佐藤先生に教わったこと-#12
このnoteは、星功基が2003年〜2007年に慶應義塾大学佐藤雅彦研究室に在籍していたころに佐藤先生に教わったことを思い出しながら書いているものです。
昨夜湘南台のコワーキングスペースにて、「プレゼン図書」と題し、『広告批評-佐藤雅彦研究室特集-』などを通して、佐藤研とはなんだったかをお話しする会をしました。
そこで高橋さんとお話ししたキーワードの1つが【生まれた瞬間】。
佐藤研では、というか佐藤先生は「生まれた瞬間」という言葉をつかうときがあります。
今では、ユーフラテスで活躍中の、映像の佐藤匡さんと、アニメの植田美緒さんが、生まれた瞬間のこと。『広告批評』のインタビューと照らし合わせながら。
「コマ撮りアニメの演習をやらせているとき、佐藤匡が”生まれた”ということがわかるんです。授業が終わっても楽しくてずっとやってるんです。「先生、このカメラもうちょっと借りてていいですか?」「何するの?」「もうちょっとやりたいんです」って。自分がこうやってこうやると、こういう流れになるとか、全部バリエーションつくって楽しんでいるんです。植田美緒が生まれた瞬間は、リジッドフィルムという講義で、「正三角形をキチっと描くコンパス」という不思議な映像を作ったんです。僕はすごく評価したんですけど、そのときに全部わかったという感じを持ったんでしょうね。「10本アニメ」のもとになっている「直線だけので作るアニメーションのとき、植田がいろいろ作ってきた中で、これだけが面白いって、そのわけを説明したんです。これがこう動いてこう動いて、という僕の手の動きをじっと見てて、で、わかったんですね。この動きだって。次にアニメーションをやったときに、植田美緒がもうできていたんです。ガラっと変貌していました。」
一方、植田さんから聞いた話。
「直線だけのアニメーションのとき、”∧”の形の線が歩いていくのをストーリー仕立てにして、途中”∧”がいろんな形に変形するという作品を作ったんだけど、そしたら先生に「”∧”が歩いただけでいい」ってアドバイスされて。少し困ったんだけど、実際それから歩くだけの映像にして、それに、2、3個、自分がこれだなって要素を入れて新しく作った。大きなルールをひとつ作って、周りに小さなルールを置く方法を学んだのはそのとき。それまでは、大きなルールが何個もあってガチャガチャしてた。あと、一番重視しているのは「気持ちいい」ということ。これも「生理的快感を生む表現」という課題がきっかけ。これは自分の得意なことが活かせるとおもった。それからは気持ちいいアニメーションを意識して作ってるかな。」
*
星は広く捉えると教育業界におりますが、この「生まれた瞬間」にどう立ち会うか。それをずっと考えていると言っても過言ではありません。通信教育から離れ、今、比較的子どもたちの顔を直で見られる活動をしているのもこの先生の教えが背景にあります。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?