ミギ3
目が覚めると、なにやらバタバタといろんな人が行き交っている部屋に入ったことがわかった。
「服切りますね!」
はぁ?何言ってんだ今着てるジーンズ古着屋で買ったリーバイスの……
「だめです!切らないで!!」
声を出したつもりだった。でもそれは誰の耳にも、届いていなかった。
無慈悲にも右足のジーンズを刃が襲った。
ああああああああああ!!てかなにやってんだよ何で切ってんだよ!!
……ああ、車の……ぶつかったんだっけ?
意外にも頭はスッキリしていて、色々と思い出した。
でも、自分が覚えているのは車がぶつかってエアバックが飛び出してきて顔が痛くて。
頑張って体を半身だして。
「しばらく寝て」救急隊?に親でもなく家にいる同棲中の覚えていないはずの彼氏の携帯番号言って。
ん?救急隊?
誰が呼んだの?
まぁ、そんな事は後で考えるとして
この状況はなんだ?
私は病院で「あろう」事はわかる。
私は運ばれて、処置を受けている。
職業柄何をやっているのか、次に何をやるのかわかる……ジーンズが切られてることも。
でも、脱がすためではなく右足の膝上から切った事も。
なんか傷があるらしい。
すぐにジーンズを脱がされ何もかけず下着も脱がされガバッと……
私はそれを見ていた。
先程「この状況はなんだ?」の違和感。
私は寝ているはずなのである。
「臥床している」と「眠っている」の2つ、両方の意味で。
声かけで返答しなかった患者には以降声かけをしないという素晴らしいシステムらしく、私の悲痛な叫びは声になっていなかったことがわかる。
わかるけど……見てるんだ、私は。
右足の処置をして包帯を巻きかけた時、看護師が「あれ?あれ?先生!?これー……」
その後の医師が何回か私の膝を動かし
「あっ!!間違えた!!」と言った事。その後何故か巻かれた硬いやつ(ギプスです)。
私は起き上がって見ている状態。
ちょうどベッドに座り処置を見ている……わけない。
救急で運ばれた患者が返答なしで起き上がっていたらびっくりするし声かけするし横になってろと怒られるはず。
何故かすべて見えていた。
当時、後になって違和感が明確な答えになったからこう書いてはいるが、その時は違和感だけ(なんで起きてるのに説明がないのか、間違ったって何?等々)だった。
相変わらずバタバタ忙しそうな医師、看護師をしばらく見ていると不意に眠気が襲ってきた。
まだかかりそうだから……寝るか。
意識はそこで途切れた。