
「売られた喧嘩を買う大人(3)」
「おいゴラァ!!」
声がした。聞き覚えのある安心する声だった。
・・・Bだ。
助けに来た安心感といより、
一緒にこの世界に閉じ込められていく仲間を見つけられた、という安心感だった。
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男に5万円を渡された日、Aの様子はおかしかった。
いつもふざけてるあいつが、妙に落ち着いた低い声で遊びに誘ってきたり、
むかつくやつ相手に自分から絡んでいったり、全部違和感だった。
・・・何かあると思った。
大切な仲間だから、気になった。
だから、あいつの行動を連れにも監視させていた。
あの日から二日後、連れからこんな話を聞いた。
「あいつ、お前の言う通りなんか怪しいぞ。さっき電話で、”東京行く”とか、”100万ほんとに用意できるのか?”とかきいてる。ヤバいのに突っ込んでるんじゃねえのか」
あいつ、東京に行く気だ。
すぐにAに連絡した。
「お前、今どこにいる。今から遊ぼうぜ」、と。
Aからは、今日の夜から行くとこあるから無理だと断られた。
俺は確信した。今日がその日だと。
連れに居場所を聞いて、急いであいつのもとへ向かった。
ちょうど、駅へ向かうところだった。
俺も男からもらった5万を使って、東京行のチケットを買い
Aの後をつけた。
それからが早かった。
男が現れたと思ったら、大男が現れあっという間にAは古びたビルの中に連れていかれた。
玄関はだれもおらず、長い廊下の先に1部屋だけ電気がついた部屋が見える。
ドアに窓がついており、そこから中の様子が見えた。
Aが椅子に縛られている。
助けないと、死んでしまう。
そう思った俺は、反射的に部屋に走っていった。
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Bは大男にとらえられ、羽交い締めにされながら
興奮状態で叫んでいる。
男はにっこりと微笑み、Bの脳天に管を刺す。
目の前でぐったりするBを見て
Aは唖然とした。
男は知っていた。Aが来ることも、そしてBが追いかけてくることも。
・・・だって、それが本当の狙いだから。
(第4話に続く)