相棒はV ~受肉したVアバターで殴り合う~②
シキの大剣を剣で受けた骸骨がノックバックする。
戸苅「な、なんでブラックダイヤモンドが……!?」
戸苅は激しい焦りの表情を浮かべる。
メタバースで活躍したVに付与される紋章。
下から
・シルバー
・ゴールド
・プラチナ
・カラーダイヤモンド
・ダイヤモンド
戸苅(いくつかあるカラーダイヤモンドの中でも7人しかいないとされるブラックダイヤモンドの一人が空気くんだと?)
空はシキの姿で不敵な笑みを浮かべ、仁王立ちする。
※仮面は鼻から上のタイプで、口元は視える
……のだが、シキの姿が消えて、空の姿に戻ってしまう。
空「って、あれぇ……?」
今度は空が焦る。
空「し、シキさーん」
シキからの返事はない。
空(も、もしかして、シキってめちゃくちゃ燃費が悪い!?)
戸苅「……ふ……はっはっはっ」
空「……?」
戸苅(……俺は馬鹿だ。見間違い。見間違いだ。よく考えれば当たり前だ。こんな奴がブラックダイヤモンドなはずない)
戸苅「ドクロ! やるぞ!」
これまで数メートル程離れていた戸苅と骸骨が重なるように一体化する。
※次第に人間(戸苅)の方の姿は不可視となる。
空(っ!?)
骸骨のオーラ(覇気)が強くなる描画。
骸骨「行くぜ、おらぁああ!!」
骸骨が突撃してくる。
空(マジかぁああああ!)
空は骸骨の剣を必死に避ける。
骸骨「くらいやがれ……! "カオス・ソード"!!」
空「っ……!」
骸骨の剣がオーラをまとい、空に向けて叩きつける。
空は辛うじてそれを回避し、必死で距離を取る。
骸骨「ちょこまかと……ゴキブリか?」
その時であった。
シキ『おい……貴様……』
空「っ……! シキ! 復活できたのか?」
シキ『いや、俺様の身体の具現化を維持できるまではもう少し時間を要する』
空「なるほど……」
空(だが、この状況、そんな悠長に待ってられねえぞ……)
空は思考する。そして……
空「だったらよ、シキ……」
シキ『ん……?』
……
空「うぉおおおおおおおお!!」
空が骸骨に突進する。
骸骨「はははっ、気でも狂ったか!!」
骸骨は高笑いしながら、剣を構え、返り討ちにしようとする。
だが……
骸骨「へ?」
骸骨は大剣で叩き潰される。
※肩口の辺りから大きく損傷
骸骨「っっっあばっ……あばばっ」
シキ(空……考えたな……)
空(回想)「身体の具現化を維持できないなら、一瞬だけ具現化ならできるか?」
【シキは攻撃の際の一瞬だけ、シキの姿となり、その圧倒的な力でもって、戸苅を一撃で仕留めたのである】
戸苅は、まだ意識はある。
尻餅をつき、ひゅーひゅーと呼吸し、迫り来る空を恐怖の目で見上げる。
空が腕を振り上げる。
そしてシキの姿へと代わり、冷酷に骸骨を見下ろす。
骸骨「やめ゛……ごめ゛んなさい……空気くん……いや、木村くん、やめ゛てくれる゛よね?」
空(シキの姿)「……」
空は一瞬、手を止める。と……、
シキ『おい、貴様……敵に慈悲など与えるな』
空(シキの姿)「……わかってるよ」
空(シキの姿)は構え直す。
骸骨「ひっ……」
骸骨はシキの目を直視する。目からは邪悪なオーラが溢れている。
骸骨「っっ……! やめてくれたら……ほら……とも゛……ともだちになってあげ……」
空(シキの姿)は大剣を振り降ろす。
骸骨「い、いや゛ぁああ゛あああ゛ああ……」
ゴシャ
骸骨から魂のようなものが抜ける描画の後、戸苅が倒れている描画。
"No.077がNo.017を倒しました"
空「はぁ……はぁ……」
緊張から解き放たれて空は肩で息をする。
空(あれ……? 倒す直前、対象のシキに関する記憶を奪う〝邪気眼〟が発動していたような……)
空がそんなことを考えている、と……
シキ『おい、貴様……!』
頭の中でシキが強い語気で言う。
空「……! な、なに……」
シキ『…………問題はないか?』
空「…………へ?」
シキ『だ、だから怪我や身体の不具合はないかと聞いている……!』
空「……!」
空(もしかして心配してくれてる?)
空「……あ、ありがとう、大丈夫だよ」
シキ『そうか、ならいい……』
少し照れくさそうにするシキであった。
◇
※カラオケBOXに移動。
シキ「おぉ! 離れられたぞ!」
空「うっひょー! 本当に入金されてるー!」
空とシキの身体が分離している。
距離は1メートル程。
シキ「だが、どうやらまだこれ以上は離れられないようだな。忌々しい……」
シキは嫌そうな顔をしている。
空(なるほど……Vからすると中の人から離れて自由になることが戦うことのモチベーションになっていそうだな)
空「シキ、よければ、お互いに持っている情報を出し合おう」
シキ「お? おう?」
【空はシキが持っている情報を聞いた】
【Vから言えることは、〝別の参加者を倒すと中の人から離れられる距離が延びること〟くらいであるらしい】
空
(〝Vから言えること〟っていう言い回しがどうにも引っ掛かるな……)
(Vには他にも何かしらの〝目的〟があり、それを秘匿しないといけないのだろうか……)
などと考えていると……、
シキ「なんとなくだが、感覚的に感じることがある」
空「なに?」
シキ「極めて忌々しいのだが、貴様から離れる程に力が発揮できなくなることだ」
空「……! なるほど。中の人がVの燃料のようになっているのだろうか……」
空(要するに、もっともVの力を発揮できるのがゼロ距離。一体化している時ってことか)
空「しかし、困ったな……」
シキ「どうした、僕よ」
空(俺、シキの僕扱いなのか……? まぁ、いいや)
空「自宅がエリア外になっちまって、家に帰れない」
◇
街へ。
一人、街を歩いている空。
シキ『ここはどこだ?』
シキは空の頭の中で、姿は消している。
空「街だね」
空(母さんにはしばらく友達の家に泊まるって伝えた)
~軽い回想~
空母(回想)「友達ってくりゅう君の家?」
空(回想)「いや、違……」
空母(回想)「は? あんた、くりゅう君とぴゅあちゃんしか友達なんかいないでしょ?」
空(回想)「いいから、いいから! とにかくしばらく家には帰れないから! 連絡は定期的にするから!」
空母(回想)「ちょ! あんた、変な事件に巻き込まれてるんじゃ」
プチっ(通話を切った)
~回想終了~
空、思い出して、苦笑い気味。
空(良く考えると、自宅にいたら母さんを巻き込んじまうかもしれない。これでよかったのかもな……)
空(まぁ、一週間生き残れば勝者らしいし、言う程、長いわけでもない)
空(うむ……それにしても、やはりシキには姿を消してもらっていた方が燃費を抑えられるかな……)
空(幸いにして金はある。ホテルとかでなんとか過ごそう)
と……
ぐぅうう
空「……!」
空の腹の音がなる。
シキ『……なんだ貴様、腹が減っているのか?』
空「え……? そ、そうみたい……」
シキ『ふむ……』
◇
空「旨い……旨過ぎる……!」
@宿 ホテル(ベッドは一つ、キッチンがある)
空は驚きながら、麺のようなものをすする。
テーブル上には美味しそうな料理が数点並んでいる。
シキ「そんな騒ぎ立てるほどかよ……」
対面で座っているシキは少し呆れている。
空「まさか、シキがこんなに料理が上手だったなんて……」
空(俺が演じていた人格がシキの人格になっているようだけど、料理上手なんて属性、盛ったっけな?)
シキ「ふ、普通だろ……」
シキも食べる。(ツンデレ)
シキ「ま、しばらくはここを拠点にするか(禁止領域も遠いし)」
空「そうだね(キッチン付きの宿あんまないし)」
~
空「……」
空はベッドで仰向けになっている。しかし、眠れないのか目は空いている。
シキは窓際に胡坐で座って、外を眺めている。
空
(さて……明日からガンガン倒していくか)
(15万円は大きいが、俺の夢であるFIREをするには全然足りない)
(仮に負けても今のVが使えなくなるだけ)
(実質、デメリットほとんどゼロなのだから……ガンガン……)
空「……」
空はふと複雑な表情になり、外を眺めているシキを見る。
空(デメリットは……ゼロか?)
◇
翌朝――
空「ふぁああ」
空はベッドの上で背伸びする。
空(一晩、眠ってわかったこと)
空(眠ると、〝燃費〟がめっちゃ回復する)
シキ「今の状態なら、しばらくは俺様の具現化を維持できそうだ」
空「なるほど……! それはよかった」
空は少しほっとする。
空
(さて、早速、活動を開始するか……)
(そう言えば、くりゅうは大丈夫だろうか……)
空はふと、同じようにこの戦いに参加させられているであろう友人の顔を思い浮かべる。
シキ「空……」
空「っ……!」
霊体→実体化したシキが真剣めな表情で話しかける。
シキ「近いぞ。それも2ペアだ」
空「……!」
空は息をのむ。
◇
???「はぁ……はぁ……」
可愛らしい女性※が息を荒げながら何かから逃げる描画。(路地裏)
※神官風の佇まい。160cmくらい、銀髪ロング、少し褐色肌、耳が尖っている。
それを追うモンスター※の描画。
※シロクマ男、250cmくらい。二足歩行。凶暴そうなシロクマが鎧で武装している。
神官「きゃっ……!」
神官、つまずく。
そして、ついにシロクマ男により壁際に追い詰められる。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?