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夏の入口、真冬の記憶 2

夏の入口ってタイトルで、なぜ冬の話?。そう言いたいの。じゃあさ「これはねボクがニュージーランドに住んでいた時の話だよ。だから空に輝いていたのは北極星じゃなくて、南十字星なのよ」って言ったらどうする。もちろんウソだけどね。とにかく後ろの方に真冬の記憶ってあるからいいじゃないか。順番が逆?あんたもシツコイねぇ。まぁそのへんのことはおいおいとってことで。

さっきの雪の話じゃないが、夜ってありえないような体験をさせてくれる時間だと思わないかい。「思わない」あ〜ぁそう言う。なら、この先はなしだ。ここで読むのをやめて、どこかでカラオケでも楽しんで帰るといいよ。明日になったらまたいつもと同じ一日が始まるだろう。だが、これ以上話を聞きたいなら、明日のことは保証できない。さぁどうする。

なぜこんなに話が面倒になったのかは未だにわからない。ただ、ボクとしてはジンの代わりに、ウォッカやラム、芋焼酎、アラック、テキーラ。とまあ、いろんな蒸留酒ベースのマティーニをお願いしただけなのだが。
今から思うとお願いしただけってのはないよな、ない絶対にない。

「だからぁ飲み過ぎですって。これ以上はもうダメですよ。急性アルコール中毒って知ってるよね」
「ほ〜ん、旧姓アルコール中毒ね。どこの国の人だって。変な名字。どうでもいいけど」
こうなるとオレの中で祖父譲りの頑固者の血が騒ぎだす。シツコイってだけ。あぁそうとも言うな。カウンターの中の人との不毛なやり取りが続く中で、突然オレサイドの味方が現れた。

「なぁ井出くん。ここまで言うんだ。この兄ちゃんにも事情があるんだろ。飲ませてあげなよ」
なんとありがたいお言葉。そうだとも井出くん。あぁ余計なことかもしれないが、井出くんっていうのはカウンターの中の人の名前らしい。
「佐野さんたらもう、またですか」
「そうだまただよ。スタッフドアイズでいいだろ。私のおごりだ。兄ちゃん飲んでくれ」
お〜ぉなんて優しい人だ。

「じゃ、そのスタッフドアイスだっけ。それお願い。あっごめんなさい。ごちそうになります」
まったく我ながら意地汚いもんだよ。佐野氏へのお礼もそこそこに心は次なる一杯へと向かっていた。
「あのねスタッフドアイスじゃないの。スタッフドアイズなの」
stuffed iceとstuffed eyes。言われてみれば確かに違うな、けどそんなことはどうでも良かったので無視することにした。
「氷入りでも、目ん玉入でもいいからとにかく頂戴」

以下次回へと続きます。

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