Kojirocks

人道支援を生活の糧にしています。専門は人道支援とジェンダー、平和構築、紛争予防など。国際人道基準の国内への適用、ポストコロニアル思想などにも関心があります。今まで住んできた国はラオス、パキスタン、タイ、ミャンマー、バングラデシュなど。

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最近の記事

ダッカに戻ってからの10日間

前回の日記を書いた後、インターネットのアクセスも徐々に回復し、事態は落ち着く方向に進むのかと思っていたが、一度燃え上がった怒りの炎は簡単に断ち消えることはなかった。 もともとは公務員のクォーター制度に反対する学生運動から始まった抗議活動であったが、次第に焦点は警察による学生デモに対する暴力へとシフトしていった。正確な数は誰も把握できていないというが、少なくとも数百人の死者が出たと報道されている。ますまず酷くなる国家権力の濫用に抗議する人々は、学生から大学の教員、学生の両親、

    • 2024年7月29日 久しぶりのダッカ

      ビーマン・バングラデシュ航空377便は、ほぼ定刻通りの午後3時半過ぎに、ダッカにあるハズラット・シャージャラール国際空港に到着した。2024年7月29日のことだ。バングラデシュでは、全土に広がった学生デモを抑制するために、7月19日より外出禁止令が発令されていた。同日の夜からは、インターネットも全土で遮断されており、治安部隊と学生デモの衝突のもと、数多くの若者の命が失われたことも報道されていた。このようなタイミングでバングラデシュに渡航する人は少ないだろうと推測していたものの

      • #5 ベトナム旅行記2024:これからホーチミンを訪れるなら + フーッコク島

        今回のベトナム旅行は2部に分かれていて、第1部は友人と合流してのホーチミン観光、第2部はソロトラベルとしてのフーコック島訪問。通算6回目?のベトナム訪問となるけれど、過去の訪問に比べてかなりのんびりして充実した旅行となった。 ホーチミンに滞在したのは合計4日間。朝早くに到着して、5日目の朝の便でフーコックに移動したので、まるまる4日間をホーチミンで過ごしたことになる。当初はホーチミン発の定番のツアーであるメコンデルタクルーズに1日参加することも考えたけれど、真夏の暑い日々を

        • #4 ベトナム旅行記2024 旧植民地ツーリズム

          ラオスにしろカンボジアにしろ、近年の旧フランス領インドシナの国々は、観光戦略に長けていて、「旧フランス植民地」ブランドをうまく活用して魅力的な街づくりを進めている。ユネスコが力を入れたラオスの世界遺産ルアンプラバンはもちろんのこと、カンボジアのプノンペン、カンポットなどもフレンチコロニアルスタイルを意識つつ、街が綺麗に整備されている。ハノイでは植民地主義の名残りが観光資源として活用されていた記憶はあまりなかったけれど、ホーチミンは植民地主義とベトナム戦争の記憶が街の観光の至る

          #3 ベトナム旅行記2024:戦争と植民地の記憶

          4月のホーチミンはとても暑くて、見慣れない景色を観察しながら街を歩くのはとても楽しいのだけど、強烈な日差しを受け、汗が止まらないまま歩き続けるのは老いつつある自分としてはかなり厳しかった。とはいえ、大陸の東南アジアの夏は、空気がカラッとしていて、どことなく能天気な開放感があり、その暑さが気持ちいい。ラマダン中のバングラデシュとは大違いだ。 今回のベトナム訪問のコンセプトは、「ラマダン明けで全てが停止するバングラデシュと、水かけ祭りに狂乱する東南アジアを避け、アジアの夏をのん

          #3 ベトナム旅行記2024:戦争と植民地の記憶

          ベトナム旅行記2024:久しぶりのホーチミン訪問

          初めてベトナムに来たのは1995年8月だった。もう30年近くの前のことになる。大学生になって挑戦した人生初の海外旅行で、バンコクからチケットを買って、ホーチミンに向かった。旅日記など書いていなかったので、当時の記憶は酷く曖昧だ。街の中心部には国営デパートのみがあったこと、ホーチミンは障害がある人で溢れていたこと、街角のスピーカーからはプロパガンダらしき放送が大音量で流れていたことなどを朧げに覚えている。 ホーチミンでは、ホーチミンのカオサンことファングーラオ通りの安宿に泊ま

          ベトナム旅行記2024:久しぶりのホーチミン訪問

          #1 世界をもっとクイアに

          気づいたら2024年も4月中旬に達しようとしていて、新年の抱負の進捗具合はいかがなものですかという声も聞こえる今日この頃。年始の年が明けたばかり頃はどうにもやる気に溢れていて、今年はもっと映画をみる、本を読む、行ったことのない国を訪れるなど、いろいろ目標を掲げては見たもののイマイチどれもパッとしなくて、昨年と変わらない日々が続いている。 そういえば、年が明ける前のクリスマスの頃は、ウクライナやパレスチナ情勢もあり、来年こそは世界平和を祈るメッセージが友人たちの間でも行き交っ

          #1 世界をもっとクイアに

          「Codaあいのうた」と社会的包摂

          近年、援助業界で働いている人たちにとって、「社会的包摂」とは避けては通れない基本的な概念の1つだ。日本語としてこの言葉はあまり定着していない気もするけれど、英語のSocial Inclusionの日本語訳が「社会的包摂」であり、社会的に排除されていた人々が社会活動に参加できるようになるためのアクセスの改善および参加の推奨を指す言葉だ。昨今ではLGBTIQ+など性的少数者の包摂を指す意味合いも強くなってきたけれど、もともと社会的包摂は障害のある人への「配慮」を示す意味合いが強か

          「Codaあいのうた」と社会的包摂

          ウクライナ危機のために私たちができること。

          ウクライナ国内の状況が急変してから、すでに2週間が経ちました。OHCHR(国連人権高等弁務官 - UNHCRとは違う)によると、2月24日から3月8日の間に、1,424人の民間人が巻き込まれており、そのうち少なくとも516人の命が奪われています。UNHCRはすでに200万人が避難民として隣国およびその他の国々に逃れたことを報告し、ウクライナの人道カントリーチーム(国連とNGOからなる人道危機対応チーム)は、国内で1,200万人が人道支援が必要な状況に追いやられていると見積もっ

          ウクライナ危機のために私たちができること。

          戦争や紛争について子どもと話す時に気を付けること。

          NHKのアカウントから「ウクライナ情勢 子どもにどう伝える 接し方や注意点を専門家に聞く」という記事が流れてきて、読んでみたらなかなかプラクティカルで良いじゃないですか。戦争みたいに難しくて複雑な事象を多感な子どもたちとどのように話すのか。実は、いろんな組織、メディアが有益な情報をを提供しています。 NHKの記事に協力しているのは、世界中で子ども支援を行っている国際NGOのセーブ・ザ・チルドレン。海外のみならず日本国内でも活動するセーブ・ザ・チルドレンは、日本国内で災害が発

          戦争や紛争について子どもと話す時に気を付けること。

          ウクライナ危機の寄付先検討リスト

          ウクライナが大変なことになっている。現状のウクライナ危機の取り上げられ方には言いたいことも少しあるけれど、人々が関心を寄せていること自体は悪いことではない。そして、日本にいながらも積極的に何かをしたいという人もいる様子。友人たちにもどこに寄付したらいいのか尋ねられたので少しまとめてみました。 国際NGO  攻撃が始まったばかりの頃に比べて、多くの団体が支援を表明し、募金を始めています。日系の大手だったらピースウィンズジャパンとかAARジャパン (難民を助ける会)とかは、周

          ウクライナ危機の寄付先検討リスト

          最近読んだ面白かった本:アンチ・アクション by 中嶋泉

          ずっと読もうと思ってなかなか手を付けることができていなかった本を、夏休みに箱根でようやく読んだ。おこもりステイをしながら温泉で読んでいたのだが、想像していた以上に刺激的で面白くて、なぜもっと早くに読まなかったのかいまさら悔やんだ。その本の名前は「アンチ・アクション 日本戦後絵画と女性画家」。著者は大阪大学で美術史を教えている中嶋泉氏。今年のサントリー学芸賞を受賞した本だ。 美術史に関しては、全くをもって門外漢なもので、本書を読みながら、これが美術史の文章なのか!と、ごく基礎

          最近読んだ面白かった本:アンチ・アクション by 中嶋泉

          とても重要な予期せぬ妊娠のこと。

          最近では、毎日のようにLGBTという言葉をメディアでは見かけるし、さまざまな人による性の多様性と包摂を社会に訴えるメッセージも聞こえてくるようになった。性のことを話す機会は昔より増えていると思うし、そのような話題が耳に入ってくる機会も圧倒的に増加した。それでも多くの人が話したがらない性に関連する話題の1つに中絶があると思う。 そんなことを思ったのは、昼ご飯を作るときにかけていたポッドキャストを聞いていた時のこと。 荻上チキ Session 特集「アフターピルはなぜ普及しな

          とても重要な予期せぬ妊娠のこと。

          ミャンマーで続く反軍政デモ

          写真:David Naung Naung、2/15/2021投稿(https://www.facebook.com/david.naungnaung.9/posts/1139578686495067) 前回の記事で触れた、市民によるデモや鍋叩きを通した抗議はミャンマー全土で引き続き行われている。より多くの人々を巻き込み、平和的な抗議が続く一方で、軍部の不穏な動きも報告され始めた。 夜間に住宅地で発生している民間人の逮捕や拘束。 突如恩赦が決定された2万3千人以上の受

          ミャンマーで続く反軍政デモ

          ミャンマーが燃えている。

          ミャンマーが燃えている。暗黒の時代には二度と戻りたくないと、ミャンマー全土で無数の人々が抗議の声をあげている。 今でこそ観光を目的としてミャンマーを訪れる人は増えたが、つい10年ほど前までは、ミャンマーは外部に閉ざされた国だった。近年は東南アジア最後のフロンティアとしてもてはやされ、商機を追って世界中からミャンマーにやってくる人も増加した。しかし、軍部が引き起こした今回のクーデターは、ミャンマーの政治的状況がいかに不安定であったかを国際社会に再確認させることとなった。 ミ

          ミャンマーが燃えている。