重森陽太(しげもり・ようた) 会社員とキックボクサー、 スーパーハードな二刀流。 「あと何年キックをやれるんだろうと思うと毎日の練習を頑張れますし、試合もどんどん挑戦したい」( 9月3日「創世のタイガGP」出場選手インタビュー)
「KNOCK OUT CHAMPIONSHIP.2」(9月13日、後楽園ホール・第2部)
「創世のタイガGRAND PRIX 61.5kg RED 初代王座決定トーナメント(創世のタイガGP)」出場者インタビュー
「神撃キッカー」重森陽太(伊原道場稲城支部)
会社員とキックボクサー、
スーパーハードな二刀流。
「あと何年キックをやれるんだろうと思うと、
毎日の練習を頑張れますし、試合もどんどん挑戦したい」
9月13日、東京・後楽園ホールで開催される「KNOCK OUT CHAMPIONSHIP.2」。当初、予定した同月12日の大田区総合体育館より、会場と日程が変更となり、第1部(昼12時開始)はBLACKルール(ヒジなしルール)の試合、第2部(夜18時開始)はREDルール(ヒジありルール)の試合という2部制でおこなわれる。
第2部の注目は「創世のタイガGRAND PRIX 61.5kg RED 初代王座決定トーナメント(創世のタイガGP)」。4人の現役チャンピオンが集結し、ワンナイトトーナメントでKNOCKOUT王者を決する。
新日本キックボクシング協会からは「神撃キッカー」重森陽太(伊原道場稲城支部)が参戦する。老舗の看板を背負い、プレッシャーの掛かる大一番をどんな思いで迎えるのか。
取材・撮影 茂田浩司
(プロフィール)
重森 陽太(しげもり・ようた)
1995年6月11日、東京都出身。伊原道場稲城支部所属
戦績:39戦31勝(17KO)3敗5分。身長181cm。
タイトル歴:日本バンタム級王者。日本フェザー級王者。WKBA世界ライト級王者。
5歳からキックを始め、16歳でプロデビュー。18歳で初戴冠。以降、階級を上げて3階級制覇を達成。
長身と長いリーチを活かした蹴り技を得意とするが「打ち合う時は打ち合う」好戦的スタイルで、昨年の翔・センチャイジム戦では「KNOCKOUT年間ベストバウト」と言われる激闘を展開して勝利した。
重森陽太は、常に笑顔を絶やさず、物腰柔らかで、相手を構えさせない人である。
「一応、ジムではトップなんですけど、小学生に『陽太君、いまゲームは何してるの?』って普通にため口をきかれますよ(笑)。夜中に荒野行動の招待が届いて、やんねえよ、って(笑)。そういうの、多いんですよねぇ」
普段は株式会社日本設計工業に勤務する会社員。兼業ファイター自体は珍しくないが、その多くがスポンサー企業にバックアップして貰う形の中、重森は異色の存在である。
「自分は普通に就職活動をして入社しました。合同説明会に行きまくって、エントリーシートを出して、面接を一次、二次、三次まで受けました」
就活の時はあえて一般の学生とは一線を画し、プロの格闘家の部分を全面に押し出す作戦を採った。
「普通の履歴書とは別に『キックボクサー・重森陽太』の履歴書を作成しました。何歳からキックをやっていて、こんなタイトルを獲ってきて、今はこんな状況です、とレポートにまとめて、会社に提出しました。大学(亜細亜大学)は一芸(一芸一能入試)で入ったんですけど、大学も企業も『オリンピック競技かどうか』は強く問われます。『オリンピックに入ってない競技』に対しては正直、厳しいです。なので、マイナースポーツというのを理解した上でのPRが必要になるんですね」
重森は、面接の場でこうアピールした。
「社長に『自分、キックボクシングをやっています。でも会社員になりたいんです。1度、試合を見に来て下さい』とお願いしました。それで、会場に試合を見に来ていただいて、採用が決まったんです」
社員の中には重森のようなプロスポーツ選手はおらず、会社側は特例として重森の『社員兼プロキックボクサー』の二刀流を応援してくれている。
「勤務時間はフルタイムではなくて、朝練、夜練の時間は確保して貰っていますし、平日に記者会見がある時も出勤扱いにして貰えます。今はコロナの影響でリモートですけど、週2で出社していますし、業務は忙しいですよ。
仕事は営業と人事の半々くらいですね。大学に行って学生さんに自社のPRをしたり。僕にとっては、しっかりと仕事のスキルを身に付けて経験を積みながら、キックボクサーとしての活動も続けられている。とてもいい環境でやらせて貰って感謝していますし、こういう環境を作れて満足しています」
とはいえ、会社員の日常業務とキックボクサーのハードトレーニングの両立は、言うほど簡単ではないはず。
重森の答えは明快だった。
「仕事とキックと、今は一杯一杯ですけど『あと何年くらいキックボクシングをやれるんだろう?』と思うと毎日頑張れますね。『寿命が分かった方がいいか、分からない方がいいか』というたとえ話がありますけど、キックは『分かってる寿命』ですよね。あと何年かしたら辞めることになると思うと、練習も頑張れますし、試合もどんどん挑戦していきたいです」
どんな質問にも丁寧に、分かりやすく、理路整然と答える重森。話が試合のことに及んでも、その語り口は変わらなかった。
昨年のKNOCKOUTの「ベストバウト」といえば、満場一致で重森陽太対翔(しょうた)・センチャイジム(昨年11月1日、後楽園ホール「KNOCK OUT 2019 BREAKING DAWN」)だろう。一進一退の攻防から、3Rに翔が先に2度のダウンを奪い、重森はあわやKO負け寸前まで追い込まれたが、冷静にカウンターのヒジでダウンを奪い返し、4Rに立て続けに2度のダウンを奪ってTKO勝ち。この「倒し倒され」の激闘に会場は興奮のるつぼと化し、試合の模様は「キックボクシングKNOCKOUT」(当時はTOKYO MXやBS日テレなどで放送。現在はYouTubeで定期放送)で繰り返し放送された。
試合映像 ↓
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「反響は大きかったですね。近所でも声を掛けられることが多くなりました(ニッコリ)。40戦近くやってきて、あまり倒されたことはないんですけど、あの試合で『倒されやすいイメージ』が良くも悪くも付いてしまって(苦笑)。ただ『重森は面白い試合をする』と期待していただけるようになったのをすごく感じますし、感謝しています」
激闘は、重森が事前にイメージした通りだったという。
「必然といえば必然だと思いますね。試合前に『相手の土俵で勝つ』と言いましたけど、パフォーマンスではなく、本気でそういう試合運びをしようと思っていて」
翔は「年内での引退」を公言しており「最初で最後のKNOCKOUT出場」に最高のモチベーション、最高のコンディションで臨んできた。重森も、翔の気合いを感じながらも引っかかるものもあったという。
「翔選手が試合前のインタビューで『噛み合わないと思う』と言ったんですよ。で、自分は翔選手は引退試合ですし『絶対に噛み合わせたい』と思ったんですね。だから『真っ向勝負をしたい』と思って、そこはかなり意識しました。『翔選手のやりたい試合をやろう』とキックをキャッチして蹴り合う展開でも、首相撲の展開でも『パンチで打ち合いがしたいんだろうな』と感じたらパンチで打ち合ってもいい、と。結果としてヒジの打ち合いになっちゃったんですけど」
重森には「戦いの美学」がある。
「勝負するところはしなければいけないし『ここは引けない』というところは絶対に引かないです。だから、試合後に『これだけテクニックを教えてるのに、なんで行くんだよ』ってよく怒られるんです(苦笑)」
試合中に「チャンスだ」と感じたら、躊躇なく踏み込んで攻勢を掛けるのが重森のスタイル。リスクを恐れないこの姿勢が、翔・センチャイジムとの名勝負を生み出した。
「自信、なのかもしれないですね。自分は試合中に焦ることがないんです。どんなに効いていても、切られても、頭の中では『あと何分』『あと何ラウンドある』と考えています。デビュー戦が5歳で、タイのラジャダムナンスタジアム(*ムエタイ二大殿堂の1つ)で初めて試合をしたのが小学3年生。その時はめちゃめちゃ緊張して、飛び込むような気持ちでしたよ。今は試合中も冷静ですけど、それは幼い頃からやってきて、戦歴を重ねて、経験がちょっとずつ大舞台で活きてきているのかな、と思います」
9月13日の「創世のタイガGRAND PRIX 61.5kg RED 初代王座決定トーナメント」について、重森は「楽しむ」と言い切った。
「勝負事で楽しむって、やっぱり実力がないといけないんですよ。だから『楽しい』と感じれない時は『俺、弱いんだな』と思ってまた頑張れるんです。
子供の頃から、毎試合、毎試合『どういう気持ちで試合に挑めばいいのか』を考えてきました。ちょっと野蛮な気持ちになるべきか、リラックスするべきなのか、とか。まだ明確な答えにはたどり着いていないですけど、今の時点では『試合前も、試合中も、楽しい、と思ってる時はいい動きが出来ている』というのが一番答えに近いと思ってます。
だから、創世のタイガGPも楽しむ。KNOCKOUTのトーナメントでは、55.5kgで先輩の(江幡)塁さんが優勝した時に『次は自分が獲ります』と意気込んで声を掛けて、塁さんに『頑張れ』と言って貰いました。僕がトーナメントを優勝して、伊原道場に2本目のベルトを持って帰ります。ぜひ、応援をよろしくお願いします」
(了)
「創世のタイガGRAND PRIX 61.5kg RED 初代王座決定トーナメント」
*REDルール(ヒジあり)、3分3R(延長1R)
○1回戦 小川翔(OISHI GYM)vs重森陽太(伊原道場稲城支部)
〇1回戦 スアレック・ルークカムイ(スタージス新宿)vs髙橋一眞(真門ジム)
〇決勝戦 1回戦の勝者同士が同日のメインイベントで戦い、勝者がKNOCKOUT61・5㎏RED初代王者となる。
〇リザーブファイト 古村匡平(FURUMURA-GYM)vs中沢良介(TRYHARD GYM)
「KNOCK OUT CHAMPIONSHIP.2」
2020年9月13日(日) 東京・後楽園ホール
第1部▷11:00開場/12:00 本戦開始
第2部▷17:00 開場/18:00 本戦開始
主催:株式会社Def Fellow
特別協賛:株式会社H・Tハウジング
協賛:株式会社講談社「創世のタイガ©森恒二」/マリオンアパレル株式会社/清水工業株式会社/浅井建設株式会社
*大会チケットは8月18日より発売!!
(詳細はKNOCKOUT公式ホームページへ)
大会の最新情報、チケット情報は、KNOCKOUT公式ホームページ
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