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恋をしようよ

マディウォーターズでも青い星でもルースターズでもいいのだけれど、恋をしようよ。語感が素敵。

恋してますかー!ではなく
恋、しよう。でもなく
恋をしようよ。
猫のスタイルですがりつけ。が一番好きだ。


恋について書くことはしたくないと思っている。目の前にあるものが恋そのものであるなら、そこに在る二人以外はすべてその他大勢の観客ということになってしまうはずで、二人と観客の間には通じる言葉がない。二人から観客に向けた言葉は二人が見ている景色そのものとして伝わることがないし、観客から二人に向けた言葉が恋そのものである二人に届くこともない。

それでも書かないとどうしようもない。という時があることは解っている。たぶんその時には恋そのものは恋であったものに変化していて、その変化は嬉しさであったり悲しさであったりするんだろうけれど、ともかく受けるにしても投げるにしても何とかする必要がある。何かをしなければいられない。で、書くんだろう。
ね。そうでしょう?

二人とその他大勢の観客であった。観客席はガラガラでも満席でもどちらでも構わなかった。恋そのものが恋であったものに変化する時に、二人は観客席の方を初めて見るのである。


という借りてきたような言葉で作られた話になってしまうので、恋について書くことはしたくない。ちょっと書き始めちゃったから恥ずかしそうにしている。そんな風に見えますか。その通りだよクソだらぁ!

恋をしようよ。
私とあなたで。という文脈で使われることはあまりないだろう。思うことはあるかもしれないけれども、科白として声に出せる人はとても少ないはずだ。だからそれを言える人はとても恰好善い。
あなたたちも。の文脈が一般的だろうか。さぁみなさんご一緒に。と、こちらへいらっしゃいのニュアンスで外部から誘うスタンス。


恋を調べてみる。
広辞苑によると
一緒に生活できない人や亡くなった人に強くひかれて、切なく思うこと。また、そのこころ。特に、男女間の思慕の情。恋慕。恋愛。
明鏡国語辞典によると
特定の異性を強く慕うこと。切なくなるほど好きになること。また、その気持ち。
新漢語林によると
戀。もと、心+攣。攣は、ひくの意味。心がひかれる、こいするの意味を表す。
精選版日本語大辞典によると
異性(時には同性)に特別の愛情を感じて思い慕うこと。恋すること。恋愛。恋慕。
上代では人、土地、植物、季節などを思い慕う。と対象に幅があったが、中古以降はもっぱら恋愛の感情を表すようになった。
恋(くふし):こほし(恋)の上代東国方言。恋しい。慕わしい。;万葉『吾妹子と二人わが見しうち寄する駿河の嶺らは苦不志久(くふしく)めあるか』
恋(こいしい):直接には見えない、離れたところにある事物や人が慕わしくて、じっとしていられない気持である。;万葉『古悲思家(こひしけ)ば来ませわが背子垣つ柳末摘みからしわれ立ち待たむ』

精選版日本語大辞典が優勝。
1300年も前から、恋には離れた相手を想う意味があったんですね。それに苦しいとか悲しいの文字も入っている。漢字の当て方に意味が込められているのかどうかは知らないけれども。
それ以外の辞書にも、切なくなるほど。という意味が付されている。何て言うんだろう。どうしようもなくこの人達の子孫なんだなと感じる。


こうなってくると恋をしようよ。が苦しく悲しい切なさへの誘いに見えてくるけれども。マイナスを一瞬で跳び越えるキラキラしたものがあると知っている。
だからテレビのアンテナを引きちぎったり緑色の冷蔵庫を引き倒したりフルカラーのレコードをたたき割ったりして、
恋をしようよ。


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