007 農民藝術
この曲は、宮澤賢治が遺した「農民芸術概論綱要」から抜粋した言葉たちで構成されている。
底本は、親友の藤原嘉藤治が編集した『宮澤賢治 詩集農民とともに 藤原嘉藤治編』である。
藤原嘉藤治は、賢治亡きあと、その生き方を自分に重ねるように職を辞し、農民になった。
生前、賢治さんが成し得なかった農民藝術を体現しようとしたのである。
かくして、彼は岩手県紫波の奥深くで開拓に奔走し、81歳の人生を終えるまで酪農業を通じて厳しい自然と対峙した。
今回、どうしてもこの作品を収録したく、ギターとスポークンのみで曲を作った。
アコースティックギターは、レコーディング当日にリサイクルショップにて購入した。
1971年製造 YAMAKI DELUXE。
国産のヴィンテージギターである。
前の主が相当使い込んだ代物で、ダメージもあったが、
ギターの橋詰が試奏した瞬間
「これ・・・、いい・・・!」
と唸り、即決した。
ギターテイクもヴォーカルテイクも一発録り。
その場でギターのメロディをつくり、その場で声を重ねた。
出来るだけ、「生」を届けたく、やり直しはしなかった。
バックのサンプリング音は、エンジニアの小田くんが作ってくれた。
聞き取れないかもしれないが、実は賢治さんの実弟である清六さんの肉声や、詩人の草野心平の肉声が含まれている。
賢治さんと嘉藤治さんへのリスペクトが詰まった曲に仕上がった。
ちなみにevylockのメンバー中4人は、北海道の酪農学園大学出身。
テイクを収録したギターの石田は、実家で酪農業を営んでいる。
そして、ヴォーカルの私は一応、農学博士である。
農学を学んできた私たちが、賢治さんと嘉藤治さんの「農民藝術」を具現化してみた、そんな曲です。
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