相棒はV ~受肉したVアバターで殴り合う~


●あらすじ

時はメタバース元年。
お好みのアバターとなり、メタバース上での活動が大流行。
アイドルアバター(通称、ドルバタ)などという概念も登場していた。
そんなメタバースにおいて、金銭を対価にどんな案件でも引き受ける〝傭兵〟のようなことをしていた高校生(木村 空)がいた。
空の夢は、高校卒業と共にFIREすること。夢のない夢などと言われても本人は本気だった。

そんなある日、突如、現実世界で自分のアバターと共に戦うサバイバルゲームが開催される(人は死なないタイプ)。

賞金も出るということで、空は俄然やる気になっていた。
でも、自分のアバターと共に戦うってどういうこと?

●補足

ネタバレ設定や作品コンセプトの補足は下記のリンクに記載します。
(まっさらな気持ちで読みたい方もいるかもしれないので……)
補足の先読みは非推奨です。

また、あくまでも参考ですが、本作はWorldMakerでネーム作成しています。
ページ下部にリンクを貼っております。

●本文

女の子「はぁ……はぁ……」

女の子が息を荒げながら走っている。頭には獣耳。
可愛らしいピンクのドレスの衣装に身を包んでいる。

※場所はFF10やSF作品の明るい雰囲気の空想未来都市のイメージ。

女の子は何かから逃げるように、路地裏へ。

だが、角を曲がったところで、仮面を被った男が仁王立ちしている。
※仮面は目元を隠すタイプで口元は見える。

女の子「くっ……!」

女の子はきびすを返すように、引き返し、必死で走る。

仮面男「俺様から逃げられると思っているのか?」

仮面男は歩いて女を追跡する。

女の子「あっ……!」

女の子は不運にも行き止まりに入り込んでしまう。
急いで引き返そうとするが……仮面男が現れる。

仮面男「……観念するんだな」

そう言いながら、仮面男は迫り来る。その時であった。

???「待て……!」

騎士風の男が頭上から現れる。

仮面男「ん……?」

女の子「あ、あなたは……!」

騎士風「僕は名もなきあなたのファンですよ……」

騎士は自分の胸にある金メダルのようなマークを指差す。

女の子「ご、ゴールド……」

それを見てか、女の子はほっとするような顔を見せる。

騎士風「ニャナちゃん、大丈夫ですか?」

ニャナ「は、はい……」

騎士風「ここは自分に任せ……ぺぶ」

ニャナ「え……?」

騎士風の男は殴り飛ばされて、壁に激突する。そして、サラサラと消滅していく。

仮面男「……邪魔」

仮面男は見下すようにそれを見る。そして……

仮面男「貴様もな……猫又ニャナちゃん」

仮面男の胸にある黒いダイヤの紋章が目に入る。

ニャナ「ぶ、ブラックダイヤモンド……? 貴方まさか……七人の黒ブラック・セブンの最後の謎の人……」

仮面の奥の眼光が邪悪に光る。

仮面男「……俺を忘れろ」

ニャナ「え……?」

そう言うと、仮面男は大剣を取り出す。
※ワープエフェクトと共に、無空間から出現するイメージ。

女の子はガタガタと震える。

ニャナ「い、いやぁああああああ!」

実際に危害を加えるシーンはカットするが、サラサラと消滅するエフェクト。

仮面男「ふぅ……」

と、仮面男は仮面を外し、端末を取り出し、耳に当てる。
※仮面男の容姿。
 金髪に二本の角。目つきが悪い。
 黒い軍服のような装い。

仮面男「あ、どうも、依頼完了しました。入金よろしくです」

と言って、端末を閉じる。

仮面男
「猫又ニャナ、どこぞの事務所に所属してる登録者数30万だかのアイドルV(通称、ドルV)か……」
「ったく、ライバルVの暗殺依頼とか……あっちの界隈もドロドロしてんなぁ……」
「まぁ、デスペナルティは一週間のログイン禁止だけだけど……」
「おっ……?」

入金の通知があり、残高のようなものを確認する。

仮面男「おいおい、チップもなしか? しけてんなぁ……」

仮面男はがっかりする。

仮面男「まぁいい、戻るか……」

仮面男がメニューを弄る描画。

"ログアウトしますか?"と表示され、"はい"を選択する描画。

ベッドの上で、少年がヘッドマウントディスプレイを外す。
※少年は中肉中背の黒髪男子。顔は割と良いが、目に覇気がない。

【時は、203X年、またの名を"メタバース元年"――】

【オリジナルのバーチャルアバター(通称、V)で、メタバースの世界を楽しめる】

【この少年……木村きむら そら(17・高二)もその一人】

【なのだが、金銭を対価にどんな案件でも引き受ける〝傭兵〟のようなことをしていた】
【ついでになぜか俺様キャラを演じていた】

空母そらはは「空~、今日は学校行きなさいよーー!」

空母そらははが部屋を開けて、そんなことを言う。
無気力そうに寝ていた空はそちらに顔を向ける。

空「うーん、今日は自主休校に……」

空母「今日はって最近ずっと行ってないでしょ! 今日は学校行きなさいよ。実力テストでしょ!」

空「……はい」

空(うへぇ、行きたくねぇ……)

とぼとぼ登校する描画。

【空は半不登校であった】
【テストの日など、稀に母親に尻を叩かれ登校する】

空(気まずい……)

クラスで着席する空。
クラスメイトがちらちら見る描画。
「あの人、誰?」 とか 「ほら、空気くんでしょ」 とか言われてる。

空(そりゃあまぁ、時々しか来なけりゃそうだよな……)

気まずそうな表情。 
 ↓
シリアスな表情。


(俺だって別に学校が意味ないとは思わない)
(だがよ、それ以上にメタバースの世界は〝魅力的〟すぎる)
(なんなんだよ、あの世界は……)
(広い! 楽しい! 何でもできる!)
(そして、なにより、何者にでもなれる)
(だからあそこには何者かになりたい奴がたくさんいる!)

(そして俺には〝夢〟がある)
(俺は絶対、メタバースの世界で金を溜めて、高校卒業後は……)

空「FIREしてぇ……」

空は、ぼそりと呟く。

FIREとは、「Financial Independence, Retire Early」の略。
資産運用で生活費をある程度確保できる仕組みを作ったところで、早期に仕事をリタイアするライフスタイルのことである。

女の子「あ! 空? 本物!?」

空「っ……!」

空、少し驚く表情 → めんどくさそうな表情。

ギャル登場。
黒い肩位までのミディアムヘア。
内側だけ赤紫(インナーカラー)スレンダー。
制服を着崩しており、少しだけ胸の谷間がちらつく。
首にはチョーカー。生意気そうだけど可愛らしい顔。

女の子
「って、学生にして、仕事する前からFIREしたいとか言ってるのは空しかいないか」
「全く……意識が高いのやら低いのやら……」

空「夢があるだけいいだろ!」

女の子「夢がなさ過ぎる夢すぎ!」

女の子は呆れ顔をしている。

空(こいつは幼馴染の高橋たかはし ぴゅあだ)

純「あれ? ちょっと待って……! 空が来てるってことは、今日はもしかして……テスト!?」

空「そうだけど……」

純「やばっ! 来週だと思ってた!」

空(マジかよ……)

純「うわぁあ! やばい! 終わった……」

半泣きする純。

空「ところで、ぴゅ……高橋、なんでチョーカーなんかつけてんだよ……(前に見た時はつけてなかっただろ)」

純「え? えーとね……昨日見た漫画でオタクくんに優しいギャルがつけてた!」

空「は……?」

純「だから、オタクくんに優しいギャルだって! 私、優しいでしょ?」

空「人工物やんけ……」

純「へ……?」

空「ああいうのは、無自覚でやるから意味があんだよ(それに俺はオタクじゃねえ)」

純「へぇ~、そういうものなんだ~(いや、空はオタクでしょ)」

純「あ、話変わるけど、私、実はさ……」

なぜか少し赤面する純。

空「……?」

と、そこへ、

???「おっ? 誰かと思えば空気くんじゃん」

空・純「っ!?」

ガラの悪い体格のいい男子生徒登場。
戸苅とがり 将人まさと

純「ちょっと!」

純は戸苅に何か抗議しようとする。

空「高橋、いいって」

純「っ……!」

空「戸苅くん、なんか用?」

戸苅「いやいや、せっかく珍獣を見つけたから観察しようかと思って」

空(……純と話してたのが気に食わなかっただけだろ?(見た目がいいからな……))

空「高橋、席に戻りな」

純「え……?」

空「ほら、そろそろホームルーム始まるから」

純「……わ、わかった」

純は少し心配そうに去っていく。

空「それで、観察して何か新しい発見はあった?」

空は戸苅に言う。

戸苅「そうだな……空気は意外とイキり症っと……」

戸苅はメモを取るような仕草をして嘲笑しながら、去っていく。

空(こんなことに時間使って……生産性のない奴だな……)

キーンコーンカーンコーン

【放課後――】

空(やっと終わったか……帰ろ)

空がクラスから出る描画。空を目で追う純の描画。

空(いや、一応、あいつだけは会っておくか)

空「よっ……!」

空はちょっと恰幅のよい背中の肩を叩く。※廊下

???「ひっ……」

背中はびくりと驚き、振り返る。

???「おぉー……? な、なんだ木村氏か、リアルで会うのは1億年ぶりでござるな」

織田おだ 久隆くりゅう
少し太っている。優しそうな糸目。

空「一億年ぶりって……」

空は苦笑いする。

【くりゅうは空の唯一の友達であった】

くりゅう「昨日はログインできなくて、すまなかったでござる」

空「いや、別に大丈夫だって(やばめの案件してたし)」

くりゅう「最近、親が受験勉強しろってうるさくて……」

空「……そうだよな」

空は少し寂しそうな表情。

空「まぁ、息抜きしたくなったら、一緒にやろうぜ」

くりょう「ういでござる」

???「おいっ、豚くん」

後ろから声を掛けられる。

空「……?」
くりゅう「ひっ……」

振り返ると、ガラの悪い体格のいい3人の男。(先ほどの戸苅を含む)

戸苅「あれ? 空気くんもいるじゃん」

空「っ……行くぞ、くりゅう」

空は不愉快そうにしながら、くりゅうと去ろうとする。

男C「おい、ちょっと待てよ」

空「……!?」

戸苅「豚くんさ、今週の友達料、まだだよね?」

くりゅう「っ……」

空(……友達料?)

戸苅「ほら、僕たちって友達じゃん? だから、ね……?」
男B「いいじゃんいいじゃん、豚くんち、裕福なんだしさー」
男C「そうそう、みんな平等に幸せになるべきなんだよ」

くりゅう「っ……」

くりゅうは唇を噛みしめるような表情。

くりゅう「……はい」

空「っ……!」

くりゅうはスマホを弄り始める。
※電子マネーの送る機能を準備する。他の奴らは見て見ぬふりをしてる描画。

空「おい、やめろよ」

くりゅう「……これが一番、穏便だから」

空「……っ! お前……いいのかよ……それで……」

くりゅうは震える。

くりゅう「………いいわけないよ……親が汗水垂らして稼いでくれたお金を……僕は……」

くりゅうはうつむき、絶望の表情を浮かべる。

空「っ……!」

空は唇を嚙みしめる。

小学生の時に空がくりゅうの家を訪問した時の描画。
優しそうなくりゅうの両親。裕福さを感じさせる室内や装い。

空「……お前の親はお前が身を守るために使っているなら許してくれるさ……だが、くりゅう、〝金〟は大事にしないとな」

くりゅう「っ……!」

戸苅「おい! もたもたしてねえで、さっさとやれよ!」

くりゅうはびくりとする。

が……

戸苅「……なんのつもりだ」

空が間に入る。

空「やらせない」

くりゅう「木村氏……」

戸苅「あん? やらせないって、どういう意味だ?」

空「そのままの意味だ」

戸苅「空気くん、君が払ってくれてもいいんだよ?」

空「ふざけんな。俺の夢のFIREのための軍資金。一円たりともお前らクズにはやれるか」

戸苅
「あん? 何言ってんだ? てめぇ……俺たちがやらないと思ってんだろ?」
「舐めんなよ、陰キャ不登校野郎が……!」

拳を振り上げる戸苅。

……

ボコボコにされた空。倒れている。

くりゅう「木村氏……もういいって……!」

くりゅうに言われるが、空は立ち上がる。

戸苅「まだやんのか? 雑魚が……」

空「あぁ……」

空(やべぇ……フラフラする……)

空「だいたいよぉ、こんな陰キャ相手に3人って……だっせぇな……」

戸苅「っ……! 言うじゃねえか! ギリギリ手加減してやってたが、キれちまった。マジでぶっ殺すから覚悟しろよ……!」

戸苅が拳を振り上げる。

が、戸苅の拳を誰かが止める描画。

???「それ以上はやめなよ……」

空が驚くような描画。

イケメンが戸苅の拳を止めていた。
イケメン、高身長、明るめの短髪ゆるウェーブ。

戸苅「ちっ……わーかったよ……覚えとけよ、空気が……!」

戸苅らは悪態をつくが、去っていく。

???「大丈夫……?」

イケメンが空に声をかける。

空「あ、うん……ありがとう……」

空(この人は……誰? 学校来てないから知らない)

と、友達と歩いていた純がこちらに気付く描画。

純「わぁーーー! 空っ!?」

空「っ……!」

純は焦りながら駆け寄ってくる。

純「だ、大丈夫!? こんな……」

空「だ、大丈夫だって、これくらい……」

そう言って、肩で口元をふく。
その間にイケメンは去っていく。

空「……」

純「もう……無駄にトラブルに巻き込まれるんだから……」

空「……そんなんじゃない。ただ、金が大事なだけ」

純「はいはい、FIREね、FIRE」

悪態をつきながらも心配そうな純。

場面移り、空の部屋。

空はベッドに仰向けになり……号泣する。(コミカルに)


(いやーーー、やっぱり我が家は最高だ)
(雨風を凌げる。戸苅がいない。もうこれだけで十分)

(あー……まぁ、これで、しばらく学校行かなくて済む……)

(まぁ、いい。全てを忘れよう……)

そう言って、空はヘッドマウントディスプレイを装着する。

「メタバース……ダイブ・スタート!」

ベッドから空、消える描画。

空「え……」

空は見慣れない灰色の部屋にいる。

空(……どういうこと?)

???「木村氏……!」

空「え……?」

そこには、くりゅうがいた。しかもリアルの姿の。
そこで空も自分自身がリアルの姿であることに気付く。

空「くりゅう!? ここって……?」

くりゅう「わからないでござる。僕もメタバースをやろうとしたはずなんですが……」

周りを見渡すと結構な数の同世代の人がいる。

空「彼らは……」

くりゅう「うちの学校の生徒だよね」

空「そうだよな……(うっすら見覚えがある)」

と……

???「全世界のメタバースを愛する皆さま、こんにちは!」

突然、部屋の中央上空に人が出現する。

空(え……? あの人は……ジョン・エックス……!?)

ジョン・エックスが登場する。
(Tシャツにジーパンの堀深めの白人のおじさん)

【ジョン・エックス……メタバースを開発したユナイテッド・バース社の社長……世界一の大富豪である】

ジョン
「今回、皆様を特別な体験に招待させてもらいました」
「これから皆様には〝現実世界で〟サバイバルをしてもらいます」
「ルールは簡単だ。〝メタバースのVを使って〟一週間、生き残れば勝者というわけだ」

会場がざわつく。
「は……?」「現実世界で?」「ん……? 生き残る?」

ジョン
「急に現実世界でサバイバルなんて言って、少し驚いたかな?」
「でも大丈夫。負けても死ぬわけじゃない」

ジョンは苦笑いするように言うが、聞いてる方は誰も笑っていない。

ジョン「アクティビティを刺激的なものにするために、ちょっとしたミッションと賞金も準備しているよ」

空(……賞金?)

空がぴくりと反応する。

パネルで下記を表示。

==========
報酬
■賞金
①一週間、生き残った勝者で100000$を山分け
②1人倒すごとにその場でボーナス1000$

■その他
1人倒すごとにVと離れられる距離が延びる
==========

会場がざわつく。
「マジか……!?」「100000$って1500万円くらいだよね!?」
「1000$……つまり一人で15万円……?」「その他はどういう意味?」

ジョン
「さっきも言ったとおり、負けたからと言って、君達が死ぬわけじゃないよ」
「ただね、負けてしまったら、二度と、今のVは使うことができないからね。そこだけは注意してね」

ジョンはここだけまじめな表情で言う。

会場、息をのむ。

ジョン「説明を聞くのも疲れてきたことでしょう。古くから習うより慣れろといいますし、早速、始めてみましょうか」

空(おいおい、この人、なんでもう始めますみたいな雰囲気出してんの……)

ジョン「それでは皆さん……」

空(マジか? マジでこんなしれっと始まるのか?)

ジョン「勝者目指して頑張ってください。グッドラック!」

ジョンはサムズアップする。

ワープエフェクトのようなものが発生し、周りの奴らが消え始め、ついに空にもそのエフェクトが発生する。

空(ん……?)

部屋の天井。

空(ここは……俺の部屋だな)

空「なんだ、夢か……」

???『夢じゃねえよ!』

空「え……!?」


(何だ? 頭の中に響くような声が……)
(ん……?)

空は自分の身体を見る。

黒い軍服になっている。

空「え……? え……?」

空は立ち上がり、鏡の方へ走る。そして……

空「ま、マジか……」

金髪に二本の角。仮面をつけた黒い軍服のような装いの男が映っていた。

空は、Vの姿になっていたのだ。

空「し、シキ!?」

???『あん? 俺様のことを知ってるのか?』

空「……!?」

再び頭の中で声のようなものが聞こえる。


(知ってるも何も俺がメタバースでVとして使っていた姿だ)
(名前は軍堂ぐんどうシキ)
(俺様キャラのイケメン、仮面姿、闇の炎の剣、おまけに邪気眼という中二病を詰め込んだようなキャラクターだ)

空「うーん……えーと……シキさん?」

空は恐る恐る、Vの名を呼んでみる。

シキ『なんだ……?』

空(うわぁあああ! まじで返事しやがった……!)

シキの姿となった空が頭を抱える。


(情報を整理しよう)
(どうやら俺はメタバースでVとして使っていた姿〝シキ〟になってしまったようだ)
(どういう原理なのだろうか……?)
(だが、恐らく他の人達も似たような状況で、この姿で現実で戦えというものだろう)
(だが……)

シキ
『おい、なに落ち着いちゃってんだ? 貴様……』
『早く、他の奴らをぶち殺しに行くぞ』


(このように、なぜか脳内から、シキの人格らしき者から声がする)
(これがなんなのかマジで分からん)

空「と、とりあえず……」

空はダメ元で、左手を顔の前でパッと開くような動作をする。
すると空間ディスプレイのようなものが立ち上がる。

空「おっ! メニューが開けた」

シキ『お?』

空はメニューをいじる。

シキ『おい、貴様、この俺様を無視して何をしている?』

空「情報収集だよ」

シキ『ほーん?』


(通常プレイよりもメニューが制限されてるな……)
(この数字はなんだろう……)

メニューの上部にNo.077、100/100と書かれている。

空(なんか嫌な予感がするけど、まぁ、とりあえず後だ)

そうして空は再びメニューをいじる。

空(あった……)

空は〝マップ〟をタップする。

空「シキ、これ、視える?」

シキ『あ、あぁ……地図だな』

空「よかった。視えるみたいだね」

地図には空の家の周辺が映し出されており、空の家に一つ青い丸がある。

空「これが今、いる場所かな……」

シキ『ほぅ、それで、この赤い円はなんだ?』

地図の中心からその地域がすっぽり埋まるくらいの赤い円が被せるように描画されている。
ちょうど自分たちがいるらしきところがその円周上ぎりぎり内側になっていた。

空(い、嫌な予感……)

メニューにメッセージがポップする。

"禁止エリアが迫っております。赤円の内側に移動ください"

……

空「うぉおおおおおお!!」

空はダッシュしていた。非常に苦しそうである。

シキ『おいこら、貴様、どういうことだ?』

空「多分、あの円の外側にいたら悪いことが起きる。最悪、ゲームオーバーかも」

シキ『なるほど……』

そう言うと、シキは少し考える。

シキ『ったく、世話の焼ける奴だ……』

空「おっ……?」

シキ『力を貸してやる……』

シキがそう言うと、身体の周りにオーラのような物が発生する。

空「おぉ……!」

空(シキの力を借りられるってことか?)

空の速度が急上昇する。

……

シキ『ここまで来れば大丈夫か?』

空「あ゛ぁ……う゛ん……」

空は膝に手を付けて疲労している。※夜の公園

空「ありが……」

シキ『俺様は少し休む必要があるようだ』

空「え? シキさーん?」

シキからの返事はない。

空「あ、あれ……!?」

更に、空は元の自分の姿に戻ってしまう。

空はぽかーんとする。


(俺自身が完全にシキになってしまったわけではないのかな?)
(体力を使うと消えて休む必要があるってことか……)
(どれくらいなのだろう……)

空「あ、そうだ……」

空はマップを確認する。赤い円からはだいぶ内側になっている。

空「円の移動はかなりゆっくりみたいだな」

空は少しほっとした表情を見せる。

空(しかし、あのルール……)

下記のルールまとめを再表示。

==========
報酬
■賞金
①一週間、生き残った勝者で100000$を山分け
②1人倒すごとにその場でボーナス1000$

■その他
1人倒すごとにVと離れられる距離が延びる
==========

空(1人倒したら1000$。要するに15万円か……正直、めちゃくちゃコスパがいい……)

空はごくりと息を呑む。

空(確か、ジョン・エックスはこんなことを言っていたな)

ジョン(回想)
「さっきも言ったとおり、負けたからと言って、君達が死ぬわけじゃないよ」
「ただね、負けてしまったら、二度と、今のVは使うことができないからね。そこだけは注意してね」


(負けても今のV……要するにシキが使えなくなるだけ)
(実質、デメリットほとんどゼロじゃん)
(こんなの積極参戦確定だろ!)

空は一人、にやつく。

空(だけど……ジョン・エックスはどうしてこんなことをさせるのだろうか……?)

とその時、メニューにメッセージがポップする。

"No.017がNo.056を倒しました"

メニューの99/100の描画。

空(……やっぱり始まったか)

【2時間が経過する――】

空(え、シキさん? ……まだなの? まだ復活しないの?)

空、焦った表情(コミカル)。※公園の遊具の陰に隠れてる


(そろそろ腹も減ってきたし、うんこしたくなってもおかしくないぞ?)
(俺んちが禁止エリアなのも地味に……いや、派手に痛い……)
(いや、それよりも……)

メニューの93/100の描画。

空(すでに7人も倒されてる……ずるい……!)

と、その時であった。

???「やめてぇええ」

空「っ!?」

空は恐る恐る叫び声の方に行き、盗み見る。

と……

公園の広場にて、短剣に盾を持った骸骨がいこつが尻餅をつくタヌキの獣人のようなVに剣を突き立てている。

空「おっ……!」

しかし、骸骨は無慈悲に剣を突き立てる。

"No.017がNo.081を倒しました"
タヌキの獣人から魂が抜ける様なエフェクトが発生し、中の姿らしき、少年が倒れている。

骸骨が去っていくのを見届けて、空は倒れた少年に近づく。

空「おい、大丈夫か?」

少年「……」

空(意識はないが、息はある。死なないというのは嘘ではないみたいだな)

空はほっとする。

と……

骸骨「あん……? もう一人、いるじゃねえか?」

去ったはずの骸骨が戻ってくる。

空(しまっ……)

???「おいおいおい、これはあまりにも幸運が過ぎるなぁ」

空「っ!?」

骸骨から分離するように戸苅が登場する。

戸苅「ハロー、空気くん」

ニヤニヤした戸苅。
焦りの表情を浮かべる空。

戸苅「今の奴で2人目、30万円、ゲット! もう一稼ぎできそうじゃん」

骸骨男も空の方を見据える。

空(すでに戸苅とVが分離してるのは……)

==========
報酬
■賞金
①一週間、生き残った勝者で100000$を山分け
②1人倒すごとにその場でボーナス1000$

■その他
↓↓強調↓↓
1人倒すごとにVと離れられる距離が延びる
↑↑↑↑↑↑
==========

空「随分と気が早いんだね……」

戸苅
「並の人間の思考力があればわかる」
「序盤の弱い奴残ってるうちに狩るのが一番効率的だろ」
「ちょうどお前みたいな奴をな!」

空「……」

戸苅「空気くんには少し難しかったかな?」

戸苅は嫌な笑みを浮かべる。

戸苅「ところで空気くん、パートナーは?」

空「お前に話す義理はない(ちっ、なんで俺が参加者だってわかるんだよ)」

戸苅
「は? お前、ひょっとして、もうパートナーに見限られたのか?」
「そりゃ、そうだよなぁ、お前みたいな空気じゃ諦めたくもなる」

空「っ……」

戸苅
「んじゃまぁ、有り難く"プラス1"、させてもらいますわ」
「日中も碓氷うすいに止められて消化不良だったからなぁ」

空「っ……!」

その瞬間、骸骨男が空に斬りかかる。

空(っ……あっぶね)

空はダイブすることでなんとかそれを回避する。

戸苅「ははは、滑稽だなぁ……見ろよ。俺のV……ゴールドランクよ」

戸苅はニヤニヤしながら、隣に立つ骸骨男の金メダルのような胸の紋章を指差す。

戸苅「やっちまえよ、俺のV……!」


(おいおいおい、まじでやべえぞ)
(このまま終戦かよ)

骸骨男が向かって来る。

空(あ゛ー、最悪だ……)

空、俯くような表情。


(よりによってこんな奴に……)
(どうせやられるにしても他の奴がよかった……)

(あー、なんかだんだん腹立ってきた……)

骸骨男が迫り来る。

空「どいつもこいつも理不尽が過ぎるだろぉおおお!!」

空はやけくそ気味に骸骨男にカウンターパンチを放とうとする。

と……

???『いい気概だ……それでこそ俺様のしもべというものよ』

空(へ……?)

空と重なるようにシキが出現し、骸骨の剣とシキの巨大な剣がぶつかり合う。

シキの胸についた黒いダイヤモンドの紋章が戸苅の目に入る。

戸苅は口をあんぐりと開けて唖然とする。

戸苅「な、な、なんでブラックダイヤモンドが……」

●リンク

あくまでも参考ですが、本作はWorldMakerでネーム作成しています。
https://note.com/kojinayuru/n/n1c7dc6b9888e

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