘’Did you return to me ?‘’と訊ねたら、'Ah… yes.'と言うのでワクワクしながら待つ。
一か月経っても返事が来ないので、もう一度国際電話をかけると、もう電話はかけてこないでほしい。と。高価なもの送ってきやがって。あなたの国の情緒は一体どうなっているの。なニュアンスで叱られ雑じりに諭された。

return toとは~を返す。返却する。
返事をする。はanswer , reply to を使うそうだ。

ややこしいのだが、
・ニコルさんへカセットテープ一式を送る。
→高価なものなのでニコルさんの両親が送り返すよう命じる。
→カセットテープ一式が返送手続きに入る。
(Did you return to me ? はここ。)
→返送されたカセットテープ一式はどこかで迷子になる。
→うちには何も届かないまま一か月が過ぎる。


ジュブナイルな思い出である。つまり
・ねえ、なかなか手紙が送られてこないけれど、送ったカセットテープはそのまま送り返したんだよね?
yes…
・よかった!楽しみに待ってるよ!
…excuse me.
・???どうしたの?待ってるね。

という会話が繰り広げられていたわけで、そりゃあニコルさんのお母さんに我が国の情緒を疑われるわけだなあ。ヒッチコックのような怖さがあったことでしょう。


そんな思い出の冷たい頬である。
一生のうちで一番英語を勉強した時期だった。それからはもう二度とこんな滑稽なすれ違いを生まないように、いつニコルさんに出会ってもあの時はごめんなさいと言えるように英語を話せるようになろう。とはならずあの頃と変わらない程度の英語力しかないのだがニコルさんこれ見てたら連絡ください待ってます。



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