「ゲーム部プロジェクト」はどれくらい資金投下をして、どれほど儲けてるのか?
Vtuber全盛期に活躍したチャンネルのひとつに「ゲーム部プロジェクト」というチャンネルがあります。
他のVtuberとは差別化する形で4体のVtuberにより成り立つ、Vtuberグループのチャンネルです。
2018年1月にチャンネルを開設して以来、2019年6月19日現在までに、じつに554本もの動画を公開しました。
全盛期である2019年1月には、月間総再生数が2000万回を突破し、現在では累計再生数が1億7700万回を超えています(ちなみにヒカキンTVは累計72億再生)。
今回は、この「ゲーム部プロジェクト」というYouTubeチャンネルが事業として結局どのくらい儲かったのかという分析をしてみます。
なお、あくまでYouTube領域の事業に張り続けている自分の知見から想定できる数字感を想像で入れているところが多いため、全ての数字が正しいわけではありません。
ざっくりとした事業分析としてお読みください。
この記事を読むことでわかること
A)「ゲーム部プロジェクト」を作るのにどれほどの資金を要したか
B)「ゲーム部プロジェクト」がどれほど稼いだかの試算
※この記事は、僕が業界人として得ることのできた対象事業の内部情報をもとに書いてあるわけではなく、あくまで一般的に公開されている数字をもとに想定できる範囲で書かれています。
累計の制作費はいくらか?
まず、事業者として気になるのは、こういった「ゲーム部プロジェクト」というチャンネル(=ビジネス)をするにあたって、「で…結局いくらかかるの?」というところだと思います。
この上に貼ってあるような、「実況系の動画」に関して言えば、制作費はけっこう低いんじゃないかと思います。ただゲーム実況するだけであれば、中の人の人件費(2人 ✕ 7000円 = 14000円)に、動画編集費用(10000円)とサムネイル(3000円)とかで合計27000円くらいで済みそうです。
中の人の人件費は正直憶測の域を超えませんが、一日に3本撮りとかすれば日給21000円に達するので、まぁ納得感はあるんじゃないかと思います。
ただ、ゲーム部プロジェクトの場合、ただの実況動画でも冒頭と最後の部分などに、まるでドラマでも見てるかのようなカメラワークの、かなり演出クオリティの高い描写が入ってたりしてるので、この制作を可能にするディレクターなり監督なり収録班なりの「制作スタッフ」にお金がかかってるんじゃないかと推測します。
実況動画くらいの動画で制作スタッフ人件費が1本あたり20000円くらいだと仮定すると、実況動画を作るお金は、合計で47000円くらいということになります。
さて、これで終わりかと思いきや、ゲーム部プロジェクトの恐ろしいところは、ドラマ仕立ての「ガチ動画」をちょくちょく公開してることです。
この類の動画の制作費、多分実況動画のそれとは比べ物にならないレベルだと思います。それだけ、演出クオリティがえげつないです。おそらくこの鬼クオリティの演出があったからこそ、ゲーム部プロジェクトは他のVtuberチャンネルとは一線を画して、一定の地位を築いたのでしょう。
で、どのくらいかかるのかというと、ぶっちゃけわからないのですが、30万円は絶対に下らないと思います。ショートドラマを1本作ってるわけですから、台本とかもけっこう事前準備入念にする必要ありますし、中の人も演技練習したり、演技指導をする人がいたり、撮り直しがあったりと、総勢10人近いチームが事前準備&1日作業でようやくできるレベルだと思うので、30万だとむしろ安いかもしれないですね。
そんなこんなで、ゲーム部プロジェクトの動画制作費用は下は5万円くらいから、上は30万円超えまであったりで、平均価格を10万円くらいとここでは一旦想定してみましょう。
公開されている動画本数は554本なので、単純計算、ゲーム部プロジェクトはこれまでの制作に累計で 554本 ✕ 10万円 = 5540万円かかっている計算になります。
チャンネルひとつにしては、かなりの予算をぶっ込んでますね。
累計のYouTubeアドセンスの売上はいくらか?
5540万円ものお金をぶっ込んだ事業が「ゲーム部プロジェクト」なわけですから、当然、その分儲けてもらわなきゃ敵いません。
ゲーム部プロジェクトはどのくらい儲けたのでしょうか?
YouTubeチャンネルには、まずは「アドセンス収益」というマネタイズポイントが自動的に付随します。
もちろん他にも複数のマネタイズポイントが想定できるわけですが、とりあえず先にこのアドセンス収益を計算してみましょう。
ゲーム部プロジェクトのこれまでの累計再生数は約1億7700万回です。
アドセンス単価がどのくらいかは正直なんとも言えないのですが、感覚的には多分0.2円くらいなんじゃないかなーと思います(WEB広告業界は年間を通して月によって単価がけっこう上下しますが、0.15円の月もあったり0.25円の月もあったりとかで、平均0.2円という推測です=ただし、ゲーム部プロジェクトの動画は10分以上の動画だったり、何時間にも渡る配信動画だったりが数十万再生されてたりするので、動画時間の長さに応じて広告単価が意外と0.3円とか0.4円とかいってる可能性ありです:ただ、今回は悲観的に0.2円を採用します、事実、再生数上位の動画は2-3分の短めの動画も多いですし)。
すると、1億7700万回 ✕ 0.2円 = 3540万円というのがアドセンスによる累計の収益額になるわけです。
つまり、推定の累計制作費が5540万円なわけですから、アドセンス収益だけだと、2000万円の赤字となるわけです(仮にアドセンス単価が0.4円だとするなら、アドセンスだけで7080万円なので、制作費全部回収しちゃってますね=もしそうだとしたら大分強いです)。
これが、5540万円ぶっ込んで2000万円失うビジネスだとすると、だいぶ渋いわけなんですが、ゲーム部プロジェクトの場合、「Vtuber」というIP(キャラクター)の人気を醸成することで、アドセンス収益以外の別のマネタイズポイントを発掘することができます。
それらを分析してみましょう。
アドセンス以外の売上想定
タイアップ
Eviryによると、Vtuber業界のタイアップ案件の9割が「ゲーム案件」とのことです ( https://www.moguravr.com/vtuber-promotion-seminar-repo/ )。そんな状況下、「ゲーム」を主な題材にしてる「ゲーム部プロジェクト」は、そもそもがタイアップ案件を取りやすい設計にしてるということがわかりますね。先にマネタイズポイントを想定してからチャンネルの設定を練ってるこの作り、かなり秀逸だと思います。
それで、実際に過去にどれだけのタイアップ案件をゲーム部プロジェクトが受けたのかというと、正直そこまでは数えられませんでした(もしかしたらゼロの可能性もあります)。
ただ、企業案件を受けられる条件が十分に揃ったチャンネルだと思うので、ここでは仮に月1本の案件を受けたと考えましょう。
ゲーム部プロジェクトほどとなれば、全盛期は月2本でも3本でも受けられたかもしれませんが、あまり企業案件をやりすぎると視聴者から嫌われる可能性もあるので、熱量を維持するためには、月1本がふさわしいだろうという想定です。
仮に1本あたりの平均単価を150万円と見積もってみます。これまで27ヶ月間運営してきたなかで、最初の半年と、Vtuber業界自体が下降気味のここ最近半年はタイアップを受けなかったと想定してみます。
そうすると、15ヶ月 ✕ 1本 ✕ 150万円 = 2250万円 という数字が出てきます。アドセンス収益ではまかないきれなかった2000万円の赤字を一気に埋めちゃいましたね。
おそらくですが、全盛期のタイアップ単価はもう少し高かったんじゃないのかな?と思うので、これよりはもうちょっと良い数字が出てるんじゃないかなとは考えています。
その他
ゲーム部プロジェクトは、アドセンスやタイアップ以外にも、複数のマネタイズポイントを持っています。
FANBOX( https://gamebu.fanbox.cc/ )。
ボイス販売( https://gamebu.booth.pm/ )
その他にもLINEスタンプや月間アンリミテッドなど(この2つは手数料とか原価とか考えるとほとんど利益生まれてないと思います:この2つは、爆発的な利益ポイントというよりは、熱量の高いファンたちにほんのちょっとアップセルする程度かと=電卓叩いてみればすぐ分かると思います)
ただ、ぶっちゃけこれらのマネタイズポイントはそんなに儲かっていないと想定します。
以下に計算式をざっと書きます。
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FANBOXの500円商品:月間新規チャンネル登録者の0.1%が加入すると想定。CH登録者の1000人に一人が500円のサブスクに加入するわけですから、それなりの熱量が必要な気がしますが、いったんこれにしておきます。継続率は仮に40%と設定。
FANBOXの3000円の商品:月間新規チャンネル登録者の0.03%が加入すると想定。1万人に3人です。継続率は仮に30%と設定。
FANBOXの10000円の商品:月間新規チャンネル登録者の0.01%が加入すると想定。1万人に1人です。継続率は仮に50%と設定(月1万払うってことはけっこうな熱狂者なので、継続率は高いであろうと判断)。
1000円のボイス商品:月間新規チャンネル登録者の0.1%が購入すると想定。1000人に1人です。
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これらの数字を全部エクセルに打ち込んで、過去27ヶ月分の累計の売上を計算すると3,544,118円という数字が出てきます。
これがもし本当の数字なら、おそらく利益目的で、これらのマネタイズポイントを開いてるということではないように思います。27ヶ月で350万円を得るには労力がかかりすぎてて、コスパが悪いからです。
なので、利益を得るってよりかは、ファンコミュニティを形成したり、定期的に「課金」という体験を視聴者にさせることで、熱量を維持させることの方に意義がありそうです。
たとえば、LINEスタンプは1個売れても、多分ほとんど利益は残らないはずです。でも、200円でも300円でも課金したという体験が、その視聴者にゲーム部プロジェクトに対する「熱」を持たせることに繋がるのです。
おわりに
最後に、ポイントをまとめると…
1)制作には累計で5540万円くらいかかっていると推測
2)アドセンスで3540万円〜7080万円を回収していると推測
3)タイアップで2250万円くらい稼いでると推測
4)その他マネタイズポイントは350万程度しか稼げておらず、利益目的というよりは、視聴者の熱量維持の目的のほうが強いと推測
これだけ見ると、アドセンスで制作費を回収しちゃってるので、それ以外のマネタイズはすべて丸々利益になるという強いビジネスモデルに見えます。
ただ、最近、活動ペースが落ちてるのを見ると、どこかからのタイミングで再生数が鈍化してアドセンスで制作費を回収できなくなってしまったのでしょうか。
それでもタイアップ案件が続けば十分に制作費は回収できるはずですが、ユーザーの熱量も落ちてきて、エンゲージメントが下がってしまったのでしょうか?
ただ、メンバー4人が独立して新たにチャンネルを作っているところを見ると、メンバー個人の配信によるスパチャで稼ぐ、いわゆる「にじさんじ」や「ホロライブ」的なプレイに持ち込もうとしているのでしょうか?(このあたりは殴り書き程度の憶測です)
動画を作って配信するより、生放送した方が圧倒的にコストが低いし、生放送すればスパチャというマネタイズポイントが増えるので、利益率がグッと上がりますからね。
とはいえ、メンバー個人のチャンネルを覗きにいくと、スパチャはチラホラあれど、そこまで熱狂的な登録数や再生数が出てるわけではないので、これまでの人気を利用したプレイではなく、新たなファンを獲得しにいく戦略が必要なのかもしれません。