【プロスペクト理論】手に入れた100万円より失くした100万円のほうが価値が高い?
人間はある状況になると無意識のうちに非合理的な判断をしてしまうもので、どんな判断ミスをしやすいか知っておくことは良質な意思決定をする上で非常に重要なことです。
根拠のない勝手な思い込みのことをバイアスと呼んだりしまして、このバイアスを理解しておくことが大事というわけです。
そこで今回は、バイアス(思考のクセ)について説明する「プロスペクト理論」というものを紹介したいと思います。
プロスペクト理論とは
プロスペクト理論とは、簡単に言うと「勝つことを好む以上に負けることを嫌う」ということです。もう少し具体的にしてみます。例えば100万円をもらう嬉しさを「100嬉しい」とすれば100万円失うことは「−200嬉しい」になるような感じです。同じ100万円でも、手に入れるときと失うときとでは主観的な価値が変わってしまい、失うことを避けたがるということです。
もう少し詳しく
心理的な効果を浮き彫りにするために、いくつかの例題を基に説明していきます。
全部で4つ例題を出すのでどちらを選ぶか考えてみてください。
2問ずつ解説してみます。
例題1
A 確実に9万円もらえる
B 90%の確率で10万円もらえる
例題2
A 確実に9万円失う
B 90%の確率で10万円失う
例題1ではAを、例題2ではBを選びたくなりませんでしたか?
AもBも期待値は同じですが、得る方は確実な道(堅実)を、失う方はわずかでも失わない道(ギャンブル)を選びたくなります。お金が無くなるとして9万円も10万円もそんな違いはないのだから、お金がなくならない可能性に賭けてみようという心理みたいに思えます。
ちなみに例題1では①1円も得しない、②9万円得する、③10万円得するのどれかになり、例題2では①1円も損しない、②9万円損する、③10万円損するのどれかになるという構造を覚えておいてください。
では次の2問はどうでしょう。
例第3
今10万円もらった上でAかBどちらか選ぶとする
A 50%の確率で10万円もらう
B 確実に5万円もらう
例第4
今10万円もらった上でAかBどちらか選ぶとする
A 50%の確率で10万円失う
B 確実に5万円失う
例題3ではBを、例題4ではAを選びたくなったと思います。
例題3も4も、確実な道を選べば15万円手に入り、ギャンブルを選べば10万円か20万円手にすることになります。例題3も4も①10万円得する、②15万円得する、③20万円得するになり、しかも最終的な結果の確率は例題3も4も同じになります。同じ結果を予想してAかBか選ぶはずなのになぜ違う選択をしてしまうのでしょう?
違いは出発点です。例題3では10万円、例題4では20万円からスタートしています。
5万円と10万円ではけっこうな違いですが、もらうなら確実な道、失うならギャンブルの道を選びがちというわけです。最終的な結果がどうなるかではなく、出発点から増えるか減るかで意思決定していることがわかるかと思います。
詳しい本質
以上をまとめるとプロスペクト理論とは、少し詳しく書くと次のようにまとめられます。
1.出発点
スタートの状態からどうなるかを予想して意思決定される
2.感度低下
増加率(減少率)で嬉しさ(悲しさ)が変わる
1万円が2万円に増えるほうが、9万円が10万円に増えるよりも嬉しい
3.損失回避
損失は利得よりも強く感じられる
日常生活でどう使える?
当然ですが、世の中のいろんなサービスはこういう心理をうまく利用しています。割引チケットなんかはいい例です。自分が持っている1000円割引を使わずに有効期限が切れるのは、非常にもったいなく感じられるのではないでしょうか?
自分が欲しい商品のために割引券を使うのは合理的な選択と呼べるでしょう。しかし、1000円割引をしてもらうために、そこまで欲しくない商品に5000円出したとしたらどうでしょうか。1000円割引を使う(1000円得する)ために5000円損しているとしたら合理的な選択とは言えませんよね。
このように日常生活で非合理的な判断をしている場面というのは多々あるかと思います。プロスペクト理論のような脳のクセを知っておくことで、少しでも賢い選択ができるようになるはずです。
参考文献
今回紹介した内容はファスト&スローという本から一部引用させてもらいました。著者のダニエル・カーネマンは心理学者でありながらノーベル経済学賞を受賞しており、行動経済学という分野で活躍されています。
この本では、人間の思考にはシステム1とシステム2という2つのモデルがあるということを、いろんな角度から説明しています。それぞれ速い思考と遅い思考なのでファスト&スローというタイトルというわけです。
リンクを貼っておくので気になる方は読んでみてください。プロスペクト理論だけではなく、さまざまな思考のクセを知れるのでかなり面白いです。
最後に
最後までご覧いただきありがとうございました。少しでも心理学に興味を持って普段の生活の役に立ててもらえると嬉しいです。イイねもよろしくお願いします。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?