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米中の事情から、改めてソーシャルメディアとコマース、クリエイターの方向性を考えてみる

「広告は、最も優れた頭脳と、最も熱心な研究と勉強とをもってする非常に難しい仕事。」__吉田秀雄

はじめまして、株式会社Nateeの代表をしています小島です。Nateeは2018年に創業した会社で、当時としては非常に珍しくTikTokに全張りをして会社を立ち上げ、6年経った現在は従業員が80名ほど、売上も20億円近くまで成長してきました。

今でこそ主要SNS(以下アメリカの呼称と合わせてソーシャルメディアと呼びます)になったTikTokですが、2018年にTikTokの可能性を信じていた人はかなりレアで、ビズリーチ(現ビジョナル)でエンジニアをしていた自分が起業して突如「TikTokの可能性がやばいんです!」と熱弁していたので周りの人はどうしたものかと思ったことでしょう(笑)。

でもその結論に至るには自分の中でこれ以上ないほどのリサーチがあり、冗談抜きで日本で一番TikTokに詳しく、何より考えている自負がありました。そんな話をまとめたのが下記のnoteです。

このnoteを書いたのも、もう2年半前の2022年2月末。月日が過ぎ去る速さにビックリしながらも、今2024年8月現在から自分が向き合っているソーシャルメディアやクリエイターのマーケットをどう見ているのかを当事者として語れればと思っています。

改めて広告市場をドリルダウンしてみる

まず、2023年時点において日本全体の広告費は7.3兆円あります。コロナで凹んだりはしましたが、基本的にGDPが伸びれば広告市場も比例して伸びるようにできてるので10年で122%成長ってところです。

出典:電通報

そしてその内訳がこちらになります。4マス(テレビ、新聞、雑誌、ラジオ)が32%弱で、インターネット広告が45%強、屋外広告やチラシ等が残り23%弱という数字になっています。

出典:電通報

内訳を時系列で表したのがこちらのチャートです。ちょうどNateeが創業した2019年前後にテレビ広告をインターネット広告が抜き、2021年には4マス全部を足した数字よりもインターネット広告が大きくなりました。当たり前のことですがその差は広がっていくばかりです。

出典:サイバーエージェント

続いては、そんな勢いよく伸びているインターネット広告の中でNateeが向き合っている市場の伸びがどうなのかを見ていきます。2020年に6,000億円弱だったソーシャルメディアの市場は、2027年には3倍の1.9兆円近くになると予想されています。人々が滞在する時間が長いところに広告費も集まりますから、当然ですね。

出典:サイバー・バズ/デジタルインファクト調べ

こちらは動画広告の市場見通しになります。2022年に5,500億円の動画広告市場は2027年になんと1兆円を越えます。5年で約5,000億円増えるので、毎年1,000億円が新しく市場創造されることになります。

出典:サイバーエージェント/デジタルインファクト調べ

その中でも非常に力強く伸びているのが縦型動画(ショートムービー)広告市場になります。もちろんまだ小さいので伸び率は高くなりますが、こちらも5年間で1,500億円ほどの市場創造が見込まれています。

出典:サイバーエージェント/デジタルインファクト調べ

最後にインフルエンサーマーケティングの見立てです。2020年はまだたったの332億円だった市場は7年後には4倍の1,300億円を突破する予測です。

出典:サイバー・バズ/デジタルインファクト調べ

大上段からドリルダウンしていくことで、広告市場の全体観はおわかりいただけたかと思います。そしてNateeの事業のど真ん中である「ソーシャルメディア」「動画広告」「インフルエンサーマーケティング」その全てが強いアップトレンドになっています。

ここからが非常に大切な話で、まだまだ我々はその入口に過ぎないということです。

2014年あたりからNewsPicks等の新興メディアがやたらと「テレビはオワコン、あと7年」と言ってたのを鮮明に覚えています。でも実際答え合わせをしてみると、2014年からの10年間でそんな壊滅的にテレビ広告費が落ちているわけでもなく、ゆるやかに坂道をくだっているにすぎません。特に日本のような平均年齢が高い国では、変化はドラスティックには訪れず、ゆっくりと変わっていくのが特徴ですね。

しかし、たとえゆっくりだとしてもトレンドは不可逆なので、テレビの広告予算が再度アップトレンドになることはありえません。インターネット広告費は今後も伸び続けるし、その中でソーシャルの予算も増え続けます。サイバーエージェントが創業されたのは1998年。26年経った今もインターネット広告事業本部の業績はずっと上がり続けています。

昨年ビジョナル南さんに会社講演に来ていただいた際、「産業が変わるチャレンジは10年やってスタートラインだ!」という熱いメッセージをいただきました。日本にダイレクトリクルーティングという概念を持ち込み、そのスタートラインに立つのに10年間かかったということです。Nateeはまだスタートラインにすら立っていないのだと激励をいただいたと思っています。

米中はこうなっている

一方、資本主義の権化であり、イノベーションの最前線である米中はどうなっているのか見てみましょう。

USの状況
USはインターネット広告が非常に発展している国です。こちらがUSの広告市場におけるインターネット広告のシェアですが、2023年でなんと全体の70%に及んでいます。日本は45%ほどなので、まだまだ伸びしろがあるということです。

出典:Meltwater

そしてインターネット広告の内訳と伸び率がまとまったものがこちらです。検索型広告やソーシャル広告が強いのは日本と変わりませんが、特徴としてはコネクテッドTVとリテールメディアが非常に強いということでしょうか。日本でもリテールメディアが盛り上がりそうな予感はしており一定ウォッチはしていますが、やはり時間はかかりそうだなという所感を持ってます。

出典:Winterberry Group

US広告市場のメガトレンドとしてはいくつかありますが、何よりも生成AIにより動画や画像等のコンテンツ生成コストが極限まで減り、さらにパーソナライズされたものになるというところが一番大きいうねりのようです。いやはや、変化が激しく読めないのがこの業界のエキサイティングなところでもあり辛いところでもありますね(笑)。

中国の状況
中国は広告っていうよりEコマースが異次元に発達しています。中国のEC市場は圧倒的な世界最大規模であり、3.4兆USドル、つまり500兆円ほどのEC市場があることになります。これは世界シェアの52%にも達する驚異的な数字になっており、必然的にEC化率も非常に高いレベルにあります。

こちらが世界のEC化率のグラフ(2022年)なのですが、中国のEC化率は50%近くあり(2024年は50%を超えていると推計)、アメリカのEC化率は15%くらいなので、正直コマースの最先端はアメリカではなく断然中国ですね。

eMarketer, June2022

そして特筆すべきはライブコマースの割合です。2026年には1兆ドルを超える試算がされており、それはなんとEC市場の25%にも及びます。

ECDB.com

しかも最近はライブコマースも人間じゃなくAIがやっているというからもう何がなんだかわからない世界に突入しています(笑)。信じられない進化の仕方を遂げているのが中国のコマース事情なんです。

もちろん、アメリカや中国の状況がそのまま日本に来るわけではないのは過去を見れば自明です。なので、どこまでがグローバルのトレンドで、どこからはローカルの適用が必要かを冷静に考える必要はありますが、それでも米中(特に中国)のトレンドを抑えておくのは日本の未来を予測することに非常に大きな役に立つと思います。

不可逆なトレンドにベットしているか

常々言っていることではありますが、ビジネスは一過性のブームを狙うのではなく中長期的に変わらないトレンドに立脚すべきだと考えています。

「TikTokはブームですぐおわるでしょ?」と創業してからリアルに100回は言われてきましたが、全員ブームとトレンドを勘違いしています。TikTokの根ざしているトレンドは「AIによるアルゴリズム」「個人クリエイターの勃興」「(主に縦型の)動画コンテンツ」です。

①AIによるアルゴリズム
冒頭にシェアしたnoteにも書いてありますが、TikTokをはじめて触ったときに「うわ、ついにAIネイティブなサービスが誕生した!!!」と非常に興奮したのを今でも鮮明に思い出します。

それまでのインターネットは、自分で検索をして記事なり動画をクリックして、情報を取得してという能動的なインターネットでした。アルゴリズムは自分の好みに合わせて勝手にAIがおすすめしてくれるので考える必要がありません。受動的なサービスの方が強いに決まってます。

TikTokに遅れて、YouTube、Instagram、XなどすべてのソーシャルメディアがAIアルゴリズムのフィードに変えていきましたが、それはその方がシンプルにユーザーが欲しているコンテンツを届けられるからに違いありません。

②個人クリエイターの勃興
インターネットは民主化の歴史です。テレビの世界は、プロデューサー、ディレクター、AD,脚本家、演出家、タレント、照明、マイク、編集、など非常に多岐にわたったプロによって1本の番組が制作されています。それをPCとマイクとカメラがあればできるようにしたのがYouTubeでした。素人が一人で動画を撮り、編集をして、公開までできるようになったんです。

ジャスティン・ビーバーがデビューしたきっかけは、12歳のころ母親が親戚に見せるために投稿した何気ないYouTube動画でした。ただのホームビデオのはずがバズりにバズって視聴回数が5000万回を超え、それがレーベルの耳に入ったからです。もしYouTubeがない時代だったら、あの世界的大スターがデビューすらしていない世界線もあると思うと恐ろしいですね。

TikTokはYouTubeよりもさらにもう一段階民主化され、スマホひとつで自己表現ができるようになりました。

少し話がそれますが、「生成AIがクリエイターを脅かす」とニュースでしきりに言われています。ただ、長期的には人間の創造性を拡張する性質のものであり、間違いなくクリエイターの総数はさらに増えていきます。本当の意味でセカンドルネサンスが始まるのは生成AI以後なのかもと思うとワクワクが止まりませんね。

クリエイターについてのことを書き始めるとついついて筆が乗ってしまうのでこのへんでやめておきますが、そんな思いの丈をたくさん書いた2021年のnoteも置いておきます。

③(主に縦型の)動画コンテンツ
4マスの歴史を考えると、インターネット上のコンテンツはもっともっと動画がメインになっていきます。新聞を読む人よりもテレビを見る人のほうが圧倒的に多いからです。このようなnoteを読むビジネスパーソンは文字の扱いに慣れているのかもしれませんが、マジョリティは圧倒的に動画です。

何なら小学校4年生から誕生日プレゼントが本だった自分でさえも、最近は勉強する際に本を読むよりYouTubeを視聴することが増えてきました。普段から本を読まない方なら言わずもがなですね。

この全てが一過性のブームなわけがなく、技術的、社会的に不可逆なトレンドだと断言できます。

すでにソーシャルメディアは完成してる

また、よく聞かれることとして「次のTikTokはなんだと思いますか?」という質問があります。

僕が強く思っていることとして、「新しいドミナントなソーシャルメディアが生まれることは、少なくとも新しいデバイスが出てくるまではない」と結論付けてます。

メディアは文字、画像、音声、動画の4媒体です。昔で言うと、新聞、雑誌、ラジオ、テレビですね。ソーシャルメディアは、X(Twitter)、Instagram、Spotify等、YouTube&TikTokで、すでに完結してしまっているんです。

つい最近もこんな記事を見かけまして、「若者が重視しているオーセンティシティー(本物らしさ)なつながりを目指すアプリ」が、米国App Storeランキングで1位になったりしてます。他にはもちろんBe Realが若い子の間で流行るとかそういうのはあるんですが、今までのソーシャルメディアの派生形にすぎず、先ほどあげたような主要メディアの位置まで登ることはほとんどありえないと思っています。

次にあるとするとVRの3D空間上のソーシャルメディアだと思ってますが、『SAO(ソードアート・オンライン)』とか『レディ・プレイヤー1』のようなフルダイブ型のデバイスが1-2万円くらいにならない限りは、なかなかマスアダプションしなさそうだなぁと。

それより生成AI搭載のスマートフォンがもうすぐ出るので、そっち側のインパクトの方が凄まじく、まさにAIと恋愛する映画『her/世界でひとつの彼女』の世界観みたいになっていきますね。ただその場合表現フォーマットは現在のスマホと変わらないので、新しくソーシャルメディアが生まれるわけではないでしょう。

ソーシャルコマースはどうなるのか

じゃあそんな完成したソーシャルメディアでの新しいポテンシャルはないのか?

2024年8月26日の記事ですが、TikTokとAmazonが正式に連携するニュースが出ていました。

Douyin(中国版TikTok)は元々メディア広告費のみだったんですが、中国や東南アジアにおいてはコマースの売上が爆伸びしていて、2019年に$5.8b(約8,200億円)規模だったGMV(総取引量)が、2025年には$756b(約107兆円)になります。あまりにも規模が大きすぎて数字合ってるのか何回も確認しました(笑)。

ECDM.com

グローバルでのTikTok ShopのGMVはどうかと言うと、シェア1位はタイ、ついでベトナム、少し開いてマレーシア、フィリピン、インドネシアと続きます。そしてようやくUS、UKという順番なのでほとんどが東南アジアですね。

ECDM.com

中国の状況などを書きましたが、ソーシャルコマースはまだまだ日本では黎明期であり、なかなか苦戦しています。中国は前述した通りEC化率も段違いに違うのと、物流システムも圧倒的に進んでいるのでソーシャルでの購買後もシームレスに家まで届くようになっています。正直あれにはUSも到底追いつけないですし、日本は言うまでもなくという感じですかね。

ただ、ゆっくりとソーシャルコマースのトライは始まっていますし、yutori社を筆頭にソーシャルでブランドのアカウントを伸ばして売上を伸ばすプレイヤーもアパレルやコスメなどでは生まれています。たぶん中国のようにはならないので、日本は日本式で「ソーシャル経由で売上が伸びる仕組み」が徐々にできあがっていくのではないかと思います。

待ちに待ったOMO(オンラインとオフラインの融合)

Nateeのクライアントの多くは、EC完結ではなくリテールに強いブランド企業様です。

ソーシャルでのプロモーションがうまくハマると実際にモノが売れていきます。我々も日本や世界を代表する企業様とたくさんご一緒する中で、「シェアNo.1に返り咲きました!」「まさかPOSがこんな動くとは思いませんでした!」というフィードバックをいただく事例がいくつもあります。

そもそも売れるのはプロダクトがいいからであって、我々はあくまでそのプロモーションのお手伝いの一部に過ぎないのですが、明らかにソーシャル広告の成否が店頭での売上に直結する確率と可能性が日に日に高まっているのを感じます。

たとえばこちらの取り組みでは花王様のKATEにて、たけたろうさんというコスメ系の著名クリエイターとタイアップし、ドンキでもたけたろうさんのTikTokの動画を流したり、たけたろうさんの音声吹き込みを使った店内放送などにもトライしました。

ソーシャルでタイアップ広告をやるだけではなく、店頭でのパネルや店内放送なども合わせて設計することで、消費者がオンラインからオフラインでの購買体験に一貫性を持ち、結果成功した事例になりました。

OMOという概念が中国で生まれたのは2017年のことで「お前今さらOMOとか言ってんのww」と言われそうですが、ようやく日本でも本格的に始まりそうな予感があります。

そしてそのど真ん中のチャレンジを日本や世界を代表するブランド企業様と、こんな若い会社がお取り組みさせていただいてるのは非常に感慨深く、やりがいとのびしろしかありません。

我々はGreat Companyを共に創れる仲間を集めています

「創業期からTikTokに張ってラッキーパンチで伸びた会社」「よくあるインフルエンサーマーケの代理店ね」という風に見られることも多いNateeなのですが、少しはこの変化に富み、広大なアップサイドがある市場のダイナミズムを伝えられたでしょうか。

そして僕たちはこの変化の激しい市場において、顧客やクリエイターに価値を届け、驚異的な成長を果たし、Great Companyを言われるレベルまで到達したいと思っています。

そのためには圧倒的に、仲間が足りません。市場の追随ではなく市場の創造に興味がある方、与えられた仕事ではなく自ら仕事を創りたい方、ぜひ一緒に働かせてください。

広告の鬼である吉田秀雄先生は「仕事は自ら創るべきで、与えられるべきではない。」とおっしゃっており、リクルートの江副さんも「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」と社訓にされています。

市場が生まれるど真ん中で長期間勝負し続けられるやりがいと言ったら、それはなかなか文字では表現しきれないほど尊い経験だと身を持って実感してきました。アップトレンドに身を置く重要性というのはキャリアの観点でも非常に大切です。

若くて熱い組織で一緒に成長したいという方、求人一覧をまとめていますのでぜひ簡単に覗いてみてほしいです。

ここには載せられていないAI系の新規事業の募集もあったりするので、XでもFBでもご連絡いただければ僕が直接お会いさせていただきます。ぜひお気軽にDMください!

https://twitter.com/RyoukenK
https://www.facebook.com/ryouken.kojima/

Go for Great Company!

サポートいただいた方には一人一人に感謝の返信を差し上げたいと思います!いつもサポートありがとうございます。