見出し画像

お金はモチベーションを上げるのか

何のために働いているのか

そう訊かれて「生活するため」「お金のため」と答える人は多いと思います。特に仕事満足度が低い日本では、お金くらいにしか仕事の意義を見出せないというのはいかにもありそうなことです。

しかし、お金のためだけに働くというのは案外しんどいものです。大企業でお金をたくさんもらってても、高いモチベーションの人は意外と少ないのではないでしょうか?

ということでお金に関する間違った思い込みを個人的な見解も交えて紹介していこうと思います。

はじめに

お金でモチベーションが下がる?

アメとムチでのマインドコントロールは誰しも聞いたことがあるかと思います。成功したら報酬を与え、失敗したら罰を与えることで成功するように頑張らせるみたいな話です。

アメとムチが良い戦略かということは置いといて、ご褒美としてお金を与えればやる気を引き出せると思いますよね。しかし、お金のせいでやる気がなくなる可能性もあるという事実をお伝えしておきます。

デシというアメリカの心理学者が行なった実験です。

■ 実験方法
 ・2つのグループに「ソマ」という立体パズルをやってもらう
 ・片方のグループはパズルが解けたら1ドルの報酬、
  もう片方のグループには報酬はなし
■ 実験結果
 ・報酬ありのグループは休憩時間にパズルをやめて自由に過ごした
 ・報酬なしのグループは休憩時間も熱心にパズルを解き続けた

お金をもらったグループはお金によってかえってパズルへの関心が減ってしまったということです。これを見ると、お金でやる気が下がることにも納得できますね。例えばスーパーマリオブラザーズをやってるときに、ステージをクリアするたびに100円を報酬として渡されたら、だんだんやる気がなくなっていく気がします。

ちなみに報酬(外発的動機)によって自分の意思によるやる気(内発的動機)が低下してしまうことを「アンダーマイニング効果」と言います。

ついでですが、やる気が外発的か内発的ということは非常に重要で、外発的動機が上がるか内発的動機が下がるかすると、創造性が低下します。これも実験を例に説明します。

■ 実験方法
 ・作家を集め「雪」をテーマに詩を書いてもらう
 ・3グループに分けて「自分が詩を書く理由」というアンケートを行ない、動機について誘導する
 ・1つは「ベストセラーを出せば経済的に安定できる」といったような外発的動機ばかりが選択肢に書かれているもの、1つは「自己表現の機会を享受できるから」といったような内発的動機ばかりが選択肢に書かれているもの、残りは全く関係のない物語を読むというもの
 ・その後「笑い」をテーマに詩を書いてもらう
 ・集めた作家とは別の作家に創造性レベルをジャッジしてもらう
■ 実験結果
 ・アンケート前の「雪」がテーマの詩は創造性の違いは見られなかった
 ・アンケート後の「笑い」がテーマの詩は外発的動機に誘導されたグループの創造性が明らかに低下していた

たった5分の介入ではっきり違いが現れたらしいです。報酬によってモチベーションが下がるだけではなく、成果も下げてしまうというのは非常に怖いですね。

お金をもらってがっかりする?

お金をもらって嬉しくない、むしろがっかりするなんてことが起こるのでしょうか?実験の例ではないですが、こんな状況を想像してみてください。

あなたは仲の良い友人(あるいは家族)の誕生日をお祝いしてあげようと一生懸命準備をしてるとします。一番喜びそうな料理は何か、もらって嬉しいプレゼントは何かなどあれこれ考えて用意することでしょう。そして誕生日当日、料理もプレゼントも気に入ってもらえてお互い楽しい時間を過ごしたあとで、最後になって友人に「自分のために素敵なお祝いをしてくれてありがとう。こんなに立派な振舞いをしてもらったのだから3万円支払うよ」なんて言われたらどうでしょうか?ほとんどの人ががっかりすることでしょう。誕生日にかかった費用が5000円だったとしても嬉しいとは思えないはずです。

なぜこんなことが起こるのでしょう? ポイントは、誕生日のお祝いは友人のためを思った社会的行動であり、利益のための経済的行動ではないということです。少し噛み砕くと、思いやりの行為に対して仕事のように対処されたということです。同様に、雨の日に親切心で傘に入れてもらえたことに対してお金を払うべきではありません。どうしてもお返しがしたければ、値段がわからないようにプレゼントを渡してあげると良いです。

逆に経済的行動にはお金を与えてあげないと同じようなことが起こります。要求どおりに仕事を終えたのに、報酬がなく「ありがとう」の一言のみで片付けられればやる気を失ってしまうはずです。
 お金とやる気の話に矛盾しそうですが、仕事はお金を稼ぐという経済的行動なので報酬がなければダメなのです。報酬は前提として、仕事内容に対する目標や価値観をお金以外に向けることが大事ということです。お金がないと生きていけないですからね。

罰金でルール違反は減るのか?

罰金システムによって望ましくない行動を抑制していることは理解しやすく、実際社会システムとして大体うまくいっています。例えば車の運転でスピードの出し過ぎを減らすようにスピード違反には罰金が設けられていますね。

しかし、場合によっては罰金によってかえってルール違反を促進してしまうということが起こってしまいます。どんな時でしょう?これは実際の事例を紹介したいと思います。

舞台はイスラエルの幼稚園です。この幼稚園の保育時間は朝7時から夕方4時までで、一般的な就業時間の前に閉まってしまうため、親が時間どおりに子どもを迎えに来れない日がどうしても発生してしまいます。そうすると子どもを置き去りにはできないので、職員は残業するしかありません。
 この問題に対して幼稚園側は、時間に遅れたら罰金を科すという方針をとります。今まで遅れた分はタダで済んでいたことを考えると、親にとっては痛手なように思えます。
 しかし数週間後どうなっかというと、職員が居残りで見る子どもの数は倍に増えていました。罰金でかえって遅れる親が増えたのです。

なぜでしょうか?理由は罰金が有料サービスとして働いたことです。お金を払えば遅れても問題ないというような考えになってしまったのです。

年収は幸福度を高めるか?

就活や転職でも給料の良し悪しばかりに目が行ってしまう人も多いと思います。僕自身も就職、転職活動では「それなり良い大学に行ったなら給料の良い大企業に行かなきゃ」なんて考えていました。給料が良ければ間違いないとたくさんの人が思うはずです。

結論から行くと、給料が多いか少ないかは幸福度や仕事の満足度にほぼ関係がありません。フロリダ大学が行なった研究(過去の研究データを分析してまとめたものなので調査というイメージが近いかもしれません)では相関係数がたった0.15だったようです。(相関係数は目安として0.5を超えてくると関係性がありそうだなと思える指標です)

年収にして400万〜500万くらいまでは収入が増えるにつれて満足度が上昇しますが、それ以降はだんだん上昇が鈍くなり、800〜900万くらいからはほぼ横ばいになってしまいます。
 年収1000万稼いで勝ち組になろうと思う人が多いかもしれませんが、満足度を見てみれば案外コスパが悪いということですね。

そうは言ってもお金は大事

ここまで意外な事実を書いてきましたが、いろいろ言われてもお金がないとどうしようもないこともまた事実です。ここから先は個人的な見解を書いていこうと思います

お金でモチベーションが下がるとか、罰金が逆効果になるとか言われても、お金(給料)がないと人は働きませんし、罰金がないと世の中無法地帯になってしまいますよね。僕が言いたいことは、「お金なんて悪だ」ということではなく、「お金に囚われず賢く行動しよう」ということです。

お金でモチベーションが上がり、たくさん稼げば幸せになれると思い込んだままでは、戦略としては効率が悪く、合理的で正しい選択ができないかと思います。全てのものごとをお金という価値基準だけで判断しないようにすることが大事かと思います。

なぜお金を気にしてしまうのか

お金以外に目を向けようと思ってもなかなかうまくできないと思います。職業選びではどうしても収入のことが頭をよぎるのではないでしょうか?

お金を気にしすぎてまう原因の一つに、他人と比べようとすることがあると思います。他人と自分を比較するときに、お金という指標はかなりわかりやすいものです。例えば、あいつよりも収入がいい、あいつよりも高い車を持っている、あいつよりも資産が多いなど。

しかし上には上がいるものなので、世界一の資産家にでもならない限りどこかで劣等感が生まれてしまいます。他人と比べること自体有意義なことではない上に、比べれば比べるほど無駄な執着を生んでいきそうです。

資本主義社会ではお金がないと生活できないので、お金を気にするのは自然なことですが、必要以上に気にするのは不幸の原因となりえます。お金について考える時は、他人と自分を比べる指標にしていないか注意してみると良いかと思います。他人と自分を比べたくなる気持ちはわかりますが、自分自身に目を向けて比べるのは過去と現在の自分にしましょう。
 また、仕事をするときであれば、お金以外に仕事に対する意義を考えてみると良いかと思います。

最後に

今回はお金とモチベーションに関する間違った常識を書いてみました。モチベーションという観点でいくと、お金は案外武器にならないことがわかったかと思います。

モチベーションを高める方法についてはここでは書ききれないので、機会があれば別の記事にしてまとめてみようかと思います。とりあえずはお金をモチベーションアップに使う時は注意が必要だということだけ頭に入っていれば良いかと思います。

最後まで読んでくれた方ありがとうございました!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?