祓魔師とシガナイくん③
雨はひとけの少ない多目的室※へと足を運ぶ。
※広さは教室くらい。座席等、障壁となるものはない
そこには、女の後ろ姿があった。
※一話で雨からノートを借りたギャル
雨「あ、あの……呼ばれたから来たけど」
雨は少々、不安げに声をかける。
女「……」
雨「あの……言いにくいんだけど、そろそろノート返して欲しいんだけど……」
女「……」
しかし、女はなぜか反応しない。
雨「えーと……」
と……
女「ノート返すの遅くなっちゃってごめんね、はい、これ……」
女は血だらけのノートを雨に差し出す。
雨「……!」
次の瞬間、女の腹が膨れ上がり、食い破るように内部から異形の者が現れる。
雨(怪人……!)
だが……
一閃――。
雨は剣でもって、瞬時に女の頭部を落とす。
女「あ、あが……」
女は消滅していく。
雨「くっ……」
雨は辛そうな表情をする。
と……
後方から拍手をする音がして、雨はゆっくり振り返る。
※存在には気付いていたので、驚く様子はない
???「容赦ないねぇ……お見事です……」
それは第一話で、雨をランチに誘った男子学生であった。
(第一話のラストで女に産卵をしていた男子学生でもある)
雨「……どういうこと? 君、まさか……」
男子学生「お察しの通り……僕は〝天使〟さ……」
男子学生の頭に輝くリングが発生する。
雨(天使……こんな身近にいたなんて)
天使「雨さま、僕からのプレゼント、喜んでくれたかな?」
雨「……! 何が……?」
雨は怒りの表情を浮かべる。
天使「何って、その女を怪人にしたことだよ?」
天使はわかるよね?といった呆れたような表情。
雨「……?」
天使「だって、その女は君を利用し、君を不快にし、君を傷つけていたじゃないか? だから怪人にしてあげたんだよ」
雨は険しい表情。
天使「わかるだろ? 天使は君が大好きなんだ。要するに、その女が怪人にされたのは〝君の責任〟というわけだよ?」
天使は屈託のない笑顔で微笑む。
雨「っ……! うるさい……!」
雨は剣を手に、天使に斬りかかる。
天使「おっと……」
天使は触手の集合体のような翼を展開し、ひらりと避ける。
しかし、雨は追い打ちをかける。
雨の剣と天使の触手が激しくぶつかりあう剣戟が発生する。
その間も天使はニヤケ顔で、会話を続ける。
天使「ふふふ、必死な顔……可愛いなぁ」
雨「……! せぁ……!」
と、雨が怒りの表情を浮かべながら、天使の右腕を切断する。
天使は一瞬、虚を衝かれたような表情をするが、すぐに余裕の表情に戻る。
天使「こんなのはかすり傷さ……知ってるだろ?」
そう言うと、切断した腕がにょきにょきと生えてくる。
天使「ねぇ、雨さま、意地張ってないでさぁ、早くこっち側においでよ?」
雨「行くわけ……」
天使「君も本当は思ってるんでしょ? 悪弱は淘汰されるべきだって……」
◆
第二話で、教諭が講義しているシーンがフラッシュバック
「天使の目的は〝新平等主義〟悪弱の淘汰であると」
「悪弱とはつまり悪い者、弱い者を指し……」
◆
雨「そ、そんなわけ……」
天使「無理しちゃって……君も辟易としてるのだろう? 邪悪な人間共の厚顔無恥な行為に」
雨「っ……!」
◆
フラッシュバック
女が「なによ、あのガリぼっち、少し顔がいいからって……」のような陰口を言うシーン
活動家が「人殺し! お前達に人の心はないのか!?」と雨を罵るシーン
◆
天使「素直になりなよ……」
天使が急接近し、雨の耳元で囁く。
天使「なにせ君は大天使の子なんだからね……」
◆
2話の
壮年の男「雨……お前は〝天使の子〟だ……」
のシーンがフラッシュバック。
◆
雨は表情を歪める。
と、その時であった。
???「お前……少し黙れよ」
天使「ふぇ……!?」
突如、現れたシガナイが天使の顔面を鷲掴みにする。
そして、そのまま地面に激しく叩き付ける。
地面にひびが入るほどの衝撃である。
天使の頭部は破壊され、身体はピクピクしている。
雨「し、シガナイ君……!?」
シガナイ「雨さん! 大丈夫ですか?」
シガナイは雨に駆け寄ろうとする。
雨「あ! シガナイ君! 油断しないで!」
シガナイ「え……?」
ひゅんと、シガナイの首元に斬撃が入る。
シガナイ「……?」
次の瞬間には、シガナイの頭部が無惨にも落下する。
雨「し、シガナイくん゛!!」
雨の表情が激しく歪む。
シガナイは膝から崩れ落ちる。
と……、
頭部のなくなった天使が立ち上がっており、大量の触手が蠢いている。
そして、にょきにょきと頭部が生えてくる。
天使
「急に来て、びっくりしたなぁ……」
「でもさ、怪人は脳を潰せば死ぬけど、天使はその程度では死なないんだよね」
天使はケラケラとせせら笑う。
雨は唇を噛み締める。
天使「なんだこいつ……あぁ、今日、雨さまに話し掛けてた奴か、後で産卵して苗床にしようと思ってたのになぁ……」
そう言いながら、天使は転がっていたシガナイの頭部をひょいと拾う。
雨「貴様ぁ……!」
雨は怒りの表情を滲ませる。
天使「ん? どうしてそんなに怒るんだい? あの女の時はそうでもなかったのに……」
天使はそんなことを言いながら、ふとシガナイの頭部に視線を送る。
「奇遇だな。俺も首を斬られたくらいじゃ死なねえのよ」
シガナイの頭部が二カッと笑い、啖呵を切る。
天使「……!」
雨「……!」
天使は焦るように驚き、雨はぱっと表情が晴れるように驚く。
と……
シガナイの胴体が突如、動き出し、天使に突進する。
天使「ぐあっ」
不意を突かれた天使は、吹き飛ばされ、シガナイの頭部は宙を舞う。
シガナイ「よっと……」
シガナイの胴体が、シガナイの頭部をキャッチする。
天使「このぉ……」
天使が反撃するべく、触手を伸ばす。
だが……シガナイは思いっ切り天使に向けて〝自分の頭部を投げつける〟。
雨「し、シガナイくん……!?」
シガナイ「どーん!」
天使「ぐぉおおおお!!」
シガナイの頭部が直撃した天使は吹き飛ばされ、壁に激突する。
シガナイの頭部は再び宙を舞い、胴体がキャッチする。
シガナイ「ナイスキャッチ……!」
雨(な、なんて無茶苦茶な戦い方なの……!)
雨は唖然とする。
シガナイ
「なんだ、こいつ天使だったのか……? 実物を見るのは初めてだな」
「天使ってのは意外と普通の人間と変わりないんだな……」
シガナイはつぶやくように言う。
天使「てめぇ……」
雨「……!」
吹き飛ばされた天使もそう簡単にはやられないようで、未だ、健在のようだ。
しかし、明らかに表情を歪め、怒っている。
天使「てめぇ、機械兵か?」
天使は立ち上がりながら言う。
シガナイ「そうだが……?」
シガナイは頭部を胴体にはめる。
天使「野蛮な機械兵……人間が生み出したからくり人形が、僕と雨さまの神聖な場に踏み込むんじゃねえよ!」
大量の触手を出し、本気モードとなった天使がシガナイに迫り来る。
冷静な表情のシガナイがそれを迎え撃つ。
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