「ゴブリンでもわかるゲームプログラミング」第39話 ~読むだけでゲームプログラミングがなんとなくわかるようになる謎のファンタジー小説~
本作は連載作品です。第1話は下記です。
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「ナゼハズレタ……?」
やはり、ゴブリンも腑に落ちない顔をしている。
だが……
「チクショウガ……ダガ、ヨリツヨイ、チカラデ、ネジフセルマデ」
「っ……!」
「ワガサイキョウノマホウ……〝ホトバシルツブテ〟ェ!!」
「……そんな……」
ルビィの口から絶望が漏れる。
ゴブリンの周囲にはこれまでにないほどの大量の石礫が発生している。
(やべぇえ! すげえ数の弾……! こんな数、戦闘中の短時間で、改変するなんて絶対無理……!!)
ユキもその圧倒的な石礫の数に圧倒される。
だが、ユキは急いで走る。
「え……? リバイスくん?」
ユキはルビィを守るように、ゴブリンとルビィの直線上に立った。
「ナンダキサマ、ザコハ、デテクルナ」
ゴブリンは煽るようなことを言う。
「……」
しかし、ユキは答えない。
というか答える余裕がない。
「マァ、イイ……マトメテ、ホオムッテクレル!」
(……来る!)
ゴブリンは周囲の無数の石礫を前進させる。
……
ルビィ・ピアソンは、何がどうなっているかわからなかった。
だけど、視覚から入ってくる情報から目の前の事象を淡々と述べるならば、
ユキ・リバイスはゴブリンの放つ石礫に真正面から突っ込んでいった。
無数にあるはずの石礫はなぜか……ユキ・リバイスには被弾しなかった。
まるで、石礫が彼を避けているかのように。
当然、その延長線上にいた彼女にも被害は全く及ばなかった。
……
「……」
「っっっ!! ナンデ? ナゼダ?」
ユキが無言で突っ込んでくる。
なぜかゴブリンが放った石礫はすれすれのところで彼に当たらない。
「……」
(すごい数の弾……こんな数、改変するなんて絶対無理…………だけど、ごく一部なら、きっとできる……)
無数の石礫は凄まじい威圧感だ。
その光景は荘厳で美しいとすらいえる。
だが、その実、ほとんどがめくらましで、はったりである。
ユキは大量の石礫のうち、ゴブリンの前方に発生する左右10°の弾だけを対象に僅かに射出角度を捻じ曲げたのだ。
そうすることで、弾は勝手にユキ……そしてその延長線上にいるルビィから逸れてくれる。
そして、ユキがその間、ゴブリンに突進した理由は二つある。
ひとつは奇襲的な意味合い。
ゴブリンに突進することで、ゴブリンを動揺させ、ユキの魔法論理改変のからくりに気付かせないため。
そして、もうひとつは……
「ッッッ……!」
ゴブリンの魔法の射出時間が終わりを告げた時、ユキはゴブリンの目の前にいた。
ゴブリンは魔法直後で一瞬、硬直する。
ユキは肩口に飛び乗り、ゴブリンの顔面に、魔法具を押し当てる。
そして……
「……実行」
超至近距離で、スプリンクラー戦闘版をぶっ放つ。
「グガァアアアアアアアアアアアァァァ………………」
………………
…………
……
「…………えーと、大丈夫? ピアソンさん」
ユキは脚を負傷し、へたり込んでいるルビィに声をかける。
「え……? あ……うん……」
「えーと…………これで、及第点は間違えなく超えたよね?」
(……何言ってんだ、俺は……)
「え? あ……うん……」
「あ……えーと……脚ケガしてるし、背負おうか?」
(ピアソンさん……プライド高そうだし、絶対断られるだろうな……)
「え……!? あ……うん……」
(……まじか…………てか、さっきから「え、あ、うん」しか言ってないぞ、この子……)
とか、思いつつ、ユキはルビィを背負う。
「ごめんなさい…………」
「お……?」
素直に背負われたルビィはそんなことを言う。
「その…………ありがとう……ございます……」
「いえいえ……」
ユキがそう応えると、心なしか、しがみつく力がちょっと強くなった。
(えーと……とりあえずオーエスと合流しなきゃか……)
と、その場を離れようとした時……
「マテ……」
「「っ……!」」
(……ゴブリン……まだ……)
倒れているゴブリンがユキらを引き留める。
(とっとと、逃げよう……!)
そうして、ユキは無視して離れようとする。
「マテ……マッテクレ……タノム」
「……?」
(……頼む?)
「オレヲ……オレヲオマエノ、ハイカニ、シテハクレナイノカ?」
「…………」
(ハイカ……はいか? …………配下ぁ!?)
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