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「わたしだって、ほめてほしい」。いま、僕たちが「ほめるBar」をはじめた理由

「おしりだって、洗ってほしい。」

1982年、そんなコピーが全国のお茶の間を駆けめぐったらしい。TOTOの温水洗浄便座「ウォシュレット」のCMで、「コピーライターの神様」と呼ばれる仲畑貴志さんが生み出したこの名コピーに触れて、「え、お尻洗ってもらえるの?」と、全国の日本人が期待でおしりをプルプル震わせたのは想像にかたくない。

それから37年。「ウォシュレット」でおしりを洗ってもらうことは一般的になった。ウォシュレット派、非ウォシュレット派という断絶はあるにせよ、「おしりにも洗ってもらう権利がある」という権利について、「いや! そんな権利はないのだ!」と異議申し立てをする方は、すくなくとも僕のまわりには見当たらない。なんなら最近では、スマートフォンに向かって「ヘイ、しり」と語りかける、急進的ウォシュレット派さえ見かけるくらいだ。

しかし、おしりに対しての当然の権利が認められ、その欲求が満たされてきたというのに、人に対しての、もっと根源的な欲求が満たされていない気がしてる。

その欲求とは、

「わたしだって、ほめてほしい。」

というものだ。

なんのひねりのない、二番煎じで、コピーとしてはインパクトにかける言葉である。だけど、「うんうん、ほんとそうなの。」と、おおきく頷くひとは多いんじゃないかな。

なにしろ世の中にほめが足りてない。

子どもの頃はただ存在しているだけで「かわいいねぇ」とほめられたのに、大人になるにつれてそうはいかなくなる。

たとえば主婦の方。毎日がんばって家事をこなしているのに、「部屋、めっちゃ綺麗になってるね!」「今日の料理とびきり美味しいね!」と言われることなく、ため息が多くなっていたり。

たとえばフリーランスの方。毎日がんばって納期を守って仕事をしているのに、納品してもクライアントから「ありがとう」の一言もなかったり。

そんなひとが、日本にはたくさんいる。


「わたしだって、ほめてほしい。」


という欲求をお腹のそこにしまったまま、今日もひとりキッチンやパソコンに向かい、がんばっているのだ。ほかならぬ僕がそうだった。

ひょっとしたら、このnoteを読んでいるあなたもそうかもしれない。


ほめるbarとは?


そんな「わたしだって、ほめてほしい。」という思いを抱えている人が、ふらっとおとずれて、自分の素敵なところに気づき、少し自分のことを好きになって帰ることができる場をつくれないか--。

そんな思いで、郡司淳史・中西 須瑞化・山中康司の3人ではじめたのが「ほめるBar」という企画だ。(僕がこのnoteを書いてるけど、3人ではじめたものなのです)

わかりやすくいえば、「ほめるBar」は、「ほめる人」に話を聞いてもらい、あなたの素敵なところをほめてもらうことで、自分のことをちょっと好きになることができるイベントである。


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>左から郡司淳史・中西須瑞化・山中康司

2018年8月に、「日本一ハードルの低いレコード屋 block」でスタートしてから、2019年6月以降は「ソーシャルバー PORTO」に場を移し、現在(2019/9/17)まで都内で4回、開催してきた。

内容は、「イベント」というより「バーテンダーがほめてくれる、1日限定のバー」というイメージが近いかもしれない。「ほめる人」が、お客さんのお話に耳を傾けて、「それは素敵ですね」とポジティブな言葉を伝える。ほかは、通常のバーと変わらない。

(と言いたいところだけど、僕らは普段バーテンダーじゃないので、つくれるお酒のレパートリーが壊滅的に少ないのは愛嬌だとおもって、許してください笑)

告知はほとんどFacebookだけで、ほそぼそとやっているのだけど、それでも毎回、10名から30名の方が訪れてくださり、「ほめトーク」に花を咲かせる、ひそかな人気イベントになってきている。

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ほめるBar@ルクア、開催


そんな噂をどこからか聞きつけてくださった、大阪駅直結の国内最大級の駅型商業施設「LUCUA osaka(ルクア大阪)」の方が、「やりましょ!」と声をかけてくださり、先日9/13-9/16には、期間限定の「ほめるBar」をルクアで開催させていただいた



この「ほめるBar」では、いつものほめるbarとはちがって、占いの館みたいに5人の「ほめる人」がそれぞれのブースを持ち、20分交代制で1人ずつお話を聞き、ほめていくスタイル。ちなみに料金は500円(安い! と評判でした)。

「ほめる人」も言い出しっぺの3人だけでなく、モデル、婚活カウンセラー、コミュニティデザイナーなど、各領域のほめ上手を集めてのぞんだ。(なぜかメガネ髭男子率が高い)

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>ある日のほめる人たち。(日によって顔ぶれは変わる)

漫画家・山科ティナさんの、おもわずキュンとしちゃうようなイラストの魅力もあって、Lmagaはじめ多くの媒体に取り上げられ、TwitterやInstagramでも反響を呼び、4日間で約200人の方が訪れてくれた

(せっかく来ていただいたのに泣く泣くお断りしてしまった方も……ほんとうにごめんなさい〜!)


なかには遠方から車で駆けつけてくれる方もいたり、立ちどまって「この企画、いいねぇ」とこちらをほめてくださる方もいたり、ほめタイムが終わったあと、涙を流してくれる方もいたり。


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そして、ほめさせていただいた後に感想を漫画やイラストでまとめてくださった方もいた。これには運営メンバー一同、「嬉しいね…」と感動の嵐。


>美容系体験レポ漫画を描いているどてらいぬさんが描いてくれた漫画。僕を爽やかイケメンに描いてくれているところが格別うれしい。

>monakaさんも素敵なイラストを描いてくれた。似顔絵似てる!


そして全日程終了後には、なんとポルノグラフィティの新藤晴一さんが、自身がパーソナリティをつとめるラジオ番組「カフェイン11」で、ほめるbarのことを紹介してくれ、「行きたいっ!!」と言ってくださるという事件も! (該当箇所は20:00〜です)



晴一さんの言葉をちょこっと抜粋。


行きたいっ!! モデルさんがほめてくれるの? 何分間何分間? ほめてもらいながら水割り飲めるなら1時間4500までなら出すよ(笑)

勉強したからほめてもらえるとか運動したからほめてもらえるとか、自分の部屋掃除したからほめてもらえるとか、それって本当に子どものときだけじゃけぇね。今何やったら誰かからほめてもらえる? 

ま、俺とかはこうやって、ファンが興味持ってくれて、これ頑張りましたって言ったらほめくれる人もおる立場じゃけど、そのSNSの発進とかラジオの発信を止めて素の俺に戻ったら、何をやったら誰にほめてもらえる? って話じゃん。


これには震えたなぁ。

その日、寝るまでずっと「ロマンチストエゴイスト」が脳内リピートしてたのは言うまでもない。(中学時代、聴いてたなぁ。青春!)


誠実にほめることは、自分と相手を笑顔にする


おもいかえせば、松戸の居酒屋で焼き鳥をかじりながら「最近さ、”ほめ”が足りてない人多いよね」と、郡司と何気なくしゃべっていたことが、この企画のはじまりだったのだ。

それから今ではほめるBarに欠かせない須瑞化ちゃんが仲間になってくれて、blockの鈴木さん、PORTOの匠くんが素敵な場を使わせてくださり、最初のほめるbarに来てくれたなほこちゃんが仲間になり、僕の友人のゆうやくんも手伝ってくれ、ルクアの北野さん、大垣さんが素晴らしい場を用意してくださり、ルクアでの4日間は婚活カウンセラーの宮本ゆきさん、モデルの雅也さんと大地さん、場を編む人の藤本遼くん、ほめて育つ人オザケンさん、ほめる知育クリエイターの齋藤昌久さんという、ほめ戦闘力500000000くらいの「ホメンジャーズ(と、僕らは呼んでいた)」が、ほめる人として場に立ってくださり、SHINDENのみんなも場を盛り上げてくれたり……。

なにしろ、関わる人みんな笑顔なのだ。

どんどん広がっていく、このポジティブなエネルギーはなんなのだろう。

ひょっとしたら、だれかをほめて、そのだれかが自分を好きになり、別のだれかをほめるようになって、またそのだれかが自分を好きになり、別のだれかをほめて……という、ほめの連鎖が起きているのかもしれない。

「Pay it Forward(ある人物から受けた親切を、また別の人物への新しい親切でつないでいくこと)」ならぬ、「ほめ it Forward」とでも呼べるようなことが、ちょっとずつ僕らのまわりで起き始めているのだ

…と書いたけど、ちょっとかっこよすぎだなこれは。話がでかすぎて、むずがゆくなってきた。

でも少なくとも、こうは言える。

「誠実にほめることは、自分と相手を笑顔にする」

これは4日間、ルクアでたくさんの方とお話しさせていただいて確信した。相手と誠実に向き合い、ほめることで、相手が笑顔になり、感謝され、自分も笑顔になる。そんな場面が、この4日間で何度も何度もあった。

ちなみに、誠実に、ってのが超だいじである。

僕はほめることが何でもかんでも最高イェーイ! ってわけじゃないと思っている。良かれと思って(あるいはなにかの打算があって)発した安易なほめ言葉が、人を傷つけたり、人生を狂わせてしまうなんてことは、ドラマや映画を見なくたって、僕たちは人生でたくさん経験してきているし、改めて今回、ほめる立場になる怖さも感じた。

誠実じゃない「ほめ」はだめ、ぜったい。


今後のこと


ほめるBarの今後について。正直、まだあんまり決まっていない。ここまでたくさんの方に知ってもらえると思ってなかったから、ロゴとかLPとか、次回のイベントページでさえ用意していなかった。てへぺろである。

ただ、

「わたしだって、ほめてほしい。」

という思いを抱えた方が、たくさんいることは実感としてわかった。僕らがどれだけのことができるのかはわからないけれど、手の届く範囲で、なにかそういう方々に少しでも笑顔になってもらえるようなきっかけをつくれたらなー、なんて思ってます。

それではまたいつか、ほめるBarで!


(Main Photo by Masaru Iwaida

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