一旦下手になることが必要なワケ。
上達のプロセス
今回は中高生に向けた内容になっています。シュートが入らなくて悩んでいる選手がこの記事に辿り着き、少しでも心が軽くなってくれたらいいな、という気持ちで書き綴っていきます。
テーマは「技術」についてです。個人戦術力の中の大事な要素で、どれだけ優秀な頭脳があってもそれを体現する技術がなければパフォーマンスは高まりませんよね。
カテゴリーによって個人に必要な要素やゲームの様相が変わってくるため、それに伴い「技術」もグレードアップし続けなければいけません。
その年代で上手くいっていたシュート技術だって、次の年代に行ったら通用しなくなる可能性があり、それは至って普通のことです。
その壁にぶち当たった時、あなたはどうしますか?
今持っている技術を壊して、新しく積み上げる勇気はありますか?
周囲の大人はその過程を見守る余裕はありますか?
目の前の試合を取るか、未来を取るか。
今までこんな経験はありませんか?
『しっくりは来てないけど、シュートが入るからそのままで良いか』
『新しい打ち方を試してみたいけど、新しいことをしてシュートが入らなくなったらコーチに怒られる...』
特に育成年代に多いと感じているこの現象は、目の前のゴール、目の前の試合、目の前の大会で成果を出さなくてはならないと感じている証です。
私自身かつて同じ状況に陥っていました。
ウィングシュートを打つ場面で身体能力に頼り、めいいっぱい身体を傾けて遠目を打つ事ばかりに執着して、駆け引きすることを放棄した結果どうなったか。
ゴールキーパーのレベルが上がった試合では簡単に止められてしまうようになりました。いくら跳んでも打てるコースやタイミングが限られているシューターはカモです。(相手の思い通りにハメられるということです。)
「思い切り跳んで身体を倒して打つ」という技術の限界を感じました。
下手くそな時期をどう捉えるか。
大学に入り、空中でボールの出所を変えるトレーニングを教わりました。バランスが崩れるほど思い切り跳ぶのではなく身体をコントロール出来るくらいに調節をして跳ぶように意識しました。
始めは全然上手くいかないんですよね。空中でボールを動かすわけですから、余裕はなくなる。コントロールして跳ぶわけですから、角度は狭い。
しかし、方向性は間違っていないと確信していたので「姿勢をコントロールしながら跳び込み、ボールの出所を変える」技術を繰り返しトレーニングしました。
そのタイミングで腹圧を高めるトレーニングを行ったり、「角度を広げるために跳ぶジャンプ」という考えから「GKとの距離を調節するためのジャンプ」に考え方を改めたタイミングでシュートが入りだすようになりました。
周囲の理解と柔軟な思考とほんの少しの勇気
一度体得した技術を手放すには勇気がいるし、チームのコーチの理解も必要です。1人では煮詰まってしまうこともあると思います。
1人の選手として成長するためには必ず必要なステップで、自分と向き合うことから逃げていると自分がどんなプレーをしているのかさえわからなくなります。
技術はお盆の上に乗った水のようなイメージがあり、同じようなプレーをしていても毎日絶妙に違っているはずです。大切なことは同じプレーをし続けるのではなく、絶妙なバランス感覚の中で自分で自分のプレーを修正する力だと感じています。
特にハンドボールのような、同じ動きを誰にも邪魔されずに志向するのではなく、さまざまな要因の中に適応しながらプレーする競技では大事な考え方になると思います。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
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本日もお疲れ様でした!
筑波大男子ハンドボール部 森永 浩壽