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徹夜明けにアイスクリーム 3
あまりにも唐突すぎる里井の発言だったが、ホームレスさんは驚く素振りすら見せず笑顔で答えた。
「そうですかお誕生日なのですね、それはめでたい。おめでとうございます。ではお祝いキャンペーン絶賛開催中ということで承りましょう。わがままを言わせていただければセットのドリンクはエスプレッソにしてくださいね」
交渉成立。徹夜明けの中年とギャル?&ホームレスおじさんからなる奇妙なチームが向かったのは東京近郊の若い衆で混雑する代官山とは反対側。プライムスクエアのフレッシュネスバーガーだ。マスコミ戦略で大混雑するラーメン屋の隣。通りには袖ヶ浦や大宮などの路駐も見えるが、それなりに景色は悪くない。気分がいいからオニオンリングもプラスしてあげよう。
「いつ分かったの」?テイクアウトの袋を確保するとすぐにホームレスいやあいつは質問を投げかけた。もちろん俺に向けられたものだ。
「視線、それからその仕草かな」
何!!何!!里井の眼が俺とホームレスの間を瞬時に行き来する。器用なもんだ。普通は頭も一緒に動くものだが、文字通り眼球だけ動かしてやがる。
「研鑽が足りないんですよ、いくつになっても先輩は。ネッ今田さん」
ホームレスいや今田氏は苦笑しながらも答えた
「この街で、お兄さんに会うとはね。そのケースは想定してなかったよ」
「でもさ、それほどバッドっこともないんじゃないの」
「なるほど、いい出会いかもしれない。・・・ともいう」
20年数前の初夏から年末に掛けて、俺はある事情から肉体労働従事者として、健康的な労働に勤しむ日々を過ごしていた。
その現場には、元ヴァンジャケット社員、元某ブランド店長、元なんたらかんたらのプレス。やたら当時人気だったDCブランドの社名が多いメンバーが集まっていた。(DCブランド!死語だね)
まっ、そんな奴らがスピンアウトしてしまうようだから、後年アパレル業界に面白みが無くなったとも言えるが。
今の売れ筋のアパレルといったら、小ロット、短期売りきりのパクリ商品と浪漫のないユニクロ風か高級ブランドの両極端。まったく、俺の着たい服はいったいどこにあるんだ。
やめよう、ここで典型的なメタボリックシンドロームオヤジが嘆きの声をあげたところで事態は何も良い方向へ向かうことはない。時代は常に流動しているのだ。
それよりも、今は自分の興味を満たすこと。もちろん旧交を温めるという目的もないではないが。