佐藤先生に教わったこと-#08
このnoteは、星功基が2003年〜2007年に慶應義塾大学佐藤雅彦研究室に在籍していたころに佐藤先生に教わったことを思い出しながら書いているものです。
【市井の言葉。道端の声。】
湖池屋ドンタコスのCMプランを練っていた年末の夜。
先生は同僚と、当時の電通オフィスの近くにあったイタリアン「シシリア」に少し遅めの晩御飯を食べに行った。シシリアは地下にある。食べ終わり地上にあがると、ちょうどそのビルの上階にあるクラブのママと常連のお客さんたちが下りてきた。
ママとお店の子が常連のお客さんをお見送りする。
お店の子が
「次は、○○さん、年明け、出張から帰ってきてからですよね? じゃあ、よいお年を、だ。」
「あれ、出張先、何スタンでしたっけ?」
と言うと、
ママが
「もう~、○○ちゃん、パキスタンったらパキスタンよ!」
その言葉を聞いたとき、先生はこれだ!っと思った。
そうして生まれたのが、「ドンタコスったらドンタコス」
○○ったら○○は、とても自然に商品名を連呼できる構造を持っている。問答無用に念押しする強さがある。
*
メキシコロケから戻り、これから編集をしようとしていたとき。
どうしても「うれしい!もうすぐ!ドンタコスが食べれる~~~!」の声がはまらない。
声の主が決まらない。せまる期日。頭を抱える先生。
そんなとき、道端で佐藤卓さんとすれ違った。
佐藤卓さんとは電通で入りたての若手のころ一緒で、同じ佐藤姓ということもあり仲良しだった。
先生、卓さんとすれ違ったとき、ピン!ときた。この声だ!
挨拶もそこそこに、
「CMの声、やってくれませんか?」
「はあ!?」と卓さん。
もうすれ違った瞬間、あの独特のハイトーンでひょうきんな感じのする声が完全にはまったのだ。
というより、もしかしたら、頭の中に最初に映像が流れたとき、もはやそれは卓さんの声で流れていたのではないかと思うほどだった。
こうして、
「ドンタコスったらドンタコス、ドンタコスったらドンタコス。うれしい!もうすぐ!ドンタコスが食べれる~~~!」
が生まれた。
*
「企画をして耳を澄ますと、市井の言葉や道端の声にピンとくることがあります。これだ!と。」
「でも、それは企画をしていないと、向こうからやってきてはくれません。」
「星さん、企画をしてください。そうすると、街が面白くなりますよ。」
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