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佐藤先生に教わったこと-#06

このnoteは、星功基が2003年〜2007年に慶應義塾大学佐藤雅彦研究室に在籍していたころに佐藤先生に教わったことを思い出しながら書いているものです。

佐藤研の「入研試験」を経て、12名の同期がSFCのε11教室に集まります。みな緊張した面持ち。今でもあのときの空気をありありと思い出します。
先生が入ってきて、話し始めます。
「佐藤雅彦です。」
佐藤研とはなにか、何を目指すのかの簡潔で完結した言葉で導入したあと、こんなことを言われました。
「今年の入研試験はおよそ360名が受けました。ここにいるみなさんは12名。」
「もしかしたら、自分は優秀なんじゃないかと思っている人や、気持ちが盛り上がっている人がいるかもしれません。」
「とんでもないですよ。」
「みなさんの解答は、正直、そんなにいいものではありませんでした。みなさんの解答よりも素晴らしい解答をした人はたくさんいました。」
「では、なぜその人たちではないのか。」
「優秀な解答をしてきた人たちは、とても広告やデザインのことを勉強してきていることがよくわかり、ある意味完成されていて、僕が介在する価値がないように感じたんですね。別の言い方をすると、この問題にはこう解答することが広告では正解なんでしょ、デザイン的にはこうですよね、ということが伝わってきて、この佐藤研に入って学ぶことはないのではないか、佐藤研での伸び代がないのではないかと思いました。」
「この研究会は、そんな表面的で、世の中ですでに価値が認められている正解を書く研究会ではありません。上っ面で、どこかで見たことのある表現を真似する研究会ではありません。」
「みなさんの解答はつたないものばかりでしたが、なかに、きらりと光る解答があり、その奥に、ああこれは誰のものでもない本当のことが書いてあるな、嘘ではないなという解答が含まれていました。」
「優秀なのではなく、本当なのです。」
「この年齢でわかってしまっている人とよりも、僕は、わかっていない人と、まだ誰もわからないものについて研究がしたいと思っています。」
「さあ、では、一人ひとりの解答についてコメントしていきます。」

こう言って、一人ひとり名前が呼ばれ、その人にしかダイレクトにはわからない言い方で解答についてインタラクションしていったのでした。

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