新宿ジャックドウ
歌舞伎町の裏路地で新宿ジャックドウとふちに書かれた茶封筒を拾った。
中に入っていたA4の黒ずんだ紙切れ。
そこにこんなことが書かれていた。
*
喜怒楽は風
哀だけは澱
「錆」
綿あめをちぎっては食べちぎっては食べ
カップ麺のフチ割り箸虚ろに残る己みたいだ
早寝して早起きできず頭痛てぇ
冬の露窓に横線ひくもなんもならない
ボッコリとあいた穴だけただある日
千切れたしおりだけが残されている本はない
虫の音より遠く大きい工事音
蛍光灯が高速で過ぎていくワープできねぇかなあの夜に
大股広げ異国の地下鉄縮こまっちゃったじゃねえかよ
んだよさっきから否定ばっか
10年前のゲロを思い出す靖国通り
レッドブル立て直せない飲み過ぎ
ととのうってなんだ深夜のサウナ大雨涙
卓球のラケットさえも握れないかろうじて球
スマホのライトだけの部屋夜中音無し
天井がまるで天井ではなくなる夜
はああ?って3度圧かけられた
いっそのこといっそのことやっぱやめて
いつの時代の紙幣だよ自販機の紙屑
やるせなさだけで千鳥足になる夜もあるなんてシラフだぜ
ぎいこぎいこのこぎりがかゆい
目が逝ってる財布落とすし免許証入ってるよ
別にいいならいいけど追いかけねぇから
いいかたという突っ込みにイラつく言い方じゃねえよ
ポケットティッシュのがわだけ残る広告の紙とともになんて儚い中折れのコンドームとどっちが重いだろうなんて
4人組の20代男子と飲み屋で隣合わせはしご酒につき合う道すがらこれは三角関係どころの騒ぎではない
正座の後の足より痺れて前に進まない人生
見てしまった掌の血爪が食い込んで
死んだように眠る死んだようにバス停のベンチ
グッシャリとしたウコンの空き缶カラス
ねじ曲がるゆがむドス黒い路地裏沈んでいく
掴もうとした空間がスカッと無になるなんだこの闇は
うっすらと影が残る踊り場死臭がする
何を人の話で盛り上がってんだよその銃はすぐにてめえの喉元にやってくんぞ
ボッコとした孤独の穴穴
夕方まで寝てしまった怠い体を起こす力は足にはなく手で起き上がる窓を少し開け風にあたる生あたたけぇ
どこにもはまらないジグソーパズルのピースつうか欠片これどこだ
壊れちゃないのに止まった目覚まし
地面に叩きつけられた誕生日プレゼント
あぁ3時間後は銀蔵
摩擦が痛い消しゴムと古びたノート
掠れがすれの声煙草吸いすぎ大音量ソウル
フリック入力も滑るうまくいかない通じない朝焼け
食えないのにとんかつ屋ご飯大盛りとりあえず味噌汁すする
ああキャベツまじい
いったい何本あるんだ折れたビニ傘小雨アスファルト
やっべ右目見えねえ地面二段構え
聴く気がねえのに話しかけんじゃねえってどやされてる隣のやつそういや俺も聴く気はねえ
あれ空ってこんな暗かったっけ
角度で虹みてえにフレアするこの光だけが楽しみだ夜の
雨で膨らみすぎたジャンプがある花壇先週もあったな
新宿の朝通勤階段こぎみいいリズムリズムリズム俺だけ違う
電車連結のドアぐれえには重いぞ俺の命たぶん
わりいどく力もねぇんだわ
子守唄がリフレインする重症だなこりゃ
揺れる揺れる電車で身体持っていかれる自分に心底ムカつくああっ
ブチブチブチと引きちぎられた何か
どんぐりのじゃねえどんぐりと背比べ
目深にキャップマスク目閉じる
このボタン押したら人生終わるやつ
窓あけてくれたのむたのむたのむ
大きな犬と海岸を散歩そんな現実と向き合えない自分はただただわちゃわちゃ海岸に寄生する
ピッカピッカピッカ明るいのは信号機だけ他は誰一人として
ゲロの海に寝る男まるでバリアかのように人が避ける
アイスピックで刺してくれこの腕を
ころがるエアポッズ片方だけぐしゃり
100人中99人がスマホの画面に目線を落とす夜俺だけその風景を見てる
沈黙が美しいのは美しい環境にあるときだけだここの沈黙はただの地獄
職人は魚によって包丁を変えるらしいほうそうか人によっても包丁変えてもいいかも
ああこの人は脳のどこかが壊れちゃったんだただそれだけ哀れとかはねぇよ良くもねえけど
繊細なさぁテリトリーってのがあんのよこの街にも気がつかなかった?
ステンレスの引っ掻き傷ふた筋
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?