稲村とチョコレートの残り香
若い頃からさっぱりモテない僕にとって、稲村ヶ崎はほとんど最悪に近い思い出がある場所だ。あまりにみっともないので詳細は伏せておくけど、たとえばバレンタインデーに賞味期限の切れたチョコを渡されて別れを告げられたのも稲村なのだ。何もそんなにていねいに別れを告げてくれなくてもと思うのだが。笑
だけどチョコってよぶんなものが入っている種類のものでない限り、賞味期限が切れても保管状態さえちゃんとしてれば簡単には腐らず食べられるからそれはそれでいいし、期限切れチョコで「この恋も期限切れよ」ってメッセージをもらったのだと深読みすればこれは彼女なりにおしゃれな別れの告げ方だったのかもしれないなと今は余裕を持って思える。笑
そんなこんなもあって僕はずいぶん長いあいだ稲村ではポートレートを撮る気になれずにいた。もし撮るとしたら黒歴史を払拭できるような素敵な人じゃないと嫌だなって。
Monicaさんと稲村ヶ崎の駅で待ち合わせたよ。会った瞬間、今年の夏は最高の夏になること確定しちゃった。僕はMonicaさんの顔とプロポーションとそして何よりもお話が大好き。
海の見えるカフェで事業のお話とか聞いたり。男女問わず自立している人の話はすごく興味深いし楽しい。僕みたく自分に甘いやつとは違うもの。ひとつひとつの話が刺さるんだよね。
そしてカフェを出たあとはずっと、時間が尽きるまで写真を撮ったよ。
いいモデルさんって背中でも笑ったり泣いたり怒ったりできるよね。背中を見てるだけで、今どんな顔してるのかがわかるんだよね。
そして場の色に混じっていく。
そろそろ撮影時間が残り1時間ぐらいになってしまう。稲村に一区切りつけて鎌倉へ行くことにした。
江ノ電に乗って。
小町通りを横道にそれたところにある学生の頃からたまに行くお店。
写真を撮ることって私にとっては聞くことなんだ。自分の話なんかはどうでもいい。聞きたいんだ。会いたいと聞きたいと撮りたいがイコールになったとき、僕はシャッターを切っている。
ありがとうMonicaさん。そろそろ時間だね。
本当はもっともっと話していたいんだけどMonicaさんはモデルで僕はカメラマンだからね。モデルとカメラマンには撮影時間ってものがあるのさ。その時間だけ一緒に生きていられるんだ。
model:Monica
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