スタメンとレギュラーの違い
9月の3日から秋季リーグが開幕しましたね。
筑波大学の成績は
1試合目 日本大学 21-16勝ち
2試合目 日本体育大学 23対26負け
まだ2試合しか戦っていません。これから毎週試合が続いていきます。
チームではSNSを利用して試合の速報や結果を逐一流しています。戦評がなかなか秀逸なので是非みてみてください。
http://tsa.tsukuba.ac.jp/handball-m/2021/09/2021年関東学生ハンドボール秋季リーグ第1戦vs日本大/
さて、連日試合を行ってみて、今年の筑波大学がどんなチームなのかざっくりと見えてきました。また個人としては筑波で練習を積むだけでは得られない刺激を選手また対戦相手からもらいながら、私たち「筑波大学」の戦い方を模索する日々です。
今回noteを書こうと思った理由は、2試合を終えて自分の中で消化しきれないコーチングを言葉にして整理したいと漠然と思ったからです。往復4時間の移動とゲームを終えて身体はへとへとなはずですが、頭にはモヤがかかっており、寝れそうにない状態です。そんな僕の頭の中を覗き見る感覚で読んでいただければいいかなと思います。
試合を行う上での「テーマ」
まず秋リーグを戦い抜いていくためのテーマが大きく分けて2つあると思っています。ちなみにこの二つは共存するという前提を元に話をします。しかし、そのバランスは実に難しいというのが正直な感想です。
1つ目は秋リーグを優勝するという目標のためにプレーすること。
つまり、目の前の1戦1戦に全力を出して勝ちに行くこと。どのチームも勝ちたいと思っていますし、コーチはもちろん選手が一番勝ちたいと思っています。
2つ目は育成をすること。インカレを見据えていろんなメンバーをゲームに出しながらチーム力で戦っていくこと。
インカレの5連戦を想定した時、7,8人のメンバーを固定して戦い抜くことは不可能です。レギュラーとスタメンという言葉があります。
どちらも初めからゲームに出る人、というイメージがありますが私は使い分けています。スタメンは単なるスターティングメンバーにすぎず、途中出場でも自分の持ち味を発揮してチームの勝利に欠かせない存在をレギュラーと呼んでいます。要はインカレのためにリーグを通してレギュラーを増やしたいね。ということです。
選手起用のジレンマ
今日、試合後にイベントの記者の方にインタビューをしていただきました。
「筑波は選手をよく変える印象がある、選手を変える基準はある?」
その質問をした背景の一つとして、客観的に見て筑波は選手交代の機会が多い。しかも出てくる選手は高校時代に全国大会に出たことがない選手もいる。他の大学と比べても珍しいと思います。
(間違いなく、そういった選手をゲームで活躍できるレベルまで引き上げて実際に活躍してしまうのが筑波の最も魅力的な部分である。)
ポジティブに考えると「筑波は選手交代が多くいろんな選手を使って戦っていることは素晴らしい」しかし、ネガティブに考えると「勝とうとしていないように見える」のかもしれない。と質問を受けて感じました。
実際はインカレを見据えて戦っていますが、このネガティブな思考がチーム内に流れてしまうと選手たちはとても受け入れ難い気持ちになると思います。上記の2つのテーマが共存するとわかっていても、1つ目の目の前の相手に勝ちにいく気持ちが少し邪魔をしてくるんですよね。そのバランスが絶妙に難しい。
この筑波大学は「超主体的チーム運営」を掲げています。チームの行方を左右する判断をするときは選手に話してから決めるようにしています。
しかし、自分も選手の身だったのでわかります。どうしても「堅く」戦いたくなってしまうものです。
前半20分経過して3点リードしている場面でベンチに下げられたときはいつも不満そうな態度をとっていましたから笑
点差をつけられるときに付けておきたい。
そんな心理は痛いほどわかります。
しかし、コーチという立場に成って初めてマクロな視点でチームを見るようになると、チームが本当の意味で前に進んでいくためには保守的な堅い運営ばかりをしていると周りのチームに置いていかれてしまう感覚を覚えました。
もっといろんなチャレンジをして、チームの可能性を広げて行かなければ。しかし、目の前のゲームは大事だし、勝たなきゃいけない。
そんなジレンマを抱えながら戦っています。正直行ってかなり楽しいです。
大学チームの目標は勝つことが1番でいいのか?
この質問にはすぐに答えられます。勝つことを第1の目標にすべきです。
しかし、この答えは完全ではありません。
私たちは「勝つこと」と同じくらい、チームが存在する「ビジョン・理念」を大切にしています。
筑波大学男子ハンドボール部は「学生ハンドボール界が目指したくなるチーム」というビジョンを掲げ、全国に筑波のハンドボール部が行っている活動を発信しています。
堅苦しい表現をすれば、「発信している内容の信頼性を担保するため」に、そして選手それぞれが一種の自己実現のために勝つために出来ることを精一杯努力している。そんなチームが筑波大学男子ハンドボール部です。
「強くあり続けること」と「魅力的であり続けること」このどちらも達成しなければならない。
欲張りであることも私たちは自覚しています。だからこそ、簡単ではないしそこに価値があると感じています。
つまり勝つことは1番だが全てではない。というのが本当の答えになります。
大学チームでチャンスは与えられるべき
先ほど書きましたが、今日のテーマを考える前にまず大学スポーツは勝つことに重きを置くべきかそれとも育成に重きを置くべきか疑問に思いました。
もちろん自分が現役時代だった頃は 勝つために筑波大学に入学してきたし実際に試合は必ず勝つつもりでプレイしていました。今の選手も同じ感覚だと思います。
しかしハンドボール 街を大きな視野で見たときに大学スポーツが日本国内のトップレベルではありませんし、その事は各大学から早い段階で日本リーグや海外のリーグに選手を送り出していることからもわかります。
そして何より、入部の際に契約書を書くことはありません。
ご存知の方も多いと思いますが、基本的にチームに所属してプレーするためには「コントラクト」契約が必要です。契約する基準はチームにとって異なりますが、ほとんどの場合「チームに利益をもたらしてくれるか」という観点ですね。
極端な例え話をすると、世界のトップクラブの一つであるPSG(パリ・サンジェルマン)に入りたいと思って入れるわけではありません。
一方、筑波大学のハンドボールチームは筑波大学の学生にならなければならないというある種の「条件」はあるものの、その中からチームへの入部を断ることは原則的に出来ません。
本人がチームの一員としてプレーするための意思と情熱、また取り組みを部員および監督が認めれば入部出来ます。
そういった意味で、先の章でお話しした通り、うちのチームで大切なポイントはチームのビジョンを体現した上で、試合に出て勝利に貢献できる選手になれるかどうかです。
そのためにこちらとしてはその取り組みをしっかり評価して、ときにチャンスを与え、彼らの自己実現をサポートすることが大事だと思っています。
その辺の境界線は割と厳しく、ただチームに在籍していたいという意見は聞き入れられることはありません。チャレンジして失敗してもいいんです。前に進もうとする姿勢が集約されてチームの力になります。
ときには頑張ることに疲れて休憩することがあるかもしれませんが、それも一つの選択肢です。また戻ってきてもいいし、戻らなくてもいい。それぞれが表現したい人生とのバランスを考えながら決めたらいいと思います。
さて、今日はこの辺りにします。まとまらない内容で申し訳ないです。頭の中のごちゃごちゃを一通り言葉にさせていただきました。
ご意見ご感想お待ちしております、ぜひ一緒にお話ししましょう。
本日もお疲れ様でした!
筑波大男子ハンドボール部 ヘッドコーチ 森永 浩壽