こじまりのわがままきままSS
もしも過去に出会っていなければ…… ラブライブ!スーパースター!!嵐千砂都と澁谷かのん。 出逢わなかった二人が出逢うまでです。
結局私、嵐千砂都は図書委員になった。 入学して一ヶ月あまり。 毎日、あまり人の来ない図書室で、本を読んで過ごしていた。 結ヶ丘女子高等学校普通科一年、図書委員の嵐千砂都。 まっさらなストレートヘアに丸い伊達眼鏡。 陰で「図書室の座敷童子」って言われているの、なんとなく気づいている。 でもいいんだ。 この場所は、やっぱり好きだから。 それに。 放課後に静かな図書室にいると聴こえてくる、スクールアイドルの発声練習の声が、何よりも好きだから。 そして。 「嵐さん、もう下校
「下校時間になったら、すみやかに帰宅してください」 下校時刻の過ぎた数分後。 図書室に入る西日が陰る中、その声が響く。 ハキハキと聞き取りやすい、自分とは真反対な話し方だと思った。 「あ……ご、ごめんなさい」 いそいそと帰り支度を始めながら、「あなたも、生徒じゃ……?」という私の怪訝な表情に気付いたのか、待ちながら音楽科の生徒は話す。 「私ももう帰るところです。最後に学内の見回りをしていて」 なるほど、と納得しそうになったけど、なんでただの生徒が見回りを? という
帰り道。 どきどきが止まらなかった。 あれがスクールアイドル、なんだと思う。 街中で突然歌い出す女子高生は、私の知る限りスクールアイドルしかいない。 ホームルームで印象的だったクラスメイトの女の子。 多分中国の留学生さんに勧誘されて、スクールアイドルを始めたんだと思う。 「とべるさよっしゃ……とべるさよっしゃ……」 言葉を覚えたばかりのように、繰り返しながら、小走りで帰った。 凄かった。 何かよくわからないけど、凄いものを見たってことだけはわかる。 あのよっしゃ…
「ぁ、嵐千砂都、です。よろしくお願いします」 今日は私立結ヶ丘女子高等学校の入学式。 この春から私、嵐千砂都はこの学校の「普通科」へ入学した。 入学式後のホームルームでの自己紹介。 クラス中からのそれだけ? という視線をよそに、いそいそと席に腰を落とす。 「あらし」という苗字のせいか、出席番号1番になってしまったのは新設校故の生徒数の少なさからか。相田とか青山とかいないの〜…… 愛想もなく声も小さい私の挨拶に、怪訝な空気を醸し出したクラスメイトたちだったけど、次の子が