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佐藤先生に教わったこと-#09

このnoteは、星功基が2003年〜2007年に慶應義塾大学佐藤雅彦研究室に在籍していたころに佐藤先生に教わったことを思い出しながら書いているものです。

3年の春学期。
夏に控えているgggでの佐藤雅彦研究室展に向けて、準備をするある夜のこと。
当時、もう1つ所属していた建築の坂研での部材製作が終わったその足で、少し離れた佐藤研の研究室に戻った。
gggの1/20模型の製作が残っていた。明日の朝までに完成させなくてはならない。深夜2時。スリーエフで買ったカップ麺でお腹を満たすものの、スチレンボードをカッターで切るその腕もなかなか勢いづかない。慢性的な寝不足でボロっていた。
(まぁ、とりいそぎ、なんとか完成させて。。)
と、5時には切り上げ、そのまま研究室のソファで寝た。
朝、先生が授業前の準備で研究室に入ってくる。
「星さん、おはようございます。全体会議前に、少し話があります。」
全体会議は13時から。
なんだろうと緊張しながら、研究室のとなりの教官室の扉をノックし入室する。
そして、話が始まった。
「星さん、模型製作おつかれさまです。」
「この模型製作は、どんな目的でつくりましたか?」
え、はい、えっと、gggでの展示をスタディするために。。
「そうです。ですが、現状は模型製作のための模型製作になってしまっています。」
「この模型製作は、展示の準備という長く複雑な工程において、とても重要な作業なんです。そのことをお伝えしたいと思います。」
「電通時代、僕は、CMのプランを練る会議のとき、会議室にあるものを貼っていました。」
「テレビの枠を描いた紙です。」
「なぜそんなものを貼っていたか。それは、人間はアイディアを考えていると、ついそのアイディアの良さにひっぱられて、それがテレビに映ったときどう見えるかの想像力を一時的に失ってしまうことがあります。それを防いだり、もしくはアイディアが浮かばないとき、いったいこの画面に、今この時代に何が映ったらみんなが驚くのかとじっとひらめきを待つために貼っていたのです。」
「今回の展示において、模型は似た効力を発揮します。いえ、会議室のテレビの枠よりもしかするともっと重要な。」
「僕らは、gggの現場にずっといられるわけではありません。でも、準備はしていかなければいけない。展示プラン、導線計画、個々の展示物のデザイン、それに伴う什器のデザイン、発注、展示物の管理、製作、まとめ直し、映像素材の編集のし直し。まだまだたくさんあります。これらを研究室を拠点に済ませて、現場に乗り込まなければいけないのです。」
「これらが何から始まるかといえば、展示プランからですね。」
「この展示プランは、机上の空論ではなく、自分たちの身体を投影して、もっというと来場者、一観覧者の身体をしっかりと空間に投影して、検討しなければいけないんです。現場に張り付けないからこそ。」
「模型は重要です。今、空間としては最低限立ち上がりましたが、もう一歩、身体の投影という観点で配慮が足りない箇所はないでしょうか。たかが模型ではなく、僕らの展示をつくる模型です。」

今でも恥ずかしさがこみ上げます。

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