PTAぇええ!?③

1話リンク

ここは区立空澄小学校。
1階、PTA室。

子供の教室の半分ほどの大きさの一室だ。

壁には、周年行事の写真や歴代のPTA会長の写真が立てかけてある。

そんな中に一つ異彩を放つ掛軸かけじくがある。

それは〝心技体〟と書かれた書画の掛軸かけじくである。

┏━━━┓
┃ 心 ┃
┃ 技 ┃
┃ 体 ┃
┗━━━┛

ナレーション
(〝心技体〟……それこそがPTAメンバーの強さの根源である)

(〝体〟……すなわち身体能力。戦う上で最低限必要なものだ)
(身体能力は子供の頃から培われるものだ)
(学校における体育や部活動。地域のスポーツ教室など……)
(例えスポーツ選手になることができなかったとしても……)
(これは将来、PTA活動に必要な基礎体力を身に付けることに役立つ)

(しかし、心技体の3つのうち、体はそれほど重要ではない)

(〝技〟……すなわち必殺技、または武器と言い換えることができよう)
(PTAのメンバーは代々受け継がれてきたPTAの備品)
(〝寄贈刀きぞうとう〟を貸与たいよされる)

(寄贈刀は刀とあるが、その姿は様々である)
(例えば金属バットであったり、水鉄砲であったり……)

(いずれにしても寄贈刀は使用者の思いを継ぎ、強くなる)
(つまり、過去のPTAメンバーの子を守りたいという想いが練り込まれている歴戦の武器というわけだ)
(ただし、帰属意識が高いためか、その学校のPTAメンバーでないと使えないという特性もある)

(この強力な寄贈刀を使うために必要なのが〝心〟である)

(〝心技体〟とは正に、重要な順に並んでいるといえる)
(寄贈刀を使うための心こそ最も重要な要素である)
(強い心を込めると寄贈刀はその姿を変える)
(例えば、木刀が刀になったり)
(水鉄砲がウォータースプラッシュマシンガンになったり)
(寄贈刀に認められることで、PTAメンバーは通常の何倍もの力を得ることができる)
(すなわち寄贈刀を真の姿に変えることがPTAメンバーとして最低限、必要なことなのだ)

(では、心とは単に子供を守りたいという強い想いがあればいいのか……)
(そんなに単純な話ではない……)

……

「ふしゅー……ふしゅー……」

タンクトップ姿の黒父が深刻そうな顔でストレングスマシン(ジムにある筋トレ用の器具)でショルダープレスを行っている。

土曜日の夕方。
ここはジムだ。

ズームアウトすると、その両脇で、二名が同じくショルダープレスを行っている。
一人は快父、めちゃくちゃ楽しそう。
もう一人は朔父、ほぼ真顔である。

……

と、急にシーンが切り替わり、
黒父がピアノを弾いている。その表情はほぼ真顔である。
ズームアウトすると、二名が後ろに並んでいる。
ピアノの奏者が入れ替わる。
まずは快父、かなり嫌そうである。再び入れ替わる。
朔父、大変楽しそうである。

……

更に、シーンが切り替わる。
三人はあぐらになり、コントローラーを持ってテレビゲームをしている。
黒父は大変楽しそう。
快父はほどほど。
朔父はかなり嫌そうである。

【まとめると】
   筋トレ ピアノ ゲーム
黒父 ×   △   ○
快父 ○   ×   △
朔父 △   ○   ×

(彼らはジムで〝心〟を鍛えている最中である)

(町の中に何気なくあるジム施設……)
(実は、大人達が、心を鍛えるため日々、修行しているのである)

(心を鍛えるために必要なこと)
(それは心を限界まで追い込むことだ)

(だが、嫌なことを続けることが全てではない)

(嫌なこと、楽しいこと、どちらでもないこと)
(この3つをバランスよく行うことが心を鍛えるのに最も効率的な方法であると言われている)

……

朔父「お疲れ様です」

黒父・快父「です」

ジムでの鍛錬を終えた三名は休憩室で一息ついている。
※トレーニング姿から着替えている。
と……

朔父「あ、そういえば、運動会のリレー、快くん、めちゃくちゃ速かったですね」

快父「え? あ、観てました? 実は……」

快父は深刻そうな顔をする……と見せかけて、

快父「そうなんですよー」

デレデレの顔になる。

快父「あいつすごいんですよー……そういう朔ちゃんは本当……美人ですよね? あれは将来有望ですよ」

朔父「え……? あー……」

朔父は謙遜するように苦笑いする……と見せかけて、

朔父「そうなんですよー」

デレデレの顔になる。

朔父「可愛過ぎて困っちゃいます。でも青ちゃんも可愛いですよねー」

黒父「……!」

急に振られた黒父は硬直する。が……

黒父「…………へへ」

とか言う。
嬉しさを抑えようとして変な顔になっている。

(〝心〟を鍛える上で、限界まで追い込むことは大切だ)
(だが、なによりも、〝親バカ〟であることに勝るものはないのかもしれない)

黒父「青だけじゃなくて、黒は賢いし……それに白も……」

その時であった。

TRRRRR

三人の親のスマホが一斉に鳴る。

黒父「……!?」

スマホには、
〝ファントム複数発生〟の文字。

シーン変わる。
野外。夜。路地。

快父「うらぁああ!」

ファントム「ウギャァアアア!!」

快父が金色の金属バットを叩き付ける。
ファントムは断末魔をあげて、消滅する。

黒父「ナイスです」

それを黒父がねぎらう。

が、すぐに次のファントムが現れ、二人は緊迫した面持ちである。
※朔父は別班となっており、ここには不在。

快父「これで4体目か……黒くんパパ……これだけの数となると……」

黒父「えぇ……〝凶器持ち〟が関係しているかもしれませんね」

快父「……はい」


黒父のフラッシュバック回想

子供(女の子)を脇に抱えて、立ち去っていく白装束の女

快父「大丈夫ですか? 黒くんパパ……」

深刻そうな顔の黒父に声を掛ける。

黒父「えぇ……」

快父「そうですか……ひとまず、別支部への協力要請は完了してます」

黒父「ありがとうございます……とにかく被害拡大を抑えるべく、できるだけ多くのファントムを倒しましょう」

快父「はい……」

シーン変わる。

朔父がウォータースプラッシュマシンガンを乱射して、ファントムを蹴散らしている。

朔父「ふぅ……」

???「流石です」

朔父「ありがとうございます、喜多村きたむら先生」

少しパーマの掛かった肩位までの明るめの髪。
なぜかほぼパジャマ姿の優しげな雰囲気の可愛らしい女性。

【喜多村先生 空澄小学校 養護教諭】

朔父「……」

喜多村「あ、あんまり見ないでください! い、急いで出てきたので、着替える時間もなく……」

喜多村は恥ずかしそうにしている。

朔父「あ、はい……ありがとうございます」

朔父
(PTAは基本的に親が主体で活動している)
(先生は自分の子供の学校のPTAメンバーであることも多いし……(喜多村先生は独身っぽいけど))
(とはいえ、緊急時には支援に来てくれることもある)
(それにしても喜多村先生は休日は夕方までパジャマなのか……)

と……

突然、二人は後方から凄まじい狂気のオーラに当てられ、脅威する。

振り返る。

朔父・喜多村「……!?」

振り返ると、そこには
白装束姿で恐怖を感じさせる姿の女が佇んでいる。
手には〝包丁〟を持っている。
(幽霊に近いイメージですが、ホラー作品ではないので、ほどほどなデザイン。美女を想定。)

喜多村「きょ、凶器持ちですか……!? わ、私……初めて見ました……」

喜多村先生は明らかに動揺している。

朔父「実は俺もです……」

朔父
(凶器持ち……それは基本的に武器を持たないファントムの中で武器を持った個体)
(通常のファントムに比べ、戦闘力が格段に高いと言われている)
(そして、奴が持っているものは……)

朔父「…………包丁……」

朔父は息を呑む。

そして、ウォータースプラッシュマシンガンを構える。

朔父「貴様ぁ……! 白ちゃんを…………白ちゃんを返せ!!」

朔父の普段の様子からは想像もつかない様子で怒り、叫ぶ。

朔父(〝水珠砲すいじゅほう五月雨さみだれ――)

そして、マシンガンを乱射する。

が……しかし、攻撃した先に包丁女はいない。

朔父「っ……!?」

と、次の瞬間……

ザクッ

朔父「っ……!」

いつの間にか、朔父の懐に接近していた包丁女。

その凶器が朔父の脇腹に刺さっている。

朔父「え……?」

包丁女がにやりと微笑む。

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