ハンドボールコーチとしての限界
「教師の五者」
「教師の五者」という言葉を聞いたことがあるだろうか。
つまり、先生には生徒を導くために多くの領域の知識を携えて、多角的に生徒にアプローチするオールラウンダーであれという意味の言葉である。
この話を大学時代に聞いたとき「ふーん、大変だなあ」くらいにしか捉えられていなかったが、大学ハンドボールチームのコーチになって初めて、コーチも全く同じだと再認識した。
学校部活動の顧問の先生も、最近では怪我について外部の接骨院に委託しているチームもあるようだが、多くの役割をほぼ1人で背負い切っている。練習メニューの管理や研究、選手のコンディショニング、怪我人の対応、校外チームとの練習試合のマネジメント、大会引率のマネジメント、進路相談などなど。
普通に考えて到底不可能なレベルのタスクが降ってくる。これをやってのける素晴らしい方々がトップレベルには存在するが、これを全国どこの指導者に求めることはある意味で不可能、とても酷なことだと思う。だからこそ一貫指導の環境が...(話がそれたのでこれはまたの機会)
しかし同時に、オールラウンドにそれぞれをカバー出来たとしてもコーチとして生徒を導くためには限界があることに気がつき、この記事を書くことにした。
前回の記事の中で「原因を見極める力」が必要である、つまり技術力か、戦術思考力(いわゆる判断)か、技術を体現するフィジカルコンディションか。
私が強く感じているのは、前の2つは私たちはンドボールコーチにとって専門性を発揮できる、しかし、それを体現するためのフィジカルに関する知識は著しく乏しいということ。
例えば、減速が出来ないことが原因でジャンプの方向が前になって、GKと対峙する時間を稼ぐことができない、またはGKとの距離が近すぎてコースが少ない場合は、
減速のために必要になる筋肉を鍛え、身体の使い方を習得することが大切になる。
この問題に対して科学的知見から正しいアプローチの出来るハンドボールコーチの存在を私は知らない。
教えられない、けど必要。
結論、専門家に頼るしかない。
現在、筑波大ハンド部では朝練を実施しており、例年は体ほぐしや機能的な動作習得を兼ねたブラジル体操から、サーキットトレーニングでオールアウトをする内容。
しかし、今年からヘッドトレーナーに就任した佐下橋くんの働きかけによって、ハンドボールに必要不可欠である「ストップ動作」に関するトレーニングを行なっている。
以前から現アランマーレトレーナーの横川さんは、選手の動作に関する相談を個別で受けて、トレーニング指導をしてくれていた。
トップに上り詰めようとする選手の多くは、「理想としているがその通り動けない」という動きに対して、ハンドボールコーチに聞いても解決しないという感覚を本能的に持っている。(良い事)
そこで専門家であるトレーナーに相談することでさらなるパフォーマンス向上を図るのだ。
大学に入るまで、トレーナーは怪我に関する治療役のような捉え方をしていた(ごめんなさ)が、そのように捉えている方は多いのではないか?
同期のトレーナーに聞いたところ、トレーナーの扱い方というか、役割の幅広さを理解していないチームには受け入れてもらいにくい現状があるようで。
一方で、サッカーや野球をはじめとするあらゆるスポーツでその重要性は証明されている。
この記事はかなり面白い。
意識改革=家帰って自習するかしないか
またトレーナーは、選手のフィジカルコンディションに対する「意識」を改革する上でも非常に重要な存在になる。
体育館に来て練習する時間はせいぜい2時間、この時期は週に6日の練習だと仮定すると、1週間で12時間/148時間となり、残りの時間をどう配分するかが長期的な視野に立ったときに大きな差になる。(いつ何時もハンドのこと、身体のことを考えとけ、は流石にきついと思ってる)
が、風呂上がりに関節の可動域を広げたり、理想とする動作に必要な筋肉を鍛えることは「意識」の問題であると考える。私自身はそれに気がつくのにだいぶ遠回りしたが。
実際に、去年のキャプテン、現在北陸電力に所属する朝野翔一郎や、現在ハンガリーの1部リーグKTE-Piroska Szörpに所属する榎本悠雅は1年生、2年生の頃からフィジカルに対しての関心が高く、個別に相談していた。
チームにトレーナーは必ず必要
このことを最後に伝えたい。
これは、選手としての経験と、コーチとしての経験、両方から言えること。
ハンドボールコーチ一人では強いチームは出来上がらないと思っていて、ハンドボールコーチ、トレーナー、栄養士などなど、スタッフはチームとなって初めて機能し始めると思う。
そこに対価を支払うほどの価値が間違いなくあると思うし、もっと雇用機会が増えれば、トレーナーのリスポンシビリティが高まる。このことはハンドボール競技にとって良い方向に向かっていく条件だと確信している。
余談
こんなことを言うと本人にプレッシャーになるかもしれないが、さげ君はついにTwitterアカウントを作ったそう。ただ、本人はかなり多忙で運用するための脳内リソースを避けないらしい。
(忙しいんだよ〜という言い訳を私なりに解釈してみた)
なので、もう少しお待ちください。
さて、今日はこの辺りにします。
ご意見ご感想お待ちしております、ぜひ一緒にお話ししましょう。
本日もお疲れ様でした!
森永 浩壽